鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第七話Bパート 投稿者: ROSSO

第七話 蘇る第一の『狩猟者』・エディフィル

「私ね、浩之ちゃんに頼まれてお姉ちゃん達を殺しに来たんだよ」
「えぇっ!!」
アカリコットと名乗るその少女はにっこりと微笑んで、その手を前にすっ…とかざした。
その手から光が放たれ、円を描き出す。
「な なに!?」
「初音!気を付けて!!」
ただならぬ雰囲気を感じ取り、初音と千鶴は武器を構えた。
微笑みながら呪文を唱えるアカリコット。そして目をカッと見開き、叫んだ。
「矢獣召喚(ヤキシマ)!!」
アカリコットの放つ光が描き出した魔法陣の中から、巨大な魔獣(…いや、野獣といった方が適切か)が現れた。
「さあ魔獣・ヤジマ!あのお姉ちゃん達を殺して!!」
アカリコットの命令に、
『おまかせください!この愛の奴隷・ヤジマ!!あなたのためならいかなる事でもしてご覧に入れましょう!!』
と、理解しがたい雄叫びを上げて矢獣が初音たちに襲い掛かる。
「わあっ!!」
「きゃああっ!!」
矢獣の手に弾き飛ばされる初音たち。
その様子をくすくすとさも楽しげに眺めるアカリコット。
「弱いんだねお姉ちゃんたち…マサシオーネちゃんは何してたのかな、こんな弱いお姉ちゃん達に負けるなんて」
「マサシオーネ…?じゃあ、仲間なの!?」
「仲間?仲間なんかじゃないよ あんなホモ…」
アカリコットがぱちんと指を鳴らした。それに答えるように、矢獣が初音の上に覆い被さろうとする。
「!…え〜〜いっ!!!」
初音が手に持つおたまで矢獣の頭を思いっきりぶったたいた。
すこ―――んっ!!
かなりいい音がして、矢獣が床に崩れ落ちた。
初音はそんな威力があるとは思ってなかったのであろう、自分の手にあるおたまを見てきょとんとしている。
まあ、ただのおたまではない、伝説の鉱物『エルクード』でできたおたまである。それを初音の秘められた鬼の力で思いっきり叩き付けたのだから、相当の威力ではあろう。
矢島ごときに耐え切れようはずもない。
だが、アカリコットは別段あわてたふうもなく、
「ふうん…少しは戦えるんだね …じゃあ次は…」
再び魔法陣を作り出し呪文を唱える。
「矢獣召喚(ヤキシマ)・パート2!!」
先ほどと形のまったく変わらない矢獣が現れた。そして再び初音たちに襲い掛かる。
「うわあぁっ!?」
「きゃあぁっ!」

「…伝説の…『狩猟者』…」
楓は『エデイフィル』と名乗る巨大な猫と対峙していた。
「「『鬼騎士(エルクゥナイト)』となるべく召喚された異世界の少女よ…汝が我をまとうにふさわしい者である『証』を…我が前に示せ」」
「…『証』…?」
「「汝が力を我が前に示せ…『伝説の鬼騎士』となるにふさわしい心の『強さ』を我の前に示せ」」
「……?」
その時。
「きゃああああぁっ!!」
「!?」
楓の後方で悲鳴がして、楓は振り返った。
千鶴と初音が、息を切らせて倒れている。
「はあ、はあ、はあ…」
「ぜえ、ぜえ、ぜえ…」
「…?どうしたの…姉さん、初音…?」
たいして心配してはいないようだが、一応聞いてみたのだろう。
見渡すと、そこらじゅうに矢獣の死体が累々と積み上げられている。
いくら倒しても、矢獣は次々と出てくるのである。初音と千鶴の体力も限界近かった。
「くっ…きりがないわ…」
「ど、どうしよう…」
彼女たちの前でアカリコットがくすくすと笑っている。
「弱いね、お姉ちゃんたち。私、弱い人って嫌いなの。だからマサシオーネちゃん…あの薔薇野郎も嫌い。簡単にやられちゃうんだもん。だから浩之ちゃんに振り向いてもらえないんだよ…マサシオーネちゃんは」
そういってまた矢獣を召喚する。
「矢獣召喚(ヤキシマ)×6!!」
六体の矢獣が三人に襲い掛かる。
「さあ、矢獣ヤジマ!あのお姉ちゃん達を殺して」
矢獣が手を伸ばしてきた。楓はかわしたが、初音と千鶴は捕まってわしづかみにされた。
「きゃあっ!」
もはや初音と千鶴にはヤジマごときの手から逃れる体力すら残っていないようだ。ぐったりと気を失っている。
「くすくす…。まるでお人形さんみたいだねこのお姉ちゃんたち。私の下僕たちと遊んでもらおうかな」
それを聞いて、初音をわしづかみにしている矢獣が鼻息を荒くした。『遊ぶ』の意味を曲解したらしい。…あ、チャックをおろしはじめた。
どうやら初音の犬っぽいところがお気に召したらしい。所詮矢島である。
「ほら、このままじゃこのお姉ちゃんたちが危ないよ。逃げてばかりいないで…」
「…別に…かまわないから…」
「…え?」
「…初音も…千鶴姉さんもいらない…。(ていうか邪魔…。)二人がいなくなれば…耕一さんは私だけのものになるから…。」
梓はハナから眼中にないらしい。
「……!!」
楓の言葉に、はっとするアカリコット。
「・・・耕一さんのほかには私は何もいらないもの・・・」
アカリコットの目が次第に潤んでいく。
「わっ…私だって…私だって・・・浩之ちゃんがいれば…他に何もいらないのに…浩之ちゃんが私だけを見てくれさえすれば…ぐすっ…」
泣き出してしまった。
それに気づいた矢獣たちが、初音と千鶴をほっぽりだしてアカリコットの周りに集まる。
しかしどうしてよいかわからず、ただオロオロするばかりである。所詮矢島…か。
「なのに…なのに…浩之ちゃんはいつもマルロード姫ばっかり気にして…私の事なんか見向きもしないでマルロード姫の頭をなでてばっかりで…」
ぐずぐずと泣くアカリコット。後ろでは矢獣たちが必死になって、
『男なんていくらでもいるさ!』とか、『僕がついてますよ!』
などと慰めようとしていた。…慰めになっとらんが。
やはり所詮矢島だ。
「私に言い寄ってくるのは…クズみたいな男ばっかりで…私には…浩之ちゃんがいてくれないと意味がないのに…どうして…わかってくれないの…浩之ちゃん…?」
後ろで密かに矢獣がキズついていた。
「ぐすっ…ぐすっ…」
そこに楓近づいてすっ…とティッシュを差し出した。(当然、アズセアが『エルクード』でつくったヤツである。)
「…涙…拭いてください…」
アカリコットは泣きながら、
「ありがとう…」
お礼を言った。
「…どうして私たちを襲うんですか…?」
楓がアカリコットをじっと見据えて問い掛ける。
「だって…浩之ちゃんが…お姉ちゃんたちが『鬼騎士』になったら…困るって…だったら…お姉ちゃんたちを倒したら…浩之ちゃんが喜んでくれると思って…」
「…神官浩之が…好き…?」
「…うん…。」
「…神官浩之が幸せだったらそれでいいと思うますか…?自分が不幸になっても…?」
「……」
アカリコットはうつむいてしまった。
「…好きな人のためなら…なんでもしてあげたくなる気持ち…私にもわかります。たぶん、あなたの下僕にも…。」
後ろで矢獣がうなずいている。
「…でも、本当にそれでいいんですか…?…このままじゃ、この世界は…『トゥハート』は滅んでしまう…そうしたら、好きな人の笑顔も見られなくなります…」
「……」
「…それでもいいんですか…?」
「………いや…」
「…本当に好きなら…その人が喜ぶ事だけをしてあげていてはだめなんです…本当に…その人のためを考えるのなら…」
「……ごめんなさい…」
「…私たちも…あなたの下僕を攻撃してすいませんでした…」
「ううん…いいの、ヤジマだから」
当然であろう。
その時。楓の持つティッシュ箱が光を放ち始めた。
「…!?」
そしてティッシュ箱が光の中で形を変えて行く。
そして、光がおさまった時それは全く別のものになっていた。
「…ハンカチ…?」
今度は布切れである。相変わらず武器とは程遠い。
「…これが…武器の成長…?」
まあ、紙が布になったのだから成長といえぬ事もないと思うが…。
「「『伝説のエルクゥナイト』よ…」」
楓の後ろから『狩猟者』・エディフィルが語りかけてきた。
「「汝の『仲間をカンタンに見捨てつつ平気で愛を語る心の強さ』…確かに認めた」」
ぱああああ……。
こんどはエディフィルの体が光を放ち、形を変え始めた。
そして巨大な猫であったものは、光の中で人の形になっていた。
見慣れぬ衣装を身にまとった、黒髪の…すこし哀しげな顔をした女性に…。
「「しかし汝の『心』は まだ我をまとうには十分ではない…真の『鬼騎士』となって目覚めた時 我はまた汝の前に姿をあらわそう…」」
そう告げると、エディフィルの体は光となり、楓の体の中に吸い込まれていった。
「…消えた…」
さすがに楓が少し唖然としていると、
「? あ…あれ、猫…だったんだよね…?」
「『狩猟者』って巨大な女の人だったんですね…」
いつのまにか目を覚ました楓と千鶴が歩いてきた。
「…大丈夫…?千鶴姉さん…初音…」
あまり嬉しくなさそうに振りかえる楓。
「うん!楓お姉ちゃんが助けてくれたんだね!ありがとう!」
見捨てられかけていたとも知らずに初音が元気に返事をする。
千鶴は楓の横にすっ…と歩み寄って、
「…覚えてなさいよ…か・え・で・ちゃ・ん。」
そうつぶやいて、冷ややかな微笑みを楓にむけた。
ぞくり…。
楓の背筋にものスゲえ悪寒が走った。
「あ…あの…」
おずおずとアカリコットが近づいてきた。
「ご…ごめんなさい…」
「?」
初音は不思議そうな顔をした。
「あら…いいのよ、全然気にしてないから」
そういってにっこりと笑う千鶴に、アカリコットは得体の知れない恐怖を感じ取った。
(…いつか殺られる…!!)と。

…その様子を、テレビのモニターを通してみていた者がいた。
神官浩之である。
「ちっ…『狩猟者』のひとりがよみがえりやがった…」
舌打ちする神官浩之。
その側に控えている者達のうちの一人…眼鏡をかけた女性が立ちあがり、
「まぁアカリコットはまだ貧乳やさかいなあ。詰めが甘いのはしょうがないで」
そういって一歩前に歩み出て、ポーズを決めた。
「ほな 次はうちの番やな。この『超プリティでナイスバディで成績優秀・品行方正・眉目秀麗の三拍子そろったセクシーダイナマイトな』ホルシナさまの!」




ぴろぴろぴろぴろ……きょうはだ〜れだ?
ぴろりん   きょうは 保科!
「だれが神戸牛やあああぁぁ〜〜〜〜っ!!!!」

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みなさんいかがおすごしでしょうか…歯医者にも行ってないのに歯の痛みが治まってなんかCOWA!!な気分のROSSOでス。
…自分も感想書きたいとこなんでスが、時間がないんでス。大学でネットしてるもので…。
でも、皆さんの作品、とても楽しく読ませていただいていまス。
自分は保科好きなんでスけど、委員長のSSって結構少ないでスね。どなたかもっと保科に合いの手…じゃなくて愛の手を!!