鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第六話 投稿者: ROSSO

第六話 創師アズセアの武器

「はい、とってきたよ」
ここは『柏木の森』の創師アズセアの家の中。
にっこりと微笑む初音の前には、でかい宝石のような塊が三つ、どかりと置かれている。
「え…もう?ずいぶん早かったね…」
創師アズセアが驚くのも無理はない。こんなにも早く帰ってくるとは思ってもみなかった事であろう。
そう。初音・楓・千鶴…異世界より召喚された三人の少女たちは、今この時点で、すでに伝説の鉱物『エルクード』を手に入れているのである。
なぜこんなにも早かったのか?それは、ただただ哀れなるフェリ耕の献身的な協力のなせる業であろう。
『柏木の森』においては襲い掛かるモンスターたちを一手に引き受け(ときおりセリオの妨害が入る)、千鶴が隙あらば襲わんとするので気が休まる時がなく(よく無事だったものである)、さらには森の出口で襲いかかってきた魔操師マサシオーネの相手までさせられ(その後なぜかケツを押さえて泣いていたようだ)、『伝説の水門レザム』に着いたら着いたで、
「ここに『エルクード』があるんですね?じゃあすいませんけどとってきてもらえますか?」
と、いきなり千鶴に水門の中に蹴落とされたのである。しかもきちんととってくるのだからたいしたものである。何か眠っていた力でも呼び覚ましたのだろうか。
なお、アズセアの家の前まで『エルクード』を運ぶことさえ彼の仕事であった。 
そして今彼は、アズセアの家の前で、心身共にズタボロになってボロ雑巾のようにぐったりと倒れている。
(…こんな事なら「俺が『エルクード』とって来てマルロード姫助け出してあとは姫をぐひゃひゃひゃこりゃたまらんわい」なんてこと考えなきゃよかった…)
などと後悔しながら。
「…そういうつもりだったんですか…?」
「えっ!かっ楓ちゃん!?いつからそこに!?」
「…さっきからずっといました…心配だったから……なのに…」
悲しそうにフェリ耕をみつめている。
「ちっ…違うんだ楓ちゃん俺は別にマルロード姫に変な事をしようというんじゃなくてただちょっとあのほっぺた(とかいろんなとこを)をふにふにしたり頭(とかあそことかを)をなでなでしたりハンカチで涙(以外のものも)ふきふきしてあげたりしたかっただけで…」
「…不潔です耕一さん!!」
ざしゅっ。
「ぐあっ!!」
ただでさえ疲弊しているフェリ耕の背にトドメの一撃をくれて、楓は捨てゼリフを残しアズセアの家の中へと走り去った。
「…耕一さんのカニみそーーっ!!」
…みそ?
「…か…楓ちゃん…今は…耕一じゃなくてフェリ耕…」

さて、創師アズセアの家の中では、すでにエルクードを材料とする武器の製作が行われていた。先刻、アズセアが台所にエルクードを持って入ってからずいぶん経つ。中からは、
『ギニャアァ』だの『URYYYYYYYY』だの『ちょいな』だのと得体の知れない音が聞こえてくるが、中でどんな作業が行われているかは、台所から締め出されている三人(+セリオ)には知るすべがなかった。
とにかく暇なので、
「え〜っとね、じゃあ、『ヴァニラ・アイス』!」
「…『ンドゥール』…」
「そうねぇ…じゃ、『アレッシー』。口癖は『えらいねェ〜』よ」
「ぷぷうぷう」
「…なんていってるの…?」
「えっと…『ケニーG』だって」
などど、『古今東西 JOJ○第三部敵スタ○ド使いの名前』で暇をつぶしている。

そうこうするうちに、アズセアが台所からでてきた。
「…出来たよ…この世界で唯一の、あんたたちだけのための、あんたたちにしか使えない、エルクゥナイトの武器が!!」
そう言って三人に小さな包みを手渡す。
「伝説の鉱物・『エルクード』で出来た武器は持ち主のレベルに合わせて成長していく…お前たちが今もっているその武器はまだ『真の姿』じゃあないんだ」
「…あの…」
「この『トゥハート』ではどんなことも『人気』が決定するんだ…料理の出来・不出来も魔法の成立・不成立も…そして…『未来(エンディング)』さえも」
「…ねえ」
「…なんだよ?人が語りに入ってる時に…」
「私の…これ…どう見ても包丁なんだけど…」
千鶴の手に握られているものは確かに包丁以外のなにものにも見えない。
「千鶴お姉ちゃん、それならまだいちおう武器にはなるよ…わたしのなんかこれだよ」
初音の言う『これ』とは……おたまである。いや、もしかしたら別のものかもしれないが、どうにも武器になるとは言い難い。
「楓お姉ちゃんのは? ……っ!!」
「どうしたの?……っ!!」
初音も千鶴も、楓の持つ『武器』を見て絶句する。
「………………」
楓はただ黙って自分の手の上にあるものをみつめている。いや、もしかしたらその両眼は何も見ていないのかもしれない。
楓が持っているのは…
「…それって…」
「ティッシュ…?」
どう見てもティッシュである。ポケットティッシュではなく、箱の。箱の側面には『FUKI FUKI』という文字が入っている。
これをどう使えば神官浩之を倒す武器になるというのか。(使い方によってはすさまじい威力を持っている気がしないでもないが。別の意味で。)
それ以前に、なんだってわざわざ伝説の鉱物からティッシュなぞつくるのか。
「心配いらないよ。その武器があんたたちに最も合ってるんだ。いずれあんたたちの成長に合わせてその武器も形を変えていくさ。」
形が変わった所で元がティッシュでは…。
「…(なによ…主役から外れてるからってひがんで…どうせ姉さんだったら拘束具くらいしかもらえないわよ…一生柳川に縛られてればいいのよ…)…」
楓の呟きをアズセアは聞き逃さなかった。
しかし…なんとかこらえて、
「(ぐっ…)さっ…あたしの仕事はおわったよ…もうあたしのとこには用はないだろ…ホレ、セリオ」
そう言ってセリオの方に合図すると、
「ぷっぷくぷう〜〜」
セリオのひたいの宝石が光りを放ち、その光は地に魔法陣のようなものを描き出す。
そしてその中からバスに似た(というかそのもののような…)乗り物が飛び出してきた。
「わああああっ!」
「ぷうぷう」
「…これに乗れっていってるのかな…」
「あら…楓、セリオの言ってる事が分かるの?すごいわね」
「…これを食べろって言ってるんなら…食べるけど…」
…やりかねんなぁ…
「ぷぷう」
「これに乗れって」
「さ…いきな『鬼騎士(エルクゥナイト)』たち…『鬼騎士』となるには『狩猟者』を蘇らせなきゃいけない…それにあんたたちが持ってるその『武器』は『狩猟者』を蘇らせる『鍵』でもあるんだ」
「『狩猟者』を…蘇らせる…『鍵』…?」
初音が自分の『武器』…というかおたま…を怪訝そうな顔でみつめる。口には出さないが、嘘臭いと思っている事は間違いない。
「『狩猟者』っていったいどんなものなのかしら?」
「セリオが『狩猟者』のいる場所まで案内してくれるよ」
「ぷうぷう」
セリオが無表情に胸を張る。『だ〜いじゃうぶま〜かせて』と中指を突き立てんばかりである。
少し楓と初音がいやな顔をした。

三人はセリオの出したバスに乗り込んだ。
「ありがとうアズセアお姉ちゃん!!」
初音が窓から顔を出して礼を言っている。
「死ぬなよ」
千鶴もにっこりと笑って、
「戻ってきたら私が腕によりをかけてお料理をつくってあげますね。得意なんですよ」
「ウソつけっ!!」
最後に楓が、
「…どうして生きてるの…?」
「…へ?」
「…どうせならアニメ版のストーリーの方が良かったのに…そう思わない…?」
「ん?なんで?」
「…この場面でアズセアが死ぬから…」
「…(ひくっ)…さっさといけ…」
ぶろろろろろ……。
三人を乗せたバス(運転手・セリオ)が走り去る。蛇行しながら。
「うわ…あぶな…」
ちょいとエキサイティングに過ぎる運転である。
(マルロード姫…どうかあいつらを…あの異世界の少女たちを守ってやってくれ…)
…………
(…やっぱ守んなくていいや…)
……ぷるぷるぷる……。
アズセアが体を震わせている。
「ヴぁああああああっやっぱ納得いか〜〜ん!!なんであたしがあの亀姉のことを『少女』なんていわなきゃいけないんだ〜〜〜〜!!!」
「…っくしゅん!!」
バスの中で千鶴がくしゃみをした。
「また誰かが私の事うわさしてるんだわ…美しいって罪ね…」
…あえて誰もつっこまなかった…。



…どうも…みなさんいかがおすごしでしょうか…最近なにをやってもダメダメで終わってる感がしないでもないフィナーレ・ROSSOです…
ああなんかこの文にも何も中身がない…今に始まった事じゃないですけどね…まあいいや。(いいんだろうか…)
ご感想下さった方々、本当にありがとうございました。
しかし…もう原作もなにもあったもんじゃないなこれ…なんだかなぁ。ひどいもんだ。とりあえずすいません。
しかし…『ふきふき』は一部の人には最強の武器かもなぁ…。
ではまた。