鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第5話 投稿者: rosso



第5話 謎の美少年(笑)剣士 フェリ〇

異世界トゥハートに召喚された初音・楓・千鶴。創師アズセアのもとにたどり着いた三人は、休む間もなく伝説の水門『レザム』に行き伝説の鉱物『エルクード』をとってこさせられる羽目になる。はたして彼女たちは伝説の『鬼騎士(エルクゥナイト)』となって『トゥハート』を救うことができるのだろうか…?

「あうう〜…ぐすっ…えぐっ…」
…そこはある学校の校舎のような建物の中の一室。
緑の髪をした美しい…といえなくもない気もする…少女が一人泣いていた。
「…どうか…この世界を救ってください…じゃないと…手遅れになっちゃいますぅ…」
そこに一人の男が入ってきた。
「最後の力を振り絞って…異世界から『鬼騎士(エルクゥナイト)』を召喚したな…」
「…浩之さぁん…」
「無駄なことはよせ…マルチ…」
「…マルロードですぅ…ぐすっ」
「『狩猟者』が蘇る事はねえ…『伝説のエルクゥナイト』も誕生しねえって」
「どうしてですか…?どうして『神官(しゅじんこう)』の貴方が…こんなことするんですかぁ…?『トゥハ−ト』が…この世界が…どうなってもいいんですか…?」
浩之は答えない。ただ笑顔を向けるだけ。すこし寂しげな…やさしい笑顔を。

「ぷうぷう」
初音、楓、千鶴の三人は、アズセアに案内役として与えられたセリオを先導に『柏木の森』の中を歩いていた。
「…本当にこの道でいいんですか?ここ、さっきも通ったような気がするんですけど…」
歩きつかれた千鶴がセリオをジト目で見ながらきく。かなりイラついているようだ。
「ぷっぷうぷぷう」
「…なんていってるの…?」
セリオは(基本的に)『ぷう』としかいわない。話せないわけではないようだが…
初音にはセリオが何を言っているのか理解できる(もしくは理解できているつもりになってるだけかもしれない)ようで、通訳のようなことをしている。けっこう正確なようである。
「え…うん、えっとね…」
「ぷぷぷうぷう」
「『うるせえだまってついてくりゃいいんだよこの寸胴』…だって」
マジかい。
千鶴がタブーを聞き逃してくれるはずもなく…当然、
「…は・つ・ね・ちゃ・ん…?お姉ちゃん…ウソつく子は嫌いだな〜〜(にっこり)」
となる。
「ひっ!ほ、ほんとうだよ千鶴お姉ちゃん?わたしウソなんて…」
初音は早くも半ベソ状態である。
「……」
我関せずといった顔でそのさまを傍観している楓。
「……(はっ!)」
その後ろにいつのまにかセリオが回り込む。そして…
「…偽善者…(ぼそっ)」
何とセリオが楓そっくりの声色を使ってとんでもないことを言うではないか。
「…っ!!」
それを聞いて、初音に向けられていた殺気がそのまま楓に向けられる。
「ひっ…ち…違…姉さん今のは私じゃ…セリオが…」
「ぷう」
ちなみにこの時すでにセリオは楓の背後から移動している。
「まああぁ…この子ったら普段おとなしいと思ったらなんてことを…お仕置が要るわねぇ…」
じりっ…。
下がる周囲の温度。歩み寄る死。相変わらず無表情だが、一瞬『ニヤリ』と笑ったように見えたセリオ。
楓は恐怖のあまりひざが笑っている。
「…(ああ…さようなら耕一さん…)」
楓が死を覚悟したその時。
ざざっ…という音とともに彼女たちの背後の茂みからモンスターが『イェ〜イ!志保ちゃん大!復!活〜〜!』という鳴き声をあげながら飛び出してきた。何とまァ間の悪い。
「きゃあっ!」
悲鳴を上げる初音とは対照的に、楓は既に気を失いかけておりモンスターのことにまで気が回っていない。
『大金星もらった〜〜!!』という奇声をあげてモンスターが三人+1に襲いかかる。己がいかに愚かであるか分かっていないのである。
「……フン…」
うとましげに、かつ冷ややかにそれを見やる千鶴。ただ黙してその右手を振り上げる。そして…
ぶんっ…
断末魔すら許されずにモンスターが肉片に変わる。飛び散る鮮血。
「「ひっ…!」」
初音と楓を畏怖させるには十分すぎる光景であった。千鶴は、今ので少しは気が晴れたようだが。
…ところで、その恐るべき戦闘力を目の当たりにしたのは、初音、楓、セリオだけではなかったようである。もう一人、その一部始終をみていた者がいる。
「…お前たち、何者だ?」
「「「!!」」」
「ぷう?」
突如として自分たちにかけられた声に、三人はその主を探す。
「…あっ!上だよ!」
初音の声に上を見上げてみる。巨大な剣を携えた青年が、巨木の枝の上にたって三人を見下ろしている。中学、もしくは高校生くらいの年齢であろうか。髪の毛はボサボサで、眉毛が別れている。
「…あれ?耕一お兄ちゃ…ムグ…」
何かいわんとしている初音の口を楓がふさぐ。
「…(ダメ…初音、言っちゃダメ…耕一さんも大変なんだよ…)」
「…(あ…そっか…そうだったね)」
初音が思い出したようにうなずく。
「あら?耕一さん、どうしてここにいるんですか?ここ、導師コーイチの出番じゃありませんよ?」
((…忘れてるーーーーーーーーッ!!??))
ガビーン。
なんだかマ〇ルさん調に驚く楓と初音。
だが、千鶴はまだ分かっていない。
「あ、もしかして私のこと心配して来てくださったんですか?感激ですぅ〜でも、大丈夫ですよ…うふっ」
「あ…あの…千鶴さん?」
「本当に…やさしいんだから…ふふ…そうやって…いつも…私の凍った心をやさしく溶かしてしまう…」
ヲい。何のセリフだそりゃ。
ちょんちょん。
「ん…なあに?楓…」
「…(ごにょごにょ)…」
「(え…耕一さん一人二役?そうだったっけ?)」
こくこく。
(まあ、正確には完全に一人二役、というわけではない。幼年期の耕一と、青少年期の耕一、である。)
「(そうだよ…いまは導師コーイチじゃないんだよ)」
どうやら完全に忘れていたようだ。千鶴は、
「……」顔を赤くして、少し気まずそうに、
「ま…間違えちゃった…テヘッ☆」
ぺロッと舌を出した。
「「「…(…ぎっ…)」」」
この時、耕一、初音、楓の思いは一つになった。
「「「…(偽善だッ…!!!)」」」
シンジもまっつぁおのシンクロ率である。(なんのことやら)
「…(でも、どうして耕一さんが二役しないといけないんですか?)」
「…(人物関係あてはめていったらうまくいかなかったんだって)」
「…(…やっぱり『鳳凰寺 千鶴』は無理があったんじゃ…)」
いまさらウダウダいっても遅いわ。とにかく話を本筋に戻そう。
「お前たち…何者だ?」
青年(と呼ぶ事にする…いまさらだが)がもう一度たずねる。
「…敵かな…」
「さあ…一応人の形はしてるけど…さっきの『ホモ』(いうまでもないが、マサシオーネのことである)の例もあるから安心できないわね」
楓と千鶴はその青年を警戒しているようだ。
…と、そのとき、それまで沈黙していたセリオが、
「ぷうーっ!!」
いきなり飛び出してきて、
たんっ…。
青年のたつ枝まで一気に跳躍した。
「…!!」
セリオは、驚いている青年の側に立ち、無表情のまま、そっ…と手を首に回し…
「ぷうッぷうッ」
いきなりヘッドロックをかけた。
ぎりり…。
「ぐあああああぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!?」
しまるしまる。
そしてバランスを失い青年は枝から足を踏み外した。
「あっ…」
「…おちた…」
「敵かどうかなんて関係なかったわね…」
だが。予想に反し(もしくは予想通りに)青年は生きていた。ボロボロになりながらも。
ちなみにセリオは無傷である。そして今度は倒れているその青年に『機矢滅留・苦落血(キャメル・クラッチと読む)』をかけている。…アワ吹いとる…。
たたた…。
初音が青年に駆け寄ろうとする。
「…あ…だめ…初音…まだ敵か味方かわからないのに…」
「大丈夫だよ、だってセリオが…あんなに嬉しそうなんだもん」
「嬉しそうって…無表情だけど…?」
「ぷう」
無表情だが…確かに嬉しそうである…。
「……(親父…俺も今あんたのところにいくよ…)」
青年の顔もなぜだか幸せそうである。ほとんどイキかけているのであろう。
そこに初音が止めに入る。
「だめだよセリオ!」
たんっ…。高く跳躍し、回転しながらセリオの背後まで回り込む。
「アチョーーー!!」
そしてそのまま回転の勢いにまかせて両足でセリオの後頭部を蹴った。
「…か…回転龍尾脚…!?」
「うう…初音…そこまで成長していたなんて…姉さんにはもう教えることは何もないわ…」
何者だおまいら。(…ネタが分からない方すいません)
助けられた青年は、
「…ゲホッ…お…前…たち…何者…だ……?」
死にかけながらも、話を前に進めようとは今一度質問を繰り返す。見事な根性である。
…ところで、ここで言う『青年』とは、某ワイトアルバムの『よう、青年じゃないか』
の『青年』のことではないのであしからず。
「私は獅堂 初音…隆山からきたんだよ」
「…隆山?なんだそれは」(もう立ち直っている)
「私たちはマルロード姫に召喚され…ムグムグ…」
再び楓が初音の口をふさぐ。
「ムググ…お姉ちゃん…どうして急に…?」
「まだあの人が私たちにとって『いい人』か『悪い人』かわからないわ…もしあの人が神官浩之さんとやらの関係者だったら…私たちがマルロード姫に呼ばれて『トゥハート』にきた『異世界』の者だと知れたら…私たちきっとここで殺されるわ」
千鶴が深刻な顔をして言う。
が…
…殺せるだろうか…?
「でも…セリオが…」
「…セリオはいつもああなのかもしれないよ…」
楓の推測は正しいかも知れぬ。
「でも…」
初音は人を疑うことを知らないのである。
「あの人が敵かどうかはこれから確認すればいいことだわ」
そう言って千鶴たちは青年のほうに向き直り、
「私は鳳凰寺 千鶴…こちらは…」
「…龍咲 楓…」
それぞれ名乗り、
「よろしければお名前を聞かせていただけませんか?」
言い方は優しいように聞こえるが、その威圧感は『名乗りやがれ』と受け取らせるに十分である。
そして微笑む。
にっこり。
ビクッ…。青年はその笑顔に寒気を覚えた。
「俺は『フェリ耕』…お前たちどうして『柏木の森』なんかでウロチョロしてるんだ?」
ぶっ。
三人が吹き出した。
ぷっ…くすくす…。
「…(わ…わるいよ笑っちゃ…くすくす…)
「…(…だって…『フェリ耕』だなんて…苦しすぎる…ぷぷっ)」
「…(もうちょっとマシな名前思いつかないものかしら…ゴジータじゃあるまいし)」
…『耕リオ』のほうがよかったか…?もっと苦しいと思うが…。
フェリ耕はあえて無視して続ける。…顔を少し赤くして。
「この『柏木の森』は『魔法』も『超能力』も使えない…もちろん『参考書』も『バトルッチ』もだ…使えるのは自分の『頭』と『体』だけ…相当の『戦闘力』がないと生きて出られないところだぞ」
「…そう言う貴方は…どうしてここにいるんですか…?」
楓が問う。
「俺はこれから『伝説の泉 レザム』にいくところだ」
その言葉に、三人の顔が変わる。
「「「『レザム』へ!?」」」
「…レ…『レザム』に何をしにいくんですか…?」
楓の再度の問いに不敵に笑って答える。
「『伝説の鉱物 エルクード』を取りに」
「「えええええぇっ!?」」
「…(ね、ねぇ…『エルクード』ってアズセアが取ってこいっていってた『武器の材料』だよね?)」
「…(…うん…)」こくこく。
「…(『エルクード』ってたくさんあるのかな!?私たちの分なくなったりしないかなぁ?)」
「…(…わからない…)」ふるふる。
初音と楓がひそひそと話している横で、千鶴は何か考え事をしているようだ。
「(…それにしても…若いわ…導師コーイチはちょっと子供すぎるけど…この耕一さんは…みたところ青春真っ盛り…GETするしかないわね)」
きらーん。
一瞬、千鶴の目が狩猟者のそれのごとき輝きを放つ。
「フェリ耕さん…でしたよね」
「ああ」
「『レザム』にいかれるんでしたよね」
「ああ」
「じゃ、一緒にいきましょう」
「…へ?(あ…あの千鶴さん…セリフちがいません?)」
「お…お姉ちゃん?(あっ…)」
「…?…(あっ…)」
「幸い、出口は私たちが知っていることですし…ね、そうしましょう?」
「で…でもですね…」
「駄目ですか…?みんなで一緒にいったほうが楽しいと思ったのに…くすん」
千鶴が、ちょっとすねたような可愛い(?)顔でフェリ耕をみる。
「(ど、どうしようか…。俺は…、
1、 よーし、いくぞ!
2、 やっぱり、やめ。
…そうだ、やっぱりやめておこう。俺の本能がそう叫んでいる…エルクゥの勘とでも言おうか…)」
「お兄ちゃんと…一緒にいけたらいいなって…思うの…わがままかな…?」
「(は、初音ちゃん?君まで何を…?)」
「…私…待ってますから…信じて…ずっと…ずっと待ってますから…」
「(か…楓ちゃん…?待つって…ちょっと…)」
三人の潤んだ瞳がフェリ耕をとらえている。
「うっ…」
じぃっ…。
うるうる。
ぷつんっ…。
限界であった。三人の泣き落としについにフェリ耕の理性がうち負けた。
「うん、わかった。みんなで一緒にいこう。俺が…守ってあげるよ…」
きゅぴーん。
そのとき、三人の目からそれぞれ妖しい光が放たれたのを、セリオは見逃さなかった…。
(((…下僕、GETだぜ!!)))
こうして、三人の試練の旅に新たな、そして哀れな同行者が加わったのだった…。
異世界トゥハートの、それ以上に、フェリ耕の運命やいかに…。
「ぷう?」
ぷうじゃねえ。



ぴろぴろぴろぴろ……きょうはだ〜れだ?
ぴろりん  きょうは 千鶴!
「…耕一さん…あなたを…ポアします…」
…それは『ち〇お』だ…ってもう使い古されとるか…すまん。

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みなさんいかがおすごしでしょうか…ROSSOでございまス。
なげえ…下らんうえにいらんことばっか書くからこうなるのはわかってるつもりなのですが…どうもすぐに本筋から脱線してしまうんですよね…
ストーリーをもっとテンポよく進めるべきなんでしょうが…なかなか…。
そうそう、第1話〜4話まで、『龍崎 楓』とかいてましたが、正しくは『龍咲』
でした。
ストーリー展開は一応原作にそって進んでますが、どこでどういじるか自分でも予想がつきません。
笑って読み飛ばしてください。