鬼騎士(エルクゥナイト)ジローエモン 第4話  投稿者: rosso

第4話 創師アズセアとセリオ

異世界トゥハートに召喚された初音・楓・千鶴は、導師コーイチによって"柏木の森”の創師アズセアの元に行き、武器を手に入れるように教えられた。途中、神官浩之の手の者に襲われるが、どうにか(?)これを退け、今柏木の森に到着したところである。
・・・彼女たちはその森の中に一軒の家を見つけ、その家の様子をうかがっているところである。
「ごめんくださーい・・・だれもいないのかな・・・?」
「・・・はいってみましょうよ」
何度呼びかけても返事がないのにいいかげんイラついた千鶴が不法侵入を提案した。
「・・・それ・・・いけないとおもう・・・」
「うん・・・私もそう思う・・・たぶん今留守なんだよ。もうちょっと待とうよ千鶴お姉ちゃん」
「なにいいこぶってるのよ二人とも・・・この世界(というか私)の未来がかかってるのよ!こんな時に留守にする人が悪いんです!と言うわけで私たちにはこの家に入る権利があります・・・さあいきましょう」
「えっ・・・でも・・・」
初音にはまだ抵抗があるらしい。
「・・・まだ何か文句でもあるの?初音ちゃん・・・(にっこり)」
「・・・ううん・・・」
さすがの初音も命懸けでブリッ子してはいられないようだ。
と、いうわけで決行。
楓は勝手知ったる我が家と言わんばかりにズイズイと進んでいく。
初音は実に申し訳なさそうにおずおずと歩いていく。
そして千鶴は、目に付く部屋を片っ端から荒らしている。実に楽しそうに。
そして三人は、廊下の突き当たりの部屋の前に立っていた。ドアを開け、中を覗いてみる。そこには・・・
「うふふふふ・・・・・・」
”何か”が立っていた。・・・”何か”と言うのは、それがなんであるか三人には断定しかねたからである。だいたいのフォルムは人のようであるが、耳のところに妙な突起物がついており、額には宝石のような者が埋め込まれている。髪はオレンジがかっており、その視線は何を見ているか捕らえがたい。
「うふふ・・・ぷう」
その"何か”は、表情はまったく変えずに、口だけで笑いながらその部屋の中を手当たり次第に散らかしまくっていた。
「あ・・・あの・・・」
初音が恐る恐る話し掛ける。
「あなたが・・・アズセアさん・・・?」
それは振り向いて表情を変える事なく答える。
「ぷう?」
三人が凍り付く。
「これが・・・アズセア・・・?」
「・・・ちがうとおもう・・・」
「あっ!・・・も、もしかして・・・」
二人が千鶴のほうを見る。
「ア・・・アズセアって・・・」
「「アズセアって・・・?」」
「馬鹿なんじゃないでしょうか!?ほら、名前もそれっぽい性格悪そうで女っぽさのかけらもなさそうな感じだし」
「なんだとーーーーー!!」
三人の通ってきた廊下の方からの声とともに、三人の上からオリが降ってきて、三人を閉じ込めた。
「なっ・・・なに?なに?」
うろたえる初音。
「・・・・・・」
どうでもよさそうな楓。
「もういっぺんいってみろ!このクソ姉!!誰の名前が馬鹿っぽいだとぉ〜!!」
「やだ・・・梓ったらセリフがそうなってるんだからしょうがないじゃない」
「ウソつけっ!!黙ってきいてりゃいいたい放題いいやがって!そっちこそなんだよ『鳳凰寺 千鶴』って!そんな上品そうな名前千鶴姉には似合わないんだよ!セーラー服も!!年考えろよ!!とっっっくの昔に卒業だろ!!」
みなさんお気づきだろうが、(梓は気づいてないようだが)今のセリフにはかなりヤバい・・・およそ死にたくなければいうべきではない・・・そんな言葉が含まれていた。
「あ・ず・さ・ちゃ・ん?」
千鶴の足元が徐々に沈んでいこうとしている。
しかし、梓はよほど気に食わないらしく、
「だいたいなんであたしだけ主役から外れてるんだよ!!こんなハズいカッコして!!納得いか〜〜〜〜ん!!!!」
などと続けている。
その時、それまで沈黙していた楓が、
「・・・だって・・・梓姉さん・・・人気ないもの・・・」
ボソッ・・・とつぶやいた。
梓の動きがぴたりと止まる。
「ちょっ・・・ちょっと楓お姉ちゃん・・・いいすぎだよう・・・ちょっとシナリオで扱いがひどいからって・・・」
ぐさり。初音の意図せぬ悪意が梓の傷を開く。
それまで周囲の温度を下げまくっていた千鶴もにっこりと笑って、
「そうよね・・・レズ娘とか言われてるんだものね・・・かわいそうな
あ・ず・さ・ちゃ・ん(はあと)」
止めを刺す。
「うっ・・・」
あっ。
「うわああああぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!!なんだよみんなして!!千鶴姉も楓も初音も耕一もみんなきらいだあ〜〜〜っ!!」
・・・泣きながら逃げ出してしまった・・・あ〜あ。
「ちょっと待ってお姉ちゃん!!せめて私たちオリから出してよ〜〜〜!!」
初音も泣きそうである。・・・勝利に酔いしれる姉の横で。
・・・・・・・・・・・・・・・
結局、梓をなだめるのに相当の時間を食う羽目になってしまった。
・・・とりあえず再開。
「えっと・・・どこからかな・・・?」
オリが落ちてきたとこから。アズセアのセリフからはい始め。
「あーっはっはっは!!やっとつかまえたぞセリオ!よくも今まで私の台所を荒らしてくれたな!!さあどんな折檻をしてやろうか・・・その鋼の胸の形がどれだけ変わるか試しにもみまくってやろうか・・・それとも逆さにつるして下着を衆目にさらしてやろうか!」
恥ずかしそうにセリフを読み上げる。
「・・・(梓姉さん・・・やっぱりレズ・・・?)」
「・・・(しょうがないじゃないか・・・セリフがそうなってるんだから・・・!)」
・・・まあいいとして。そのセリオはいまだ好き勝手絶頂に台所を荒らしまくっている。
「・・・あれ?・・・セリオ?」
その事に気づいて、オリのほうを見るアズセア。セリオが入っているべきオリの中には見知らぬ三人の少女。
「・・・あたしの台所をあらしていたのはあんたたち?」
「ちがうよ!」
「・・・私たちいまこの『トゥハート』にきたばかりだもの・・・」
「そうですわ・・・それにほら、そこのお嬢さんが今もあなたのお台所を荒らしてらっしゃいますもの」
・・・心なしか千鶴のセリフ回しが少し上品すぎるような・・・
「あっ!」
「ぷうぷうぷっぷくぷう」
・・・無表情である。
「・・・セリオ〜〜!!」
「ぷっぷぷう〜〜〜」
・・・繰り返すが無表情である。
「とにかくここから出してよ!」
「・・・だめだね・・・あたしはあんたたちを台所に招待した覚えはまったくないんだ」
「鍵を開けっ放しにしてるのが不用心なのよ!!まったくがさつなんだから!!」
「・・・(くっ・・・また台本にないセリフを・・・クソ姉・・・)鍵が開いていた・・・?」
「うん、開いてたよ」
アズセアの表情が変わる。
「・・・あの鍵は特製のあたしか導師コーイチにしか開けられないものなのに・・・」
「・・・私たち・・・その導師コーイチにいわれてここに来たんです・・・」
「導師コーイチに・・・?もしかしてあんたたち・・・伝説の『鬼騎士(エルクゥナイト)』!?」
「もしかしなくてもそうです」
さあ、ここから出しなさい・・・そういう顔で千鶴が胸を張って答える。
「・・・(くそ・・・)そうか・・・じゃあ・・・ついにはじまるんだな」
くい。
アズセアが側に垂れていたヒモをひくと、三人を閉じ込めていたオリがうえにあがっていく。
「よくきたな・・・伝説の『エルクゥナイト』たち・・・あたしの名はアズセア・・・この世界で最高位の『創師』だ」
「ぷう」
セリオが初音の方に近づいていく。
「可愛いね・・・セリオっていうの?」
にっこり。初音がやさしく微笑みかける。
「ぷぷう」
セリオが表情を変えぬまま、初音に抱きつく。どうやら気に入ったらしい。
「さて・・・めんどくさい事は抜きだ。あんたたち、あたしに武器を作ってもらいに来たんだろ?だったら金は要らないから材料は自分でとってきな」
・・・いきなりそこまで話を進めるか。ホントに面倒な事は抜きだな・・・。
「・・・(梓お姉ちゃん・・・まだ私たちのセリフ残ってるのに・・・)」
「・・・(・・・たぶん・・・まださっきの根に持ってるんだと思う・・・)」
「・・・(全くいつまでもうじうじと・・・男らしくない・・・)」
「女だッ!!!」
・・・ベタである。
「・・・とにかくっ!!伝説の『エルクゥナイト』の武器は伝説の鉱物『エルクード』でできたものじゃないとダメなんだ!分かったらさっさと伝説の水門『レザム』に行ってとってこーーーい!!」
「なんだか伝説ばっかりだね・・・この世界って」
余計なお世話だ。
「・・・でも・・・私たちその水門がどこにあるか知りません・・・」
「そうよ。それに私たち何の装備も持っていないんだから」
「・・・(要らんくせに・・・)心配ないさ・・・このセリオを連れていきなよ 道はこいつが知ってる・・・それにたいていの必要な物はこのセリオが持ってる」
「え・・・でも・・・」
「つべこべいわんといけ〜〜〜〜っ!!」
げしっ
三人は追い出されてしまった。
「・・・あれ?たまがいないよ?」
見ると、導師コーイチの出した精獣の姿は跡形もなく消えている。
「・・・逃げたのかな・・・」
おそらく。
「ぷうぷう」
セリオが三人のほうを見ている。
「・・・なんていってるのかな・・・?」
「ついてこいって言ってるみたいだよ」
「・・・分かるの・・・?初音・・・」
「うん、なんとなく」
「え〜?歩きですか?めんどくさいわね二人でちょっと行ってきてくれない?私ここで休んどくから」
「・・・却下・・・」
こうして、三人は、伝説の『鬼騎士(エルクゥナイト)』となるべくその第一歩を踏み出したのである。
「いこう!海ちゃん風ちゃん!!」
だれが海ちゃんか。


ぴろぴろぴろぴろ・・・・・・きょうはだ〜れだ!
ぴろりんっ   きょうは琴音!
「あ・・・藤田さん・・・この人・・・アブないですよ・・・」
余計なお世話だ。


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こんにちは。ROSSOです。みなさまごきげんいかがでしょうか。
これ読んでご機嫌を損ねる事ございましたら、平にご容赦を。
・・・いや、梓は嫌いじゃないんですけどね・・・よろしければ、ご感想をいただければ・・・感激の極みでございます。
では。