電葉戦機バーチャリーフ・第3話 投稿者: T-star-reverse
第3話 友情のタッグ・マッチ

「セリオさんセリオさん」
「――なんですかマルチさん?」
 マルチがセリオに話しかける。
「わたし達がここに出てきたってことは、今回のタッグっていうのは、
わたし達のことじゃないみたいですね」
「――そうですね。たぶん、別の方達がタッグを組むのでしょう」
「そうですよね。誰なんでしょう?」



 ……と、妙に説明チックな二人の会話があったところで、一行は
第二の戦場にたどり着いた。

「ここは……?」
 千鶴が怪訝な表情で周囲を見渡すと、綾香がそれに答えた。
「エクストリームの会場をだだっ広くした、って感じね」
「それじゃ綾香さん、私達で行きましょうか?」
 葵がそう聞くと、綾香はこくんと頷いた。
「そうね。わざわざこういう場所を用意してくれたんだし、あたし達が
やらなきゃ失礼ってもんよね」
「あんたたちが行くなら私も行くよ」
 と、これは好恵。
 きっ、と睨み合う綾香と好恵。
「けんかしちゃ、だめだよ」
 仲裁する瑠璃子。無論二人は聞く耳持たない。
「あっ!あそこにバーチャロイドが2機いますよ!」
 との葵の声に、ようやく睨み合いをやめる綾香と好恵。



 その2機のバーチャロイドとは、

 1機は、アファームド・ザ・ストライカー。
 もう1機は、アファームド・ザ・バトラー。

 同型の、アファームドシリーズが肩を並べて立っていた。
「ははははははっ、よく来たなぁっ!!」
 と、全員に聞き覚えのある声が響く。
「我々に勝てる自信のある奴はかかってこい!」
「まあ、バーチャロイド専門家の我々にかなう訳はないだろうがな!」
 と、二人揃ってハイテンションな男の声……
「橋本さん!?それに矢島さんっ!?」
 驚いたように声を上げる葵。確かにその声は、源五郎の助手二人のものだ。
 綾香と好恵は、額を片手で押さえる仕種をした。
「……あーあ、一気にやる気が萎えちゃったわ」
「……そうだな」
 と、二人が一歩退いたのとは逆に、前に出た機体が2機。

「……あんた達、ヒロ達の時もこうやって敵に回ってたわね」
 と、志保がサイファーで出る。
「浩之ちゃん達の情報を、敵に流したりしたのね……」
 と、もう一人。中量火力機ドルカスに乗った、あかりである。

「その通り!俺達の活躍によって、奴らは我らの手に落ちた!」
「主任は主任で、俺達の暗躍になど気づいていないからな!」
 と、そこまで聞くと、黙っていられないのは他のメンバー。
 ほぼ全員が怒りに燃えて突っ込もうとするが、すでに結界が張られていた
ためにべちべちべちと続けざまに結界に体当たりする結果となった。
「殺すっ!あたしに殺させてくれっ!!」
「許せません!私が滅殺します!」
「あんたたち、五体満足で済むと思わないでよ!」
 などなど、悪口雑言が並べ立てられるものの、橋本と矢島の二人は、全然
堪えた様子がない。
 それどころか、平然として言い返す。
「心配しなくても、一人づつやっつけてやるから安心しろ!」
「俺達はこの二人に借りがあったりするからな!お前らはその後だ!」
 そして、4機のバーチャロイドが火花を散らす。



「それじゃ行くわよ!」
 戦闘の口火を切ったのは志保のサイファーだった。
 機動力を活かし、相手の頭上を飛び越えるようにして攻撃を仕掛ける。

 ぱぱぱぱぱっ!!

 ばらまかれた弾は2体に命中するが、あまり効いた様子はなかった。
 サイファーは、敵を挟んでドルカスと反対方向に着地した。
「わははははっ!サイファーごときの貧弱な攻撃、痛くも痒くもないぞ!」
 矢島の声が、バトラーから聞こえる。
 その声に、志保が唇をかむ。
「くっ……あかり!あんたも攻撃しなさいよ!」
「う、うん!わかった!」
 と、あかりがドルカスの操舵スティックを動かそうとするが、それよりも
ストライカーとバトラーが動くのが早かった。
「いくぞ、矢島っ!!!」
「おうよ、先輩っ!!!」
 ストライカーがドルカスに向けて射撃を仕掛けてくる。
 それをなんとか避けるドルカスだったが、その間に近付いてきたバトラーの
トンファーがドルカスに迫る!
 必死でジャンプしてその一撃をかわすドルカス。そこに、ストライカーの
蹴ってきたボムが飛んでくる!

 どぐぁぁぁぁぁぁんっ!!

「きゃああああああああっ!!!」
 当然バランスを崩し、地面に叩きつけられるドルカス。
「あかりっ!!!」
「……」
 返答はなかった。どうやら今の衝撃で頭を打ったのか、気を失ったらしい。
 サイファーが、ストライカーにレーザーを放つ。ストライカーは横方向に
ダッシュしてそれをかわすと、振り向きつつサイファーに射撃をしてくる。
「今度は……そっちだ!」
 と、今度はサイファーに向けてダッシュするバトラー。
 機動力を活かして射撃をかわしつつ、バトラーを近付かせないように
距離を保つ。しかし、志保はその状況にいらだっていた。
「ああっ!もう!このままじゃジリ貧よ!」
 と、手元が狂ったのか、ストライカーの射撃が足をかすめる。
「くっ!……あかり、早く目を覚ましてよぉっ!!」
 着地と同時に、嫌な音がサイファーの左足から響いた。
「やばっ……足が!」
「もらったぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ごっ……がぁっ!

 サイファーがバランスを崩したその隙に、バトラーのトンファーが
サイファーの胴体に深々とめり込んだ!
「あぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 その衝撃で吹き飛ぶサイファー。悲鳴を上げる志保。
 そして、倒れたサイファーに、ストライカーが近付いてきた。
「いいざまだね、長岡さん……いや、志保!!」
 橋本の声が、志保の耳に届く。
「図書室での借り、今こそ返してやるよ」
 と、銃口をコクピットに向ける。
 そして、もう一度口を開く。
「どうだ?今度こそ俺の女になると誓えば、命だけは助けてやるぞ」
「……本当?」
 橋本の言葉に、聞き返す志保。
「ああ、どうだ?俺の女になるか?」
「そ、それじゃ……あたし……」
 一瞬の沈黙。
「あたし……」
 さらに沈黙。

「……ハイそうですかと、あんたなんかの言う事を聞くわけないでしょっ!」
「よく言った!」
 その瞬間、橋本が引き金を引いた……!

 ごすうっっっっ!!

「のわぁぁぁぁっ!?」
 と、横合いから飛んできたハンマーが、ストライカーの脇腹にヒットする。
 その衝撃で銃口がそれ、その隙にサイファーが敵から離れた。
「志保、大丈夫!?」
「ナイスフォロー、あかりっ!!」
 ハンマーを引き戻し、ドルカスがサイファーの側に寄る。
「矢島っ!!お前何してたっ!?」
「すいません先輩!神岸さんが気を失ってると思うと、ああしてやろう、
こうしてやろうと、必死で考え込んでしまって……」
「変態かおのれはっ!!」
 と、橋本と矢島とが言い争っている間に、あかりと志保が相談していた。
「……で、……ね?」
「うん、わかった。……すればいいんだね?」

「……とにかく!今度は手加減しないでとどめを刺すから覚悟するように!」
 橋本が志保にそう言うと、矢島もあかりに話しかける。
「神岸さん!藤田なんかより俺と付き合ってくれぇぇぇぇっ!!」
「嫌!」
 渾身のストレートにカウンターを合わされたような衝撃を受ける矢島。
「な、なら、なら俺も手加減なんてしないぞぉぉぉぉっ!!」
「いくぞ、矢島っ!!!」
「おうよ、先輩っ!!!」
 再びストライカーが射撃、バトラーがダッシュする。
 しかしそれは、志保の作戦の成功を意味していた。
「いくわよ、あかり!」
「オッケー、志保っ!」
 サイファーがその場でジャンプし、飛行機形態に変形をはじめる。
 そしてドルカスが飛び、変形したサイファーに掴まる!
「「必殺!ハンマーウェイブ!」」
 サイファーが、直線上に並んだバトラーとストライカー目がけて飛ぶ。
 そのスピードに、呆然とするバトラーとストライカー。
「それっ!!!」
 ドルカスが、サイファーに掴まっている手を離し、落下をはじめた。
 その落下地点には、バトラーの姿……。
「え!?う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 ぐしゃっ。

 アファームド・ザ・バトラー、圧縮スクラップ。

「や、矢島ぁぁぁぁぁっ!!」
 と、矢島の機体が潰されたのを見て叫ぶ橋本。
 しかし、彼にも似たような運命が待ちかまえていた。
「覚悟ぉぉぉっ!!」
 サイファーが光り輝いて、ストライカーに突っ込んでくる!
「はっ!?……ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 どげしっ。

 アファームド・ザ・ストライカー、胴体に風穴。



 こうして、勝負はついたのだった。



「さーて、どうしてやろうかしらねぇ……」
「散々好き勝手言ってたし、タダで済むとは思ってないわよね……」
「…………(怒っている)」
 と、全員に囲まれている橋本と矢島。
「ひ、ひぃっ!」
「ご、ご、ごめんなさい!」
 ガタガタと震えている二人。
「そやな、それやったら、色々と吐いてもらおかい」
「……そうですね、お仕置きはその後で、ってことで」
「もちろん、嘘ついたり喋らなかったりしたら、どうなるかは……」
 その言葉に、ぶんぶんぶんと縦に首を振る二人。
「わかってます!わかってます!みんな言います!」
「わ、私達のリーダーの名前は、つ……」

 かぱっ。

 と、その瞬間に、橋本と矢島のいるところの床だけがすっぽりと抜けた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 あっと言う間に見えなくなる。そして、すぐに閉じられる穴。
「……邪魔が入ったわね」
「そうね」

 そして、一行は先を目指す!
「行きましょう梓先輩!私達の明日のために!」
「って、違うだろぉぉぉぉぉっ!!」
 その言葉に思わず、かおりの高速機動機フェイ・イェン・ザ・ナイトに、
背負っていた楓のバル・バロスを投げつける梓であった。



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 どうも。T-star-reverseです。

 今回のタッグバトル、味方側の予想はいくつかできたと思いますが、
敵側の予想をしていた方はどのくらいいるでしょうか?
 第0話で矢島・橋本が出てきているから無いだろう、と思いましたか?
 とりあえず、結果は見ての通りです。

 今回の話は、主人公トリオが負けた原因の一つを明示してみました。
 腐っても主役、ただやられる訳がないのにやられた理由、ってのは
それなりにあると思いますから。

 とりあえず、次回はまたも三対三。今度は乱戦になる予定です。
 そして、味方が一人いなくなります……では、次回をお楽しみに。