電葉戦機バーチャリーフ・第1話 投稿者: T-star-reverse
第1話 電葉戦士集結せり

「――見えました。あれが来栖川の洋上兵器実験プラントです」
 船の舵を取るセリオが、水平線に浮かぶ一つの人工島を指す。
「あそこに、祐くんが……」
「あそこに、耕一さんが……」
「あそこに、浩之ちゃんが……」
 と、大体三種類の呟きが、細部は違えどもあちこちから漏れた。

 ……その船には、祐介・耕一・浩之の三人を救出すべく集まった女性陣と
それぞれが乗るバーチャロイドが乗っていた。
 船の目的地は来栖川洋上兵器実験プラント。
 三人が、何者かに呼ばれ、そして姿を消した場所である。



 少し時間は遡る。

「バーチャロイド?」
 源五郎の言葉に、大半が首を傾げた。
「……って、なんですか?」
「まあ、簡単に言えば戦闘用ロボットですね」
 源五郎が答えれば、誰かがさらに聞く。
「それに乗って、あたし達が耕一たちを助けに行け、ってことか?」
「ありていに言えば、そういうことです」
「……助けに行きたいのはやまやまだけど……あたし達みたいなシロウトが
そんな危ないもの扱って大丈夫なの?」
「それについては心配ない。バーチャロイドの最大の特徴は、その操作法。
実際に自分の体を動かすように、バーチャロイドも動かせるはずですから」
「ようするに、搭乗者が自由に楽しめるオモチャってことね」
「頼むからそういう言い方はしないでもらえるかな」
「で、そのバーチャロイドってのはどこにあるのよ?」
「こっちです。ついてきてください」
 源五郎の後にぞろぞろとついていく一行。
 その足は、一つの扉の前で止まる。
「この中ですね」
 そう言って、扉を開ける源五郎。

「ふわぁ、こりゃ、すごいもんやな」
 との言葉が示すとおり、そこにはずらっと並んだバーチャロイドの姿。
「これ、みんな私達に?」
「ええ」
「あれ……?あそこ、スペース開いてますね」
「本来なら、もう3機あったんだよ」
 と、ため息をつきつつ言う源五郎。
「……さて、どの機体にするか、それぞれ好きなのを選んでください」

「あ、そうだ。そこの五人、ちょっと来てくれないかな?」
 そうやって源五郎に呼ばれたのは、葵、綾香、好恵、芹香、琴音の五人だ。
「なんですか?」
「君たちにぴったりのバーチャロイドがあるんだ。こっちだよ」
 と、連れてこられた一角に、5機のバーチャロイドがある。
「まずは……格闘特化機、「アファームド」。そして、それから分化した
「アファームド・ザ・バトラー」と「アファームド・ザ・ストライカー」」
「格闘特化機……私達用、ってわけね」
「そういうこと。そして次。氷雪魔法機「エンジェラン」」
「…………(にこっ)」
「ああ、気に入ってもらえましたか?……そして、次」
「あの……この機体、足がないんですけど」
「うん。この、浮揚攻撃機「バル・バス・バウ」は宙に浮くんだよ。
もともと「バル・バス・バウ・ユニット」というものを取り付けて
あったんだが、あいにくとそれは藤田くんの機体に取り付けていて、
この機体についているのは複製品。それをカバーしてもらえるとありがたい」
「藤田さんの機体と同型?」
「まあ、そういうことかな」
「わかりました。がんばってみます」

 さて、一方他のメンバーはと言うと。
「この機体って、くまに似てる。これにしようかな……」
「これよ!最新型、って感じの繊細なフォルム、志保ちゃんにぴったり!」
「おさかな……これにしよう」
「ボウガンがいいネ!これに決まり!」
「梓せんぱぁ〜い!私の愛を受け取ってくださぁ〜い!」
「わっ、馬鹿!こんなところでビームを撃つなぁっ!」
「あ、この機体カッコいい。いかにも主人公、って感じよね」
 といった感じで、問題なく決まっているようである。

「そう言えば、マルチさんとセリオさんは?」
「呼びましたか〜?」
 と、驚いて頭上を見れば、そこには巨大なマルチの姿。
「マルチとセリオは、それぞれの電脳を戦闘用バーチャロイドに移し替えた。
BMX−12とBMX−13……バトル・メイドシリーズの原型機」
 そして、巨大なセリオも出てきてぺこりとお辞儀をする。
「――と、いうわけで、私達も参加するのでよろしくお願いします」

「あれ?おかしいな。1機だけ余ってるな……」
 全員が選び終わっても、まだ1機だけ残っているバーチャロイドがあった。
「数は合うはずなんだが……」
 そこに、息急き駆けてくる女の子が約一名……雛山理緒である。
「……すいませーん!バイトがやっと終わりましたぁーっ!!」
「話、聞いてる?」
「はい、いくらかは教えてもらいました」
「……きみの機体、あそこにある”バイパー”だからね」
「はいぃぃ?」
 源五郎が指さす先には、古ぼけた機体がぽつんと一体……哀れ。

 こうして、全員の機体が決定したのだった。



 船が人工島に接岸した。セリオが一行に伝える。
「――目的地に到着しました。襲撃の際は、船内にお忘れ物のないように
お願いいたします」
 とにかく、そんなわけで彼女たちの戦いがこれから始まる。
 果たしてそこに待っているものがなんなのか……。
 それぞれの思いを胸に、一行は人工島へ突入した。



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 どうも。T-star-reverseです。

 今回は各キャラの機体選択話です。なのでまだプロローグな雰囲気です。
 次回から、人工島で壮絶(?)なバトルが繰り広げられる予定です。
 一戦目は……三対三のバトル、とだけ言っておきます。

 今回の情報だけで、全員の搭乗機体を当てることができる方、いますか?
 もしいたら、尊敬します。すごいです。

 さて、それでは次回をお楽しみに。