手紙、といっても小さな、女の子が使うような便箋とたった2枚の花びら。
その花びらは散ってからもうだいぶ経つのだろう、茶色く変色しており、当時の色を思い出す事は出
来ない。
源一郎はゆっくりと便箋を開いた。
そこにはただ一言
大好きだよ。
とだけ書かれていた。
そしてもう一枚、押し花にされた桜の花びらが一枚。
散った当時の色をそのままに、そこには挟まれていた。
「ないだろう・・・」
源一郎は崩れるように膝を折っていった。
「忘れられる訳が・・・ないだろう・・・」
そう、囁くように、唸るように言葉に出す。
「忘れない・・・忘れないよ・・・絶対に・・・」
それは言葉というよりも鳴咽と呼ぶべきか。木箱を胸に沈めるかの如く抱きしめ源一郎は泣いていた。
「ありがとう、長瀬ちゃん。」
そんな言葉が聞こえたような気がした。
祐介が見上げた先には、葉を茂らせた桜の枝と、いつのまにか出ていた、月が見えた。
青い空。
口の悪い者でも二の句を告げるのを躊躇うようなそんな空を、長瀬祐介はただ眺めていた。
いや、眺めてはいなかった。考えていた。
「人間は・・・」
なにか、考えがまとまったのか、それともまとまらないのか、口に出す祐介。
「人間は、何かを忘れる事で生きて行けるって、誰が言ったんだっけ。」
答える人間はいない、また祐介もそれを承知している。
「そうなのかもしれない。記憶は何時か無くなるのかもしれない・・・」
そう言って立ち上がる祐介。そしてフェンスの先に顔を向ける。
「だけどね、記憶はなくなっても、その想いは無くならないんだ。」
その顔は、晴々としていた。ここ暫く、いや、ここ数年の間見なかったほどに。
「僕は大丈夫だよ、瑠璃子さん。」
そう言って笑った顔には、2ヶ月ぶりの涙の雫が浮かんでいた。
了
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な、何とか後編で終わりました。どうもTaSでございます。
幽霊の正体なんかは結構ぼかしちゃましたし舌足らずと言われてもしょうがないんですが、
その辺は勇気で補ってください。(もはや意味不明)
設定は考えてあるんですよ、でも全部話しちゃうのもなんでしょ。
怠慢って言われると返す言葉もございませんが。
それともうひとつ
この話の主人公は源一郎じゃありません。あくまでも長瀬祐介です。
以上
いやどうでもいいんですけどね。
書いているうちにどっちがメインなのか分からなくなりました。 では、長々と申し訳ありませんでした。