ある日の柏木家 投稿者:T.ARO


 辺り一面の暗闇、俺はその中に隠れていた。
 静寂。どれくらい時間が経ったのだろう、俺がここに隠れてから。
 ・・・・・・・
 トン・・・トン・・・トン・・・
 ふいに、静寂が破られた。
 何かが、俺のほうに向かって歩いてくる。
 俺にはそれが誰の足音か分かっていた。
 あいつが、鬼が俺に向かって歩いてくるのだ。
(来るな、来るな、来るな、くるな、くるな、くるな、クルナ、クルナ、クルナ・・・)
 俺は心の中で念じ続ける。
 トン・・・トン・・・トン・・・
 だが、そんな俺の願いも空しく、足音は近づいてくる。
(ああ、俺に電波を使う能力があれば!!)
 思わず、そんなことを考える。 
 鬼に見つかれば、俺は鬼になる。
 それだけといえば、まあ、それだけのことなのだが・・・(・・・それだけのことか?)(笑)
 そうと分かっていても、やはり、鬼になるというのは、いい気持ちではない。
 俺が鬼になれば、誰かが犠牲になる。
 そうしなければ、俺は鬼から解放されないのだ。
 トン、トン、トン・・・
 鬼はすぐそこまで来ていた。
(頼む、どこかへ行ってくれ!!)
 強く心の中で念じる。
 だが、鬼は俺の潜む闇の前で立ち止まり、その闇を打ち払った。
 そして、闇の中から現れた俺の姿を認めると、満面の笑みを浮かべ、見つけた、と言った。
 その瞬間、俺は、鬼になった。
 ・・・・・・・ 
「はい、それじゃ次は、耕一さんが鬼ですね。後ろを向いて、百数えた後、探してください。
 数えるのをズルしちゃダメですよ。」

 千鶴さんが言う。
「ちぇー。千鶴さん達の方が、この家に住んでるんだから、絶対、有利だよなー。」
「ほらほら、耕一さん、文句いわないで。じゃ、私はもう隠れますから・・・」
 そういわれ、俺は渋々後ろを向く。
 ・・・・・・・
「いーち、にーい、さーん・・・」
 暫くして、俺の声が柏木家の屋敷に響き渡る。

 ・・・・・・・
 かくして、今日も平和な柏木家であった...。
                      (終わり)
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 さて、『ほのぼの雰囲気』風、柏木家いかがだったでしょうか?
 感想、書いて下さると嬉しいです。

P.S. ARMさんへ、『What’s マルチュウ?』 最高です。
     そんな素敵な君に『長さんサイン』をプレゼント!!(気持ちだけ)(^^;
        
        探検、発見、ぼっくのまち〜