正月 綾香の自室 たくさんの年賀はがきを見ている綾香。 綾香「ん?」 手に取ったはがきにはへたくそな字で「おまえのひみつをしっている」と書かれている。 裏面を見たが住所も名前も書いていない。 はがきをポイッとほおり投げて、 綾香「正月早々不愉快ね・・・。」 『私に、知られて困るような秘密なんてないわよ・・・。』と思う綾香。 しばし沈黙する。 晴れ着に着飾ったTo Heartのヒロイン達、浩之や、雅史の姿も見える。 浩之「へー、その晴れ着似合ってるじゃん、琴音ちゃん。」 琴音「え・・・、そんな・・・、はずかしいです。」 浩之「葵ちゃんもかわいいな、そのかっこ。」 葵「えっ?そそそそんな事無いです先輩。」 レミィ「Hey! ヒロユキ、ワタシのハレギスガタもカワイイ?」 浩之「おぅ、レミィのもカワイイぜ。」 智子「まったく、女の子にはみさかいなしやな、藤田君は・・・。」 浩之「いいんちょ、また一段とかわいいぜ。」 智子「え・・・、もぅ・・・、口ばっかりうまいんやから。」 雅史「保科さん、顔赤いよ。」 あかり「ひろゆきちゃーん、まってよー。」 志保「ヒロ! この絶世の美少女志保ちゃんの晴れ着姿はどう?」 浩之「おお!なかなかじゃないか!」 志保「ふふふ、まっ当然ね。」 浩之「晴れ着だけがな。」 志保「なんですってー!!!」 大広間にはいると人間ほどもある大きさの筆と墨の入ったバケツがいくつも置かれており、床には一面半紙が敷かれている。 レミィ「Oh! カキゾメね。」 葵「うわぁ・・・すごいですね。先輩。」 志保「一度、こういうのをやってみたかったのよねー。」 晴れ着を着た綾香がマイクを持って出てくる。 綾香「えー、というわけで今日は書き初め大会を開催します。」 綾香「なお、この大会の優勝者には来栖川系列のレストランすべてに通用する、食事券1年分がもらえます。」 「おー」 感心するみんな。 『どうせ、あんなしょうもない悪戯するバカは浩之に決まってるでしょうけど、筆跡鑑定で動かぬ証拠をつかんで・・・血の海に沈めてやるわ!』 綾香「鑑定・・・もとい審査の公平を期すため、課題を統一します。」 智子「ま、そーゆーもんやろな。」 綾香「課題!」 綾香が紐をひっぱるとするするっと課題を書いたボードがおりてくる。 『おまえのひみつをしっている』 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 シーンとなる会場。 浩之「おい! なんだそのギスギスした課題は!?」 志保「そうよ! せっかくの正月なんだから、もっとこうそれにふさわしい・・・」 綾香「これ以外は対象外よ!」 取り付く島のない綾香 浩之「しょーがねーなー。」 渋々墨の入ったバケツに巨大な筆をぼちゃんとつける浩之。 浩之「ひとつウォーミングアップに、この世で一番美しいテーマを。」 『いいんちょ』と書いている浩之を見て、 智子「ほほぅ。」 と少し赤くなって微笑む智子。 だが、その続きに『の秘密』と書く浩之。 まわりのみんな「「「「「「ほほぉ。」」」」」」 智子「怪しげなものを書くな!!」 と浩之に炎のツッコミを入れる。 レミィ「ウォーミングアップね。」 相合い傘に『ヒロユキ』『レミィ』と書くあかり。 たたたたたっ、と走ってきて『レミィ』の文字に×を書き、横に『雅史』の文字を書く雅史。 たたたたたっ、と走って来て『雅史』の文字に×を入れようとする浩之の筆を、自分の筆でガシッと受け止める雅史。 浩之「なにしやがる、雅史!」 雅史「ふっ。 二人の愛の証さ。」 さわやかに微笑み、歯がキラッと光る。 そのまま筆で打ち合うが浩之の筆が吹っ飛ばされ、志保が書いているところに飛んでゆく。 志保「あー!!!せっかくの大作が!!!」 キッと浩之を睨み、筆を投げつける志保。 だが浩之はひょいとかわし、後ろの琴音ちゃんに直撃。 琴音「・・・・・・滅殺です。」 墨の入ったバケツとたっぷり墨を含んだ筆がふわりと浮かびあがる。 次の瞬間、自分めがけて殺到するバケツや墨を、筆で打ち返す志保。 葵「なにするんですか!」 智子「えー度胸しとるやんけ!」 レミィ「HAHAHAHAHA!フリーズ!!」 あちこちに墨が飛び散り、晴れ着を汚され逆上した女の子達が筆で戦い始める。 あかり「冗談じゃないよ、晴れ着がよごれちゃう。」 芹香「・・・・・・・・・。」 あわてて待避する二人。 綾香「ふっ。人間ってみにくいわねぇ。」 志保「他人事のような顔してんじゃないわよ!」 志保が投げつけた筆をはっしと受け止める綾香。 しかし投げた勢いで後ろになびいていた筆先がベロンと綾香の顔をなめる。 綾香「・・・・・・ふ、ふふふ。地獄に落としてあげるわ!!」 乱闘現場に筆を持って参戦する綾香。 綾香「浩之が犯人かと思っていたけど・・・。」 筆を振るいながら乱闘現場を見回す綾香。 綾香「こーなると、どいつもこいつも怪しく見えるわ。」 ポンポンと肩を叩かれ振り向く綾香。 そこには墨を含んだ浩之の筆の筆先が・・・。 浩之「ひっかかった、ひっかかった。」 綾香「やっぱりあんたかー!!!」 筆をぶんぶん振り回し浩之を追いかける綾香。 浩之「なんのことだよ?」 あかり「いったいなにがあったんですか?」 セリオ「実は・・・」 謎の年賀の件を話すセリオ。 あかり「そんなことがあったの・・・。」 芹香「・・・・・・。」 あかり「え?でもこういう状況だと? うーん・・・全員「クロ」だね。」 セリオ「ベタベタですね。」 言わなくて良かったと赤面して俯く芹香。 来栖川研究所内 長瀬主任「おーい、マルチ。年賀状はちゃんと出したかい?」 マルチ「はい!ぬかりはありません。」 長瀬主任「ほぅ、感心感心。」 マルチ「要するにお手紙のことでしょう?」 マルチの見ているテレビ ハチ「てーへんだ、てーへんだ!」 親分「なんでい!正月早々騒がしい!」 ハチ「こんな文が・・・。」 ハチの持ってきた手紙を見て 親分「むっ。」 手紙には『おまえのひみつをしっている』と書かれている。