GO・ME・N 投稿者:KEI 投稿日:2月20日(日)06時27分
「HEY!ヒロユキ」
「グーテンターク、レミィ」
「OH!ヒロユキそれはドイツ語だヨ」
「これがジャパニーズジョークだ」
「勉強になるネ」

 う〜ん素直な奴。

「んで、何か用か?」

 空の鞄の手に教室を出ようとしている俺をわざわざ呼び止めたんだ。何か
話があるんだろう。

「教えて欲しいのヨ」
「何を」

 こいつの日本語は時々めちゃくちゃだなぁ……。

「『キリステゴメン』って何?」
「は?」
「昨日の夜DADDYと一緒にTELEVISINでVIOLENT・SYOGUNを見ていたらでてきたの
ヨ」
 
……ああ『切り捨て御免』ね。

「教えてヒロユキ」
「それはな、『キリステゴメン』と一言唱えれば、何をしても許されるという
古より伝わるステキな魔法の呪文だ」
「ホント!?」
「ああ」

 半分な。

「ヒロユキは本当に物知りだネ。アタシ尊敬の眼差しだヨ」
「ハッハッハ、さもありなん。さて一緒に帰るか」
「ウン!」

 その日はそれで終わったのだが。
 翌日、俺があかり、志保、雅史をお供に食堂に赴いた時。

「よお、レミィ。今日も学食か?」
「ウン、ヒロユキ達も?」
「ま、たまにはな。……しっかし、今日は混んでんな。」

 食堂の外にまで順番待ちの列が伸びてるぞ。昼休み中にメシにありつけるん
だろうか?

「ちょっと時間かかりそうだね、浩之」
「どうしよう……浩之ちゃん」
「だから今日はお弁当にした方がいいって言ったのにぃ!ヒロが志保ちゃん
ネットワークを信用しないからよ」
「るせい!んなの、たまたまに決まってるだろ」

 しかしマジ困ったな。今日は5時間目の授業で英訳があてられるから、
早めに戻って予習しねーといけねーのに。(……ちなみに、雅史とあかりは
当然予習ずみなのだが、俺のためにならないと言ってみせてくれない)

「ヒロユキ!アタシがなんとかするヨ」
「え?」
「ちょっと待ってネ」

 そう言い残すと、レミィはパタパタとスリッパの音を立てて走っていた。
と思ったら、いぶかしむ間もなく戻ってきたのだが、俺達はレミィの手の内
にあるものを見て硬直した。

「はっはっは、レミィさんや、弓道場はこちらではありませんぜ」

 あかり達がコクコクと首を縦に振って肯定の意を表す。
 
「知ってるヨ」

 レミィは左手に弓、右手に矢を携え微笑む。そりゃそうだ、弓矢は弓道場
に置いてあるんだからな。

「さらに言うなら、こんなところでそんな物騒なもん使ったら、アメリカに
強制送還させられるぞ」

 あかり達がブンブンと首を縦に振って2度目の肯定の意を表す。

「わかってるヨ」

 じゃあ、なぜ持ってくる!?

「ヒロユキ大丈夫だヨ。アタシには魔法の呪文があるヨ」
「は?」
「キリステゴメン」
 
 そういえばそんなこともあったな……。あかり達はポカンとして俺達のやり
とりを見ている。さもありなん。

「レミィあれはなぁ……」
「キ〜リ〜ス〜テ〜」
「だあー!待て待て待てー!」
「WHY?」
「スマン!何をしてもいいってのは嘘なんだ」
「え!?」
 
 俺の釈明を聞いたレミィの手から弓矢が落ち、カランという音をたて、
レミィは顔面蒼白にして俺を見つめている。う、そんなにショックなのか?
ああ!なんだかあかり達の視線が冷たい!

「本当にスマン!軽い冗談のつもりだったんだ」
「ゴメンねレミィ。浩之ちゃんも悪気は無かったと思うんだよ」

 あかりナイスフォロー!

「んなわけないでしょ、悪気のない嘘なんてないわよ!」
「浩之って嘘が好きなんだよ」 
 
 フォロー台無し。

「ウウン、もういいヨ。ジャパニーズジョークは奥が深いネ。それでこそ勉強
のヤリガイがあるヨ」

 うーん、なんて純朴なんだ。日本人にも見習って欲しいねぇ。……おっと、
そろそろ教室に戻って予習しねえと。結局昼めし食いぱぐれっちまったな。

「じゃなレミィ。いくぞあかり、雅史」
「あ、待ってよ浩之ちゃん」





「志保はまだいいノ?」
「あたし次は自習なのよ」
「フーン」
「……」
「ネエ」
「何?」
「ホントの意味はなんなんデスか?」
「え、え?」
「ネエ」
「え、えっと確かぁ……」
「タシカ?」
「好きに人を切ってもいいっていう法令だったかなぁ……」
「……フーン。MURDERネ」

 志保は見た。その一瞬、確かにヤツの口の端が淫らに吊り上がり、青を湛え
た瞳には波紋を呼ぶ石が投げ込まれるのを。

《おわり》

ん〜なんかいまいち。書き始めたときはいいと思ったのに。