そのとき、楓ちゃんは伏せていた顔をゆっくりと
上げ、俺を見つめると、
「…私…小さい頃から…不思議な夢を見ます」
　いきなり、そんなことを言った。
「不思議な夢？」
　俺が聞き返すと、彼女はコクンと頷いた。
「…その夢の中には…いつもある男の人がいて、その
人を見ると…私、なんだか懐かしくて…胸が苦しくなる
んです…」
　俺が見た夢と同じだ。
　一瞬、話を合わせてくれてるのかとも思ったが、
この子がそんな器用な子じゃないということは俺も
よく知っている。
「…その人が…耕一さんだってことは…ずっと前から
気付いてました」
「えっ？」
「…だから私、耕一さんのこと、ずっと以前から…、
す…、す…、す…、」
　楓ちゃんは顔を赤らめて『す』を繰り返した。
「す？」
「…す……」



「すきすきす〜」


　今時、それじゃあオチないよ・・・楓ちゃん・・・