千鶴さんの味 投稿者:megane
参照作品 :痕 
ジャンル :コメディ

千鶴さんの味

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いつもの天使の笑顔が少しくもっていた初音ちゃん。
俺を避けるかのようだった楓ちゃん。
俺の前では陽気そうに振る舞いながらも少し寂しげだった梓。
そしてなにより、鶴来屋の会長をしながらそんな彼女達を支えてきた
千鶴さん。
そんな千鶴さんを助けたかった。
俺でできることなら千鶴さんの心を癒してあげたかった。

柏木家の鬼の血。
叔父さんや、親父が克服できなかった忌まわしい呪い。
俺はそれを千鶴さんを想う事で制御し、世間を騒がせていた鬼を水門
で完膚なきまでに叩きのめした。

そして事件は終わり・・・
俺は大学の長期休暇終了までこちらにいることにした。
愛しの千鶴さんとともに。
従姉妹達にも笑顔が戻り(千鶴さんは嫉妬の視線を多数感じるらしい
が)平和な日々が数日間続いた。
一人暮らしの長かった俺が梓の家庭の味を誉めたのに嫉妬したのか千
鶴さんが俺のために料理を作ると言い出すまでは・・・

千鶴さんの料理・・・

セイカクハンテンダケの時は不味くはなかったがとんでもない事件が
起きた。

梓、いわく。猫のタマが行方不明なのは千鶴さんの料理を食べたから
ではなく、材料にされたからとか・・・

かなりの数の兵器を生み出しているとか。

色々、話は聞いていた。
千鶴さんを選んだ時点でいつかその日が来るのは覚悟していたが。
あまりにも早くその「料理」を食べるはめになるとは・・・

「もちろん食べてくれますよね?」
自分の部屋へ戻りアパートへ帰る準備をしようと椅子から腰を浮かそ
うとしていた時に、エルクゥの眼光を隠さずに見つめ無邪気そうに問
う千鶴さんに俺は椅子に縛られたような感覚を受け、ノー、とは言え
なかった。
どちらにしても命が危ういような気もするが少しでも長く生きたかっ
たのだ。
「そ、それじゃぁ、ちょっとだけでも梓にサポートをしてもらいませ
んか?初めてですし・・・」
かなり命の危険を感じている俺は妥協案を提案したが・・・
「私が一人で愛情を込めて作るんです!!」
千鶴さんのもっともらしい言い分に誰も文句はいえなかった。
もちろん部屋の空気が3度下がったのは言うまでもない。


そして、数時間後・・・
ポークカレーが俺の前に出された。
皿いっぱいに。
もちろん、俺だけのものらしい。
他の3人+千鶴さんは梓の作った夕食だ。
「千鶴さんは食べないの?」
俺は聞いた。
「耕一さんのために作ったカレーですから(ハート)」
量を少しでも減らそうという作戦だったがあえあなく玉砕した。

カレーだよ、カレー。
野菜を切っていためるだけだよ。
命の安全の為、スパイスなんて使わないようにしてもらったし(笑)
ルーをいれるだけでできるんだ。
俺でも作れるよ。
なんとか自分の心をだましながらスプーンですくってみる。
とりあえずスプーンが溶けないのを確認した後、覚悟を決めて・・・
俺は食べた。

ん!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
んんっ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?
んんんっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!?!?!?!?!?
う、うまい。
美味すぎる。
「ち、千鶴さん、うまいぞぉぉぉぉぉぉおおぉおっぉぉ〜」
(↑By ミスター味っ子の味皇風)
俺は口の中から黄金の光が四方八方に飛び出すかのように叫んだ。
「お、おにーちゃんほんとにおいしいの?」
「え・・・・・?」
「この前のキノコの例もあるからなぁ。」
千鶴さん以外の3人が俺の意外な発言に言葉を発した。
「うれしいですわ耕一さん(はーと)」
梓の方を一睨みした後に俺の方に笑顔見せてくれる。
俺としては梓の言うことも無視できないとは思うが、とりあえずはな
んともないのでバクバク食いまくった。
これが最期の晩餐になるかと思った俺は昼飯を抜いていたのであっと
いう間にカレーは皿から、そして、鍋からも綺麗になくなった。
「ご馳走様でした。ほんとにおいしかったよ、千鶴さん。こんなにお
いしいなら毎日でも食べたいな」
「ふふっ。耕一さんたら。まるで子供みたいなんだから」
照れながらもどこか満足そうな千鶴さんであった。
心配していた後遺症(笑)もなにも出ず、その日は千鶴さんといつも
より熱い夜を過ごした(はなぢ)



それから一週間後・・・
また、千鶴さんが料理を作ってくれるらしい。
千鶴さんは本当は毎日でも作りたかったらしいが、名前だけの会長職
といはいえ重大なポストにいるために作る暇がなかったらしい。
俺に誉められたのが嬉しかったのか、今回もカレーらしい。
当然、梓達のサポートは必要ないと言い切った。
この前もそうだが真っ昼間から夕食を作る必要はあまりないと思うが
千鶴さんの動作の遅さを考えにいれればそれでちょうど良いんだろう。
俺は、初音ちゃんや楓ちゃんと遊んだりしながら過ごしていた。
遊びが一段落ついた時、台所の千鶴さんが気になって覗きにいった。
俺まで邪険にされることはないだろうし、あれだけおいしい味がだせ
れば手伝う事も無いと思いつつも心配だったのだ。

千鶴さん、調子はどう?
そう聞こうとした時だった。
「いけないいけない、またやっちゃった、てへっ」
どこかで聞いたことのあるような台詞をしゃべっている千鶴さんがい
た。
いけない?
なにが、いけないんだろうか?
俺は千鶴さんに見つからないように細心の注意を払いまな板の上の辺
りを見た。
まな板の上には切られたニンジン、ジャガイモがのっていた。
鍋にはすでに玉ねぎと肉がいれられている。
なにも異変は無い。
もう一度声をかけようとした時だった。
右手で左手首の辺りを持ち気合を入れている千鶴さんがいた。
その左手の親指の根元からは赤黒い穴が見えた。
ザックリいってしまったようだ・・・
「はぁぁぁ〜〜〜〜・・・ふん!!」
気合一閃。
糸を引いて新しい親指が再生された。
なっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
エルクゥの治癒力であんなことができるのか?
それとも俺とは違い治癒力に優れているのか?
驚いている俺をさらに凌駕する出来事はこの後に起こった。
千鶴さんは切った親指をすでに鍋の中にある材料の中に入れたのだ。
「いつも夜に耕一さんはいつも私を食べたいって言ってたし(はなぢ)
この前は美味しいって全部食べてくれたし(はーと)」


千鶴さんの呟きが遠くに聞こえる。
するとこの前のポークって・・・






俺は挨拶もせず荷物をまとめてアパートに帰った。
 						       END

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やっぱLeafのSS書きとしては千鶴さんの料理をネタにしないと
一人前とはいえないような気がして書いてみました。

・・・とでもいえばかっこいいけど、一人料理をしてる時に唐突に思
いついたネタです(^^;;)
しかも締めは前作と同じ。芸が無いです(^^;;)

ではでは(..)/

http://sapporo.cool.ne.jp/meganelove/opening.htm