今頃だが、THのガシャポンを手に入れた。 あかりが「お守りだよ」と言って、自分のをくれて以来、オレは何となく第一段の 6体を集める風になっていた。 レミィのパンツの色違い等は集める気はしなかったので、オレの机に並べられたの は6体だ。 200円にしてはいい仕事のような気がする。 今度出るらしい第二段もかなり変に狙っているようだが、第一段からしてどこか選 択がおかしい。 普通、こういうのはメインヒロイン、人気上位キャラが並ぶのが普通ではないだろ うか。 人気投票などは各地で行われ、一度たりとも結果が同じではないので、人気の上下 は分かりにくいので、どうとは言えないのだが・・・。 チラリ 一体を見る。 何か、おかしい。 そう、一体。 ヒロインでもない、人気上位を占めているわけでもない、学校ですら同じでない、 登場だって1シーンしかない、つまり、『こち亀』的には交通課の児雷也、もしくは 大阪府警の梅田、本庁の豊永レベルな奴がいる。三國志で言えば蒋奇、王必、張先、 陳紀、成廉、周善、楊洪・・・いくらでも書けるが、普通の人はまず知らないレベル なヤツだ。喩えわかっても誰も誉めてくれないところだ。 多分、いや絶対にぐらい誰もわからない喩えの気がするが、そんなもんだと言うこ とだ。 ・・・HMX−13型。 何故、お前が? 「しかしまぁ・・・相変わらず、愛嬌ない顔してやがるなぁ・・・」 まぁ、にっこり微笑まれてても「こんなのセリオじゃなーいっ!」ってことになる のだろうが。 だが、何か面白くない。 現実のセリオのシレった顔を思い出してしまう。 ポーズすらとってない。 鞄を持つ腕と持ってない腕に変換出来るのだが、それだけと言えばそれだけだ。 耳飾り付ける頭と無い頭もあるのだが、無くすとタダの「赤い髪の寺女の女」でし かない。 勿論、実物のセリオなら「おおっ! 耳飾りとったのか、新鮮だな」とでも言える が、フィギュアでは何か違う。 確かに他の変換パーツすらないものに比べれば豪華なのかも知れないが、やっぱり 本来の素っ気なさがそのままだ。 それがセリオらしいと言えばそうなのかも知れないが、俺にとっては何か「もうひ とつ欲しいわけだよ」な気分だ。 改造でも・・・するか? ハンダ鏝で、溶けないように気を付けながら足を曲げたり、パテで胸を大きくした り・・・いや、やっぱりこれだと面白くない。 「何か気にくわないなぁ・・・」 俺はセリオ(フィギュア)を前にして、首を傾げ続けた。 ・ ・ ・ 「よ、よぅ、マルチ・・・」 「あ、浩之さーん」 下校途中、ゲーセン前のバス停前で浩之はマルチ達に出会う。 「――こんにちわ。浩之さん」 「あ・・・あぁ・・・セリオ・・・よぉ・・・」 「あれ、どうしたんですか、浩之さん?」 明らかにドギマギしている浩之にマルチが不思議そうな顔をして訊ねる。 「あ・・・何だ、オレは別に何もないぞ・・・」 そう言いながらセリオの方をチラチラと見る浩之。 「――どうか、致しましたか?」 「あ、別に、いや・・・」 顔を下に向けたままでいる浩之。 「浩之さん。何か、あったんですかぁ?」 「――?」 「ははは・・・それじゃあ・・・じゃあな・・・」 ・ ・ ・ 藤田浩之の家には6体のフィギュアがある。 これはあまり珍しいことではないかも知れない。 だが・・・ その内の一体だけ、スカートがなかった。 この風習は浩之があかりにアックスボンバーを喰らうまで続いたという。 fin