『ココロのもやもや、それは恋 ココロのもやもや、それはストレス』 投稿者:M10
「R指定です。理不尽な暴力シーンが苦手な方はご遠慮下さい。それと坂下好恵、H
MX−13型セリオ、来栖川綾香、松原葵のファンの方は読み飛ばして下さい」
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 それは坂下好恵(17歳)が部活動を終え、着替えて下校する途中の出来事だった。


「頼もぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――――っ!!!!!!!」


 坂下好恵(恋人いない歴17年)が学校の校門をくぐるとほぼ同時に、学校前の道を絶
叫しながら砂煙を上げて疾走して来た少女が彼女の目の前で急ブレーキをかけて止ま
る。
 見るとその少女は寺女の制服を着ていたが、顔は覆面で覆われていた。


「な、何よ。あんた・・・大声出して走ってきたりして・・・」
 面食らったように、坂下好恵(彼氏捜して17年)がその突然の乱入者に訊ねるが、息
も切らさずその少女は好恵に向かって、

「突然ですが・・・私と殴り合いの喧嘩をして下さい」

 と、覆面の中から覗くぎらぎらした目を向けて言い放つ少女。


「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」

「・・・言い間違えました。決闘して下さい」

 そう言って身構える。制服姿だったが、手にはしっかりとウレタンナックルが填め
られていていつでも準備OKな雰囲気だ。

「ちょ、ちょっとあんた・・・」

 坂下好恵(男と手を繋いだ経験無し。フォークダンスも余って男の列だった)が鞄を
持った手で頬を掻くが、少女は聞く耳を持たないように、

「決闘です。凶器使用は300円まで。凍った釘の打てるバナナは含まず」

「へ?」

「兎に角、決闘して下さい。助っ人は一軍枠に限り投打それぞれ二人ずつまで」

「だ、だから・・・」

「逃走は戦術的撤退を含めて、1ターンに一部隊までです。殿は戦闘力の高い武将に
任せなければ全軍が追撃を喰らう可能性があるのでご注意下さい」

「人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇ――――――――――――っ!!!!!!!!」

「最早、問答無用っ!!」

「お、おいっ!?」


 バキグシャドカァッ!!


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・
・


「・・・と、言ふわぇぁのぉ・・・」
「ふぅん・・・」
「災難でしたね」
 全身を包帯でくるまれた坂下好恵(初キスは産婦人科の床。看護婦が落とし、顔面
を強打する)が、病院のベッドの上で寝たまま見舞いに来た来栖川綾香(非処女)と松
原葵(非処女)に事の顛末を話していた。


「でも・・・どうしてそこまで惨めにやられたのよ?」
 腕組みして話を聞いていた来栖川綾香(藤田浩之と交際中)がそう言うと、
「ひょれがにいてよ・・・」
 身を乗り出す坂下好恵(初恋の人は姿三四郎)。だが、口まで包帯にくるまれている
せいか、言葉が明瞭でないので聞き取りにくい。
「え?」
 松原葵(藤田浩之と交際中)が耳を近付けるが、来栖川綾香(葵との関係を知りつつ
交際中)は、
「セリオ、通訳お願い」
 と、背後で控えていたセリオ(非処女)を呼ぶ。


「――はい」
 セリオ(藤田浩之と交際中)が言うと、坂下好恵(先日、ホストに勧誘される)の側ま
で寄って、身振り手振りで必死にアピールする坂下好恵(日課は寝る前に胸を揉む事)
の言葉を聞き取る。耳に手を当てている仕草が何処となく白々しい。
「――「いきなり砂を目に投げつけてきて目潰しをされた上に、石油を浴びせられて
火を付けられたのよ」との事です」
 顔を上げたセリオ(表向きは実験につきあったと誤魔化し合っている)がそう、二人
に言う。
「・・・全然、戦ってないじゃない」
「殴り合いの喧嘩じゃなかったんですね」
「――そこまで至らなかったと推察できます」


「あはひにょひほひもひらあいへっ!!」
「?」
 松原葵(藤田浩之の様子がおかしいのに気付いているが怖くて聞けないでいる)が、
首を傾げる。
「――「あたしの気も知らないでっ!!、勝手なこと言ってるんじゃないわよ。この
性格ブス」だそうです」

  ゲシッ!!

 来栖川綾香(葵には悪いと思いつつも関係が続いている)の蹴りがギブスで固められ
て吊されていた坂下好恵(化粧を試した時、自分の顔を見て泣きたくなった事あり)の
左足に炸裂する。

「んあっ!?、おえらおっさあふぇり――――――――――――っ!!!!!!!」

「勝手なこと、言ってるのはあなたじゃない」
「でも・・・結局は、勝てなかったってことですよね」
 来栖川綾香(週二回)の言葉に、深く頷く松原葵(月二回)。
「そうよ、これが「敗者」なのよ。よく見ておきなさい」
「――「負け犬の遠吠え」のデータとして保存しておきます」
 セリオ(「一度きりの過ち」の連続)が冷ややかにしめる。


「はひぃ・・・いはぃ・・・」
 涙にくれる坂下好恵(最近、藤田浩之が気になり始めた)。
「何て言ってるの?」
「――「気楽なこと言ってるとの呪い殺すぞ、ワレェ。いっぺんドタマかち割って、
脳症に醤油付けてこね回すぞ、オラァ」と言っています」
「文字数が違うのでは?」
「翻訳ですから」
「成程」


  ドゲシィィィ!!


「こあうぃたゆぐわっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「・・・飛び跳ねましたね」
「――座った状態での行動としては記録的です。ムービーで再生しましょうか?」
 床を暫く転げ回り、痙攣を起こしている坂下好恵(先日、藤田浩之とデートした夢
を見て動揺して、それ以来まともに顔を見られなくなっている)を冷たく見下ろす一
同。
「全く・・・才能に嫉妬するって最低よね」
「そうですね、今回の件で好恵さんには失望しました」
「ぁぐぅ・・・ぅぅぁ・・・」
「――「呪ってやる。お前ら皆呪ってやる」だそうです」
「うめき声としか聞こえなかったけど?」
「――意訳ですから」
「成程」


  バキグシャドカァッ!!


「でも、酷い仕打ちだったわね」
「――全治6ヶ月だそうです」
「一体誰がこんな事を・・・?」

 坂下好恵(今度、思い切って藤田浩之にラブレターを出そうと思っている)がそれぞ
れ言い合う一同の足下で蓑虫のように転がっていた。



 さて、一番悪いのは誰?


 1,藤田浩之との不適切な関係に苛立つ綾香。
 2,藤田浩之に捨てられるのではと怯える葵。
 3,藤田浩之に本気で惚れてしまい覆面をして襲ったセリオ。
 4,手当たり次第に女を弄ぶ藤田浩之。
 5,藤田浩之との事をこの三人に相談してしまった恋人のいない好恵。


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 ・・・御免なさい。