メイドロボが来た! 第2話 投稿者:NTTT 投稿日:5月19日(金)20時15分
「おはようございます」
「あ、おはよー!」
「うぃーっす」

セリカが来てから、あたしたちは少し、早起きになったよ。
なんでかって?
それはね…

「では、お召し上がりください」
「「いっただっきまーす!!」」

こーゆーこと。

いやー、やっぱり、朝起きたら、あったかいご飯とみそ汁ができてるのは、なんていうか…サイコー
ですな、うむ。

今まではどうしてたかっていうと、あたしはギリギリまで寝倒して、コンビニで大きなオニギリと野菜
ジュース。良子もやっぱり寝倒して、は菓子パン2つとコーラ。あと一と月も経ったら、良子はデブデ
ブの骨ボロボロになるとこでした。間一髪だったね、良子。

お、今日のおかずは、干物だー!
ラッキー。やっぱ、日本人はサカナ食いなのさ。

「友恵、醤油取って」
「はい。うわ、かけ過ぎじゃないの?」
「濃いほうが、好・き・な・の」
「あ、イナカモンめーっけ」
「あんたも同郷だっての。マーガリン、トーストにベタベタに塗るくせにさ」
「くぅ、醤油の敵をマーガリンで打つとは、あなどり難し」
「…もっと、濃い味のほうが、よろしかったですか?」
「「ううん、全然」」

最初、良子はトーストを希望していたのだけど、トーストなんて、トースターでポンって感じだしね。
せっかくセリカを買ったんだから、ちゃんと手間のかかったものを食べたいじゃない?で、毎週水曜
日と金曜日がトーストの日ということで、講和条約が、締結されたのでした。めでたし、めでたし、と
ってんぱらりのぷぅ。

「じゃ、セリカ、戸締まりしといてね」
「かしこまりました、良子様」
「あ、あたしの部屋のお布団、乾しといてくれる?」
「はい、友恵様」
「「じゃ、いってきまーす」」
「行ってらっしゃいませ」

朝・晩の2食が付いて、家に帰ったらフカフカのお布団で寝られる生活は、とてもお気楽極楽な生
活なのだけど、ここに至るまでの道のりは、結構長かった。と、いっても、2週間くらいなんだけどさ。

まず、ご飯の話なんだけど、セリカってば、初期設定のままだと、ほとんど何も作れないのね。い
や、ホントにホント。
と、いうのも、セリカの初期設定だと、確かに、フルコースのフランス料理だろうと、満漢前席だろう
と、なんでも来いみたいな感じじゃあるんだけど、ごく当たり前の話で、そういう料理は材料がキチ
ンとないと、作れないのね。冷蔵庫の残り物を適当に使ってチャーハンという訳には、いかないの
でした(ちなみに、私の家ではカマボコをチャーハンに入れてたんだけど、セリカ、知らなかったの。
でも、良子も初めて聞いたって言ってるから、私の家が変なのかな?)。

だけど、よく考えたら、セリカ、味見しないんだよね。っていうか、そういう機能がないの。
味見する機能がないもんだから、セリカの作る物って、マニュアル通り。頼らざるをえないのね。
「適当」って概念がないもんだから、セリカに初めて「何か作ってー」ってお願いしたとき、「計量カッ
プを用意してください」って言われちゃった。目分量とか、難しいんだろうね、ロボットには。って、料
理が得意じゃないあたしが言うのは変か。セリカ、材料さえあれば何でも作れるんだもんね。

で、どうしたかっていうと、しばらくはそばについてあげて、セリカの質問に答えてあげなきゃいけな
かったの。たとえば、セリカが「お砂糖が足りません」って言ったら、「代わりにミリンを使って」とか、
「じゃ、しょうがないから、濃味で食べるよ」とか、ちゃんと言ってあげないと、セリカ困っちゃう状態
なのね。

それに、あたしと良子って、味の好みがちょびっと違ってたりするから(目玉焼きには、ソースでし
ょ、やっぱり)、その辺でもしばらくはついててあげないとダメなのね。複数の家族のいる家がメイド
ロボを買うと、家の人もメイドロボも、最初はかなり苦労するんだろうね。二人でさえ、これなんだから。

ほかにも、献立の問題もあるの。ほら、毎日同じ物ばっかり、食べられないでしょ。ま、知ってる人
は知ってると思うけど、セリカのバリエーションは、サテライトシステムある限り、いくらでも違うバリ
エーションで食事を作れるんだけど、さっき言った問題と合わせると、とたんにややこしくなるの。ほ
ら、材料が残ったりした時、適当に煮てみるとかしてくれないから、あらかじめ一週間くらいのタイム
テーブルで、材料の組み立てを考えてもらうか、こっちが毎朝冷蔵庫の中身を見て、その日の献
立を決めるかしないとダメなのよ。で、次の問題も連鎖的に発生したのでした。

実は、セリカ、買い物がイマイチ下手みたい。よくスーパーで5時過ぎたら、安くなるでしょ、お総菜
とかさ。セリカ、それ知らないから、定価で買ってきたりするんだよねー。おばちゃんが値引きのシ
ール貼るまで待つことを、実地で教えなきゃならなかったし、期限ギリギリの商品の棚をみつくろっ
たりとか、新聞の広告に目を通して、安い店でセール商品を買ってくるやり方とか、イロイロ覚えさ
せなきゃならなかったよ。良子に言わせると、セリオタイプは、元々がお金持ち向きの仕様だから、
しょうがないってことなんだけど、うちに来たからには、どんなお嬢様でも、うちの家風に従ってもら
いますとも、ええ、そうですとも。って、あたし、オシュートメさん?

いや、今回のことで、よくわかりました。
ちゃんと家族の好みを覚えててくれて、毎日違う献立考えて、それに合わせて上手な買い物をして
るお母さんって、実は偉大な人でした。今までワガママいって、すんまそーん。

でも、そうしてセリカにイロイロ教えてあげてわかったのは、人間って、ファジィに見えてても、実は
結構、いろんなルールを無意識に検討して、キッチリそれに沿って行動してるんだなー、ってこと。
ファジィに見えるのは、状況が刻々変化するのに従って、たくさんのルールが変化したり新しいル
ールが入ってきたりするのを、リアルタイムで処理しているからなんだね。人間の頭脳って、実は凄
いのさって、実は良子の受け売りだったりして…

教訓:家で使うのにメイドロボを買おうって人は、長いお休みの前に買った方がいいかも。

さあ、今日も元気にガッコ行くかー。
朝からしっかりした物食べると、気合の入り方がちがうぜ。1、2、3、ダーッ!

「じゃ、友恵、講義終わったら、帰りにあそこ寄ってく?」
「でも、ゼミが終わる時間、最近マチマチだし…」
「なら、正門のとこで待ってるから、来れなかったら、あたし一人で行くよ」
「でも、なんか不安だしなあ、良子に任せるの」
「服ぐらい、あたしが見立ててあげるって」
「とりあえず、行くときは二人にしよ、ね」
「もう、信用ないなあ」

何の話かって言うと、帰りに古着屋さんに寄る話なのね。
と、いっても、あたしたちの服じゃなくて、セリカのなの。
そ。プレゼント。

セリカの付属品でついて来たメイドロボ用のスーツは、確かにいいデザインではあるんだけど、少
し堅すぎる感じなのね。なんていうか、会社の受付みたいな服装でさ、生地もちょっと厚めで、ヘタ
したらバスガイドのお姉さんみたいなの。うちのアパートには、やっぱ似あわないんだよねー。あん
な服装で「御用でございますか、ご主人様」なんて、狭いアパートじゃ、絶対違和感あるって。買う
人の事も、少しは考えてくれればいいのにさ、来栖川グループも。今、セリカは良子のジーンズと、
あたしのダンガリーシャツ着てるんだけど、どっちもちょっとキツめなので、セリカ用に服を買ってあ
げなきゃいけないの。背も結構あるし、出るとこしっかり出てるのよね、セリカ。うーん、スタイル良
すぎて、イヤミな奴かも。次の来栖川のヒット商品として、標準体型のメイドロボと、ラフな服を、提
案しまーす!あと、着替え用にもう一着つけてくれれば、言うことナシよ。

あ、そうだ。実は、セリカにあたしたちが、すでににプレゼントした物があるんだけど、なんだかわか
るかな?
買った人でないと、わかんないかな?
答えは、靴。

初めてあたしたちの所に来たとき、セリカ、靴、履いてたんだけど、デザインがなんかイマイチだし、
服に合わせて、堅い革靴だったので、アパートの廊下を歩くとカツンカツン音がして、結構うるさい
の。それで靴を最初に買ってあげたのでした。

で、知ったのが、セリカ、実は足のサイズ、26あんのよ、信じられる!?
スタイルいいから全然わかんなかったんだけど、靴脱がしてみて、驚いたのなんの。

良子が言うには、同サイズの人間と比べてかなり重いから(ま、機械だからね)、体重を支えてバラ
ンスを取るには、大きい足の裏が、必要になるんだって。実は大足だったのね。で、買ったのはス
ニーカー。あれなら26でも、女性物っぽく、見えないこともないし、底が平らだから、歩きやすいは
ず。実はハイヒールとか履かせて、転んで故障でもされたら、こっちの責任なのよ。ま、そんな大足
のハイヒールがあればだけどね。

でも、アパートに帰って、玄関口にセリカの靴が揃えてあるのを見ると、ちょっとだけ、ギョッとする
んだよね、まだ。


で、ガッコ行って掲示板みたら、その日のゼミはお休み。イヤッホウ!
と、思ったのだけど、そしたら、あたしのほうが、良子が講義終えて出てくるのを、待ってなくちゃな
らないんだよね。楽あれば苦あり。毒にはキアリー。古かった?


結局、良子は5分遅れて来たの。わたしはちゃんと待ちましたとも。
良子って、相手が遅れたらさっさと行くタイプなんだけど、自分が遅れた時は待っててないと怒るん
だよねー。我がまま気まま。


「でも、こんなとこにそんな店、あったかなあ?」
「路地をちょっと入るんだって」
「やっぱ、あたしが知ってる店にしようよ」
「まあ、もうすぐだから、行ってみよ、ね」
「あ、あれ見なよ、友恵」
「あ、マルチだー」

通りの向こうを歩いていたのは、これも来栖川エレクトロニクスのヒット商品、マルチなのでした。
手には買い物カゴぶら下げて、きっとお使いですな。なーんだか、どこ見てるかわかんないような顔
で、ひょこひょこ歩いているのは、正に子供ね、ふっ。うちのセリカたぁ、物が違うよね、物が。
でも、きっといい人に買われてるのかもしれない。オーバーオールのジーンズが、妙に似合ってる
の。さっきはあんなこと言って、ゴメンネ。頑張ってねー。

「ああいう服、買いたいねぇ」
「セリカには、似合わないわよ」
「そうかなあ」
「そうだってば」

そう、何としても良子と一緒に来ようと思ったのは、良子、センスがちょっと変なのよ。ちなみに、
今、良子が頭の上にちょこんと乗っけているのは、黄色いベレー帽。どこで見つけてきたんだろ?
初めて見たとき、手塚大先生の亡霊でも乗り移ったかと思ったよ、あたしゃ。

「あ、これなんかどう?」
「却下」
「じゃあ、これは?」
「ダメだって。大体、サイズが合わないでしょ。あんたの服選んでるんじゃないんだから」
「あ、じゃ、これ買お。あたし用に」
「もう、真面目に探そうってばさあ」
「なら、もう、友恵が選びなよ。あたし、これレジ持ってくから」

セリカに合う服って、実は結構限られるなって、服を買いに行く約束をした時点で、考えてた。
だって、髪が赤いもんね、セリカ。かなりおとなしめか、ド派手なのしか選べないし、かわいい系も、
ちょっとねえ、みたいな。スーツとかビシッと着せたら、ホストっぽくていいかな?とか思ったけど、さ
すがにそれすると、良子からセンスを疑われそうだし、良子からセンスを疑われたら、ダメ人間第一
号に公式認定された気になっちゃいそうで、ちょっとイヤ。

うーん、合う服って、結構ないなあ…
専用の店に行ったほうが、いいのかなあ…

実は、メイドロボ専用の服を売ってる服屋さんも、あるの。でも、高いのよー!
需要あるところ供給ありってのは、わかるんだけど、高すぎる。足元をみるない、チキショー。

良子は良子で、なんかまた変な服を見つけたらしく、試着させてもらったりしている。あとで覚えてろよー。

色合いがいいのは、サイズが小さいし、サイズがピッタリなのは、パッとしないというか、合わない
気がするしで、あきらめかけていた時に、その服を見つけた。

アイボリーがかったツーピース。

頭の中で、イロイロとコーディネートしてみた。

靴下の色は…
アクセントは…
髪型、変えたら…

「良子おおおおおおおおおおおっ!!」

「あ、いいんじゃない。うん、合うかも」
「絶対、いいってば!!」
「じゃ、それ買お」

これが、また、安かったのよーーーー!!

「また、来たいね、ここ」
「良子の趣味っぽいよね」
「それもあるけどさ、物がいいし、安いよ。どうしてこんな店、知ってたの?」
「聞いたの、昨日」
「へーー」
「倫理Cで、隣の席になった子がいてさ、あたし、その時、メイドロボのカタログ、ちょっと見てたの。
どんな感じの服が、合うかなーって。そしたら、「メイドロボ、買うの?」って聞かれて、イロイロ話し
たら、ここの店が趣味がいいって、教えてもらったの。こっちでいいの見つからなかったら、良子の
知ってる店に行くつもりだったよ」
「ナイスタイミングだよね」
「うん、正に。でもさ、話聞いたら、その子の高校って、メイドロボの試作品が、一時期テストで通っ
てたんだって」
「はーー、そりゃすごいね」
「マルチタイプで、すごく可愛いロボットだったんだって」
「今のマルチと、違ったのかな」
「全然違ったって、言ってた」
「なんか、見てみたいよね」
「そうだね」

うーーん、想像もつかない。

「じゃ、セリオも前はもっと別のセリオだったのかな?」
「さあ、そこまでは聞かなかったから」
「違ってたら、面白いね。どんな風に、違ってたのかなあ」
「実はすっごく太ってたり」
「言葉使いも乱暴で」
「何にもできないの」
「ひゃーー、ダメだこりゃ」

二人で、大笑い。

さあ、早く帰ろう。

家に帰れば、手作りの晩ご飯と、おひさまの匂いのお布団と、それにセリカが待っている

今日のおかずは、ロールキャベツだーーー!!


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さて、競作用にもう一本出そうかとも思っていたのですが、急遽とりやめ。
理由は、私の心得違い。
詳しくは、下の方にある久々野様の意見を見れば、おわかりのことと、思います。

1週間に一度とか、2週間に一度来てログを取っていく方もいるのを、失念しておりました。
最近、毎日のように来てたから、すっかり頭になかったのね^^;;

図書館も活性化して、中々新作とか出さない人のSSなども読めて、単純に嬉しがっていたのです
が、どんなものでもやりすぎると弊害がある。占有しているつもりは、これっぽっちもなかったのです
が、そう思われても、仕方ないかも。

誠に、申し訳ございません。

ただ、最近テンションが上がってて、どうも毎日のように書けてしまう。投稿は、しばらく続きそうで
す。一日一本くらいにしようとは、思いますが^^;;

で、競作が始まった頃からの過去ログ、取ってあります。
取りそこなった方がいたら、送ってさしあげたいというか、タイトルに名を使っている者の責任として、
送らせてください。

誠に、申し訳ありませんでしたm..m

NTTT 拝