「へえ、ギター、うまいっスねえ」 「…昔、軽音やってたからな」 「なんか、想像つきますよ。柳川さん、カッコいいっスから」 「よせよ。昔の話だ」 「いや、今でもサマになってますって」 「…他に聴きたいの、あるか?」 「あ、最初の奴、もう一回。いい曲でしたし」 「その前に、何か飲むか?ビールしかないけど」 「あ、俺、部屋からウィスキー、取ってきますよ」 「…やめとけ、また殴られるぞ」 「いいんですよ、あんな奴。それに、耄碌してるから、ウィスキーの一本くらい、気づきませんって」 「…いいから、やめておけ」 「は、はい…柳川さん、時々、そういう顔しますね」 「顔?」 「なんか、すっげえ迫力あるから…」 「そうか…」 「ゾッとする時、ありますよ」 「…すまん」 「いや、別にいいんですって。やっぱり、刑事さんは違うなって、そう思いますし」 「そうか…」 「でもね…」 「でも?」 「あ、柳川さん、こっち向いて、もうちょっと顔上げてもらえますか?」 「こうか?」 「そう、そんな感じで…」 「お、おい、何を…!!」 「………」 「………」 「………」 「………」 「…どうです?」 「……」 「男に、キスされるとは、思ってませんでしたか?」 「……」 「案外、慣れてませんよね、柳川さん」 「…こ、この…」 「殴りますか?殴ればいいっスよ、あいつみたいに」 「……」 「俺が、あの野郎に何されてるか、薄々感づいてるんじゃないんスか?お偉い刑事さんですしね」 「……」 「同情だけはね、して欲しくないんスよ。こんなキスくらいで、オタオタするような人には、特にね」 「……」 「ウィスキー、取って来ますから。覚悟が決まってないんなら、鍵閉めといて下さい」 「…貴之…」 「じゃ、取って来ます。あ、さっきの、続きですけど、でもね、あんたみたいな人をね、とことん地獄に 落としてみたいんですよ、俺は。どっちが先に、地獄に落ちるか、見当がつかなくて、ゾクゾクしてる んですよ、今」 「…た…」 「すぐ帰って来ますよ、俺は。それじゃ」 「…貴、之…」 _________________________ 会話パターン8:やお系