深夜の客(「競作シリーズその弐 NTTT VS その他大勢」「お題:会話文のみ」) 投稿者:NTTT 投稿日:5月15日(月)12時27分
「店長、店長」
「ん、何だ?」
「さっきのお客さん、見ましたか?」
「見たけど、それが?」
「なんとも、思わなかったんですか?」
「…ただの、メイドロボだろ。最近はよく見かけるしなあ。別に珍しかなかろう。最近は、うちみたい
な弱小コンビニでも、1日に2人くらいは、ロボットのお客がいるし、ま、世の中、変われば変わるも
んだ」
「あ、じゃあ、店長、よく見てなかったんですね。俺、むっちゃ驚きましたよ」
「ん?何かしたのか?」
「した、っていうか、笑ったんですよ。ニコッて」
「はあ?それが?何か、おかしいことでもあったんだろ」
「うわ。店長、何も知らないんですね」
「…ひょっとして、笑わんの、メイドロボ?」
「そういう機能、ないんですって。街で見かけることがあったら、よく見とくといいですよ。も、完全に
無表情ですから」
「いや、まあ、そんな感じだとは、思ってたけどな。でも、ま、その方がいかにもロボットっぽいし。で
も、笑ったんだよな、君の前で。ホントか?」
「ホントですって。いや、つられてこっちも笑顔になっちゃって、帰られてから、気がついたんですよ」
「ふーん。でも、笑えないんだよなあ」
「そ。笑うわきゃないんです」
「なあ、ホントに笑ったのか?そんな風に見えただけじゃないのか?昼間ちゃんと寝てるか?」
「なら、あれ、見ましょうよ」
「あれ、って、監視カメラか?」
「ええ、多分、角度的にも、バッチシ映ってるはずです」
「いや、そこまでしなくても…」
「すっごい、いい笑顔なんですって」
「ふーむ…」


「ええと、何時ごろだったかな…」
「も、見ながら巻き戻した方が早いですって。大して時間経ってないし」
「そうだな」
「あ、もうすぐです。とりあえず、店に入るとこまで巻き戻してください」
「…よし、ここからか…」
「よーく、見ててくださいよ」
「…ふむ、ペットボトルにスナックか。どうやら持ち主は若い人だね」
「ま、ロボット買う人なんて、珍し物好きの若いのか、必要で買うトッショリくらいですからね」
「君は、買わんの?」
「金がないっすよ。って、ほら、ここ、ここ見てください!」
「…うわ、笑ってるよ、確かに」
「でしょ?」
「はーー、また、えらい自然に笑うなあ…確かに、つられても無理はないか」
「やっぱ、改造なのかなあ?」
「うーん、どうなのかねえ。実は人間がメイドロボの格好してたりしてね」
「ああ、そうのもアリかあ。実はそうなんですかね?」
「うーん。ま、どっちにしても、また来て欲しいとこだね。もし、次に二人の時間帯に来たときは、私
が応対するから」
「あ、そりゃズルい」
「ズルいはないだろ。自分だけ間近でしっかり見たんだから、今度はこっちの番だよ」
「いや、公平にジャンケンしましょって」
「ま、でも、ちゃんとまた来てくれりゃいいがね」
「確かに。また、来て欲しいですね」
「さて、もうすぐパンのトラックがくる時間だから、用意しよう。仕事だ仕事」
「イエッサー。でも、店長」
「何だ」
「あれが、ホントに、メイドロボだったら、持ち主は、どんな奴なんでしょうね」
「さあな。だけど…」
「だけど?」
「幸せな奴さ」
「…同感。さ、仕事しましょっかー」
「おう。働いて、メイドロボでも買ってくれ」
「うちの時給じゃ、買えないっしょ」
「うわ、それは言っちゃダメだって!」


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会話パターン6:オリキャラ同士の会話