私は大人になった 投稿者:NTTT 投稿日:4月28日(金)22時04分
「あれ?藤田君やないの」
「え?ええと…」
「ほら、ウチや、保科智子。隣の席やったやん」
「…あ!いっ、委員長かよ!」
「『委員長』って、あんた、いつの話や!!こんなとこで、勘弁して欲しいで、ホンマ。あんたの知り合
いに、関西弁使うん、何人もおるんか?」
「いや、でも、眼鏡かけてねえからよ。いや、見違えたぜ。あの頃から思ってたんだよ、委員、いや、
保科さんは、眼鏡取ったら、すげぇ美人なんじゃねえかって」
「また、調子ええこと、言うてから。相変わらず、誰にでも言うとるんか、藤田君は?」
「いや、ホントだって」
「眼鏡は、結構、邪魔なるからな。きれいさっぱりコンタクトに、代えてもた」
「ま、正解だと思うぜ。委員長、ホント、可愛いしよ」
「もう、口うまいんやから。口説かれとるみたいで、ちょっと照れるわ。神岸さんとか、おるやろに。今
でも、付き合うとるんやろ?」
「ああ、あかりか…あかりはなあ…付き合ってるっつーかな…」
「ん、何?えらい歯切れ悪いけど…別れてもうたん?」
「違うって。ほら、これ」
「ん?指輪やないの…石、ついてないなあ…ああ、そういうこと。それはそれは、おめっとうさんでござ
います」
「あ、ああ…サンキュ」
「そうかあ、今、何年目?」
「半年、くらいかな」
「キッチリ言わんかいな。と、いうことは、なら、大学卒業して、すぐなんやな」
「ああ…」
「なあなあ、なら、ひょっとして、『できちゃった』か?」
「なんでわかんだよ!」
「そら、わかるがな。なら、今、神岸さん、お腹、こんなん?」
「それほどじゃねえけどな。まあ、そんな風だよ」
「なるほどなあ、あんたも、大変やねえ。なあ、赤ちゃん生まれたら、いっぺん見して」
「見て、どうすんだよ?」
「どうするも何も、見るだけやがな。何すると思うとんのかいな」
「あ、ああ、スマン、委員長」
「いや、まあ、ウチみたいのが行ったら、迷惑かも知れんけど…」
「んなことねえって。あかり、結構、委員長のこと、覚えてるし、会ったら喜ぶと思うぜ」
「神岸さんが?別に、そんな話したこととか、ないんやけどな…」
「ほら、インパクトとかもあるんじゃねえか?」
「インパクト?」
「だから、その、大阪弁。インパクト強いから、絶対、印象に残るって」
「大阪やないわ!!神戸や!!!」
「あ、悪ぃ、そうだったよな、確か…」
「ホンマ、誰も彼も、関西弁ちゅうたら、「大阪か?」 とか言いよるのは、どうなっとるんや、ったく」
「…すまん。あ、でも…」
「でも、なんや?」
「前にも、委員長と、こんな会話しなかったっけ?」
「え、そうやったっけ?」
「ああ、覚えあるぜ」
「ほな、なんで間違えるん?」
「そ、それは…」
「要するに、全然成長してへんてことやな、藤田君は」
「委員長は、変わっちまったよな」
「まあなあ。いつまでも、気ぃ張ってられへんし」
「やっぱ、あの頃は、そうだったんだな…」
「そらそうや。住み慣れた街捨てて、知らん場所の、知らんガッコ行かなならんかったんやから、気ぃ
くらい、張るわ」
「そりゃ、そうだよな」
「ま、それが失敗やったのかもしれんけどな。変なイジメとか、会うてもうたし、散々や…」
「吉井とか、いたよな…」
「岡田とかな。今、思い出しても、ムカツクわ、ホンマに!」
「苦労したよな、委員長…」
「まあな。それでも、ええことも、結構、あったけどな…」
「…そうか」
「それでも、変な目つき悪いアホでスケベったらしい男に追いまわされた時は、参ったわ」
「へえ…委員長にも、そんな奴、いたのか…」
「あんたや!」
「俺かよ!」
「でもな、それが、結構、ええ思い出やったんやで」
「え!?」
「あの頃、だーれも、友達おらんかったからな。学内にも、ガッコの外でも…」
「友達、か…」
「イヤか?」
「いや、別に」
「それにな、結構、好きやったんやで」
「ホントかよ」
「ホンマやて」
「…なんか、そっちこそ、誰にでも言ってんじゃねえのか?」
「信じや。なんか、アホで、スケベそうなとこが、妙にええなあ、とか、思っとったんやで」
「そんなんが、いいのか?」
「ええよ。やっぱ、男は、アホでスケベなほうが、絶対ええて。今でも、改めて、そう思うわ」
「なんか、複雑な気分だよな…」
「褒めてんのや。褒めてるんやから、笑っとき」
「はいはい」
「うん、ええ顔や。藤田君、ホンマ、変わらんわ」
「うーん、どうなんだろうなあ…」
「なんや、惜しいことしたわ。あの頃、このナイスバディで、藤田君とラブラブになっとったら、今っ頃
は、お母さんかあ…」
「そう言われると、俺も惜しいことしたかな…」
「神岸さんが、おるやろに。あ、でも、神岸さんて、胸、ちっこいほうやな…ま、女は胸だけやないし、
大きいのも、これはこれで、大変やからな」
「なんか、そうみたいだな。聞いたことあるぜ」
「ま、惜しい惜しい言うても、始まらんしな。時間ばっかりは、どうにもならん…って、こんなしゃべくってる場合やないわ、えらい時間経ってもうた!」
「あ、いや、俺、もういいや。このまま帰っても…」
「あーかーん!こっちも、商売なんやから。ほら、そんな元気にしとるやないの!」
「いや、これは、しょうがないっていうか…」
「そう。そうなったもんは、しょうがないんやから、どうにかせんとな。超特急でやらしてもらうわ」
「おいおい…」
「次来る時は、時間いっぱい使うたるから、また来てな」
「またって…」
「言うとくけど、よその店行ったり、ここに来て他の人指名したりしたら、ウチにも考えあるで」
「考えって…」
「…神岸さんに、言うで」
「…勘弁してくれよ」
「それから、ウチのことは、『委員長』でええよ」
「あ、さっきからずっとそう言ってたっけ。悪ぃ」
「だから、ええんやて。なんか、昔のまんまでやっとる気がして、なんや、ドキドキするしな。藤田君に
は、キス、させたるわ」
「……」
「ほら、早よ横になり。ボディ洗いできへんやないの!!」





______________________________

実は毒。萌えの人、スマヌ