Sweet  Seventeen  投稿者:NTTT


「なによ、綾香、こんなとこに呼び出して」
「『なによ』って、あんた、忘れてるの?今日、葵の誕生日でしょ!」
「…ああ!」(ぽん)
「あんたねえ…空手やめちゃったら、もう、それでおしまい?そういう人、あんた?」
「…最近、忙しかったのよ…」
「ふーん…忙しかったら、忘れられちゃうんだ…」
「うるさいわね、で、それと、今日呼び出したのと、どういう関係があるのよ!」
「だから、プレゼントをさ、二人で選んであげよっかなー、って、ね」
「別に、あたしは、もういいわよ…」
「よかないって。あれから、会ってないんでしょ?」
「葵は葵で、自分の道を進んでるんだから、あたしがいまさらどうこう言う必要は、ないわよ…」
「負けたの、まだ気にしてんの?」
「別に。そういうことも、あるわよ。葵、実力は、まあ、あったんだし…」
「うーん…その顔は、まだ、気にしてる顔ね。好恵ちゃん、くら〜い」
「…ヤるの?あんた、ヤる気なのね?」
「違うって!だーかーら、いいじゃない。それはそれ、これはこれよ」
「……」
「もう、そんな顔しないでよ。あ、お姉さん、バナナパフェふたつ、特盛ね〜」
「あたし、食べないわよ…」
「ま、そんなこと言わないで。ここ、美味しいのよ」
「…おごり?」
「はいな」
「…じゃ、食べる」
「でさ、あたし、葵の好みって、イマイチわかんないのよ。買い物、付き合いなさいって。で、二人で、葵んとこ
行こ」
「あんたねえ、道場でいつも一緒だったのに、なんでわかんないのよ!」
「…いや、なんかさ、その辺、印象薄いっていうか…」
「葵、いっつもあんたに付きまとってたっていうのに…あんたの後を追って空手やめちゃったっていうのに…」
「だって、あの頃、あたしに付きまとってた子、いっぱい、いたじゃないの!」
「あんた、妙に外面よかったからね…」
「あんたは、外面悪かったわよね。道場主としちゃ、失格よね〜」
「あんた、ホント、むかつくわね。ケンカ売ってるでしょ?そうでしょ?」
「だーかーら、違うって。あ、お姉さん、ありがと〜。ほら、食べよ」
「言われなくっても、食べるわよ」
「んー、おいし。で、そんな話をしに来たんじゃないって。買い物、付き合いなさいよ」
「なんでよ、教えたげるから、一人で行きゃいいでしょ」
「なに言ってんの。共に道場で修業した友人が、二人とも絶縁状態なのって、あたし、イヤよ」
「あんたに関係ないわよ!」
「大アリよ。だって、葵が空手やめたのって、あたしのせいじゃないの…ああ、あたしって、罪な女…」
「勝手に言ってれば。葵の好みも知らないくせして」
「じゃ、知ってるのね?」
「知るもなにも、あたし、葵ん家で、ご飯食べたことだってあるわよ」
「マジ?」
「こんなことで嘘なんかつかないわよ」
「いいな〜」
「別に。普通のよくある家庭の夕食だったわ」
「いいわよ、それ。あたし、そういうの、食べたことない…」
「あ…ゴメン」
「いいって、別に。じゃ、葵のお父さんとか、お母さんとか、会ったんだ?」
「そりゃ、そうよ」
「ね、どんな人だった?」
「…普通の、人だったけど…」
「それじゃ、わかんないって。ね、葵って、どっち似?」
「…目は、父親かな。輪郭は、母親か…」
「ふーん、そうなんだあ…でも、そこまで仲良かったって、意外」
「別に、仲良かったとか、そういうのじゃなくて、捻挫した葵を肩貸して、家まで送ってったら、ちょうど夕食の
時間だったの。それだけ」
「あ、なんか、ロマンティックかも」
「なにがよ?」
「ほら、ドラマとかであるじゃない。それで恋が芽生えてさ」
「あたしも葵も女なんですけどね」
「わ、禁断の愛。燃えるぅ〜」
「あんた、ホント、あたしに含むとこないの?どうなの?」
「冗談だって。あ、お姉さん、こっち、レアチーズ二つ、追加ね」
「なに注文してんのよ!」
「いいじゃない。ここの、ホント、おすすめなんだから」
「…太るわよ」
「大丈夫だって。普段の運動量、ハンパじゃないんだから。甘い物はエネルギーにすぐ変わるのよ」
「若いうちにそんな体質作ったら、あとで泣き見るわよ」
「うち、太んない体質だもん。姉さん見てりゃ、わかるでしょ?」
「そういえば、芹香さん、体型変わらないわねえ…」
「でしょ。こっちが必死こいて運動してるのに、向こうは食っちゃ寝であれだからねえ。どうなってるのかしら
ね?」
「体質でしょ」
「なんか、不公平よねえ…」
「って、ことは、やっぱり、あんたの場合、食べただけ体重増えるんじゃない。もっと節制しなさいよ」
「運動するからいいの。人の楽しみにケチつけないでよ」
「あんたは、エクストリーム、やめない方がいいかもね…」
「で、話戻そ。葵の話」
「そういや、思い出したわ…」
「なに?」
「葵が捻挫したとき、あんた、いたわよ。その場に」
「ホント?」
「ホントもなにも、あんたと組手の最中に足捻って捻挫したのよ」
「…全然、覚えてない…」
「で、葵が痛がってるのに、あんた、先帰っちゃったでしょ!それであたしが家まで連れて帰ったのよ!!」
「ちょ、ちょっと待って…ああ、ダメ。全然、記憶ないわ、それ」
「葵、ホント、大丈夫なのかしら。あんたみたいのに付いてって…」
「『みたい』は、ないでしょ。『みたい』は」
「言いたくもなるわよ。普通、覚えてるもんよ」
「だって…」
「ふう…」
「あ、そ、そうだ。お姉さん、イチゴゼリー、二つね」
「まだ食べるの!?」
「いや、おいしいんだって、これ。ね、買い物行こ。お願い」
「…行く。行くからもう注文するの、やめてね」
「あ、うん。まだおすすめあるけど、また今度ね」
「葵、ホント、大丈夫なのかしら…こりゃ、一度会いに行ったほうが、いいかもね…」
「大丈夫よぉ」
「あんたが言うな!!」







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