今日は、私の16歳の誕生日です。 なんだか、昨日までとはちょっと違う感じかも、しれません。 気のせいかもしれませんけど、大人に一歩近づいたような、そんな気がします。 去年の誕生日は、こんな気持ちは持ってなかったと、思います。 あれからの一年で、なにか、自分の中で、少しづつ、変わっていったんでしょうか。 実際、私をとりまく状況は、この一年で、大きく変わりました。 高校受験。 空手からエクストリームへの転換。 そして、藤田先輩との出合いと、坂下先輩との試合。 そして… 短いように感じる一年間だったのに、すごくたくさんのことを、思い出します。 何年たっても忘れられないような、そんな思い出ばかりです。 充実した、一年でした。 これからの一年も、そんな思い出が作っていけるんでしょうか。 きっと、できそうな、そんな気がします。 でも、そのためには、一生懸命、頑張らないといけません。 ダラダラ過ごしていては、きっと充実した毎日は、おくれないでしょう。 そうですよね、綾香さん? −正拳回し打ち一発だよ、キミィ − やっぱり、そうですよね。 葵は、綾香さん目指して、頑張ります。 まずは、腹筋から。 鍛えた腹筋は、受けるダメージを減らしてくれます。 はあ、はあ… 結構、疲れました。 でも、地道な努力を、惜しんではいけません。 地道な努力こそ、最後に大きな実を結ぶのだと、思います。 そう、坂下先輩に勝てたのは、毎日の練習を、条件反射になるほど繰り返した成果です。 ただし、二度も通用するほど、坂下先輩も甘くないでしょう。 認めてはくれましたが、この先腑抜けた試合をするようであれば、坂下先輩は、きっと、 また、私を戒めにくるはずです。 それだけ、私に目をかけてくれてるんですよね、坂下先輩? −正拳回し打ち一発だよ、キミィ− はい、先輩の顔を汚すような真似は、しませんから。 とりあえず、腕立て伏せ。 腕力は、もっともっと必要です。 も、もう、限界です。 さすがに、体中が痛くなってきました。 でも、負けられません。 軽量級の私は、人の2倍も3倍も頑張らないと… エクストリームは、勝ち抜き戦です。 負ければ後がないその大会で、最後に試されるのは、鋼のような精神力。 苦しいときに頑張った記憶は、最も頼りにできる「強さ」 です。 「強い」というのは、技でもなく、力でもなく、きっと心のことなんです。 藤田先輩は、いつも、私のことを、「強い」といってくださいますけど、どんなときでも 私のことを信じてくださる藤田先輩こそ、「強い」んですよ。 先輩がいつもそばにいてくださるから、私、強くなれるんです。 先輩… −正拳回し打ち一発だよ、キミィ− はい。先輩の期待にこたえるためにも、葵は、頑張ります。 ヒンズースクワットは、精神力の続く限り、続けられる運動です。 「葵、なかなか降りてきませんねえ…」 「いつもなら、ランニングにでかける時間なのになあ…」 「まあ、今日は誕生日ですし、特別なのかしら。あ、あなた、今日は早く帰って来てくだ さいね」 「ああ、わかってるさ。可愛い娘の誕生日だしなあ」 「プレゼント、何にしましょうかねえ」 「あ、すまん。昨日、私の分は、渡してしまったんだ」 「まあ、一体何を?」 「いや、帰りの本屋で、ちょうど目に止まったもんだからね」 「本ですか?」 「うん。本というか、漫画なんだがね…」 「あら、まさか、殴ったり蹴ったりの漫画じゃないでしょうね?」 「『空手バ〇一代』は、そんな悪い表現で表すような漫画じゃないぞ」 「あの子も、16歳なんですから、もうちょっと女の子らしいのにしてくださいよ」 「本人が、あれだけ頑張ってるんだから、いいじゃないか。喜んでたぞ」 「まったく、あの子には甘いんですから…」 藤田先輩… なんだか、さっきまで疲れてたのに、なんだか、気持ち良くなってきました。 そうですよね、正拳回し打ちで、いっ、一発、ですよね。 あーおかしい… ひゃっ、ひゃっ、ひゃひゃひゃひゃひゃひゃ… ________________________________________________________________________________