ああ、浩之、どうしたの、こんな時間に？

そうだね、まあ、上がってよ

いや、姉さん、なんでもない

浩之だよ

いや、なんか、話あるみたいだからさ

玄関？

ちゃんとカギ閉めたってば

じゃ、お休み、姉さん

え？

いや、別に迷惑じゃないって

大体、夜中に来ることなんか、今までだって、よくあったじゃない

で、どうしたのさ、浩之

あ、うん、部屋でね




で、どうしたの、一体？

ほら、話してよ

なんか頼みがあるんじゃないの？

そりゃ、わかるよ

いつもそうだったじゃない

あ、そうだ、なんか食べる？

あるよ、ポテチぐらいだけどさ

新しい隠し場所、作ったんだ

この前のは姉さんに見つけられちゃってさ

今は、ほら、ここ

どう？

外見からはわかんないでしょ

え、飲み物？

しょうがないなあ

じゃあ、ちょっと、そこどいて

そ、ハムスターのケージの下なんて、結構盲点だからさ

はい、どうぞ

ひょっとして、あかりちゃんのこと？

わかるって、そりゃ

なんか、シリアスな話って感じじゃないし

にしては、話しづらそうだしね

なんか、修学旅行のときから変だったもん、浩之

あかりちゃんも、変だったし

バレるよ、そりゃ

なに言ってんの

皆、陰で言ってるよ

いや、だから、「デキてる」って

でしょ？

あ、やっぱりね

皆、二人がいないところでは、すごい噂になってるんだから

そうだよ

え、僕？

僕は、「どうなのかなあ」とか、一応知らないふりをしてるけどね

うん、女の子にも結構聞かれるよ

「隠れ浩之」って、結構多いんだから

え、知らなかったの？

浩之、結構モテてるよ

なに言ってんだか

僕はあかりちゃんのほうが、浩之にはもったいないって思うけどなあ

ちょっと、やめてよ、浩之

痛いって




あ、でも、ということは、修学旅行のちょっと前なの、そうなったのって？　

あ、やっぱり

なんかさ、そんな気はしたよ

だから、わかるって

あ、あのさ

最初は、やっぱり、緊張とか、したの？

ちょっと、やめてって

痛いって

だって、気になるじゃない

いや、だから、そういうとこ、どうなのかなあ、って、思うよ

あ、やっぱり

いや、別に含むとこなんかないってば

でも、昔からずーっと一緒だったのが、ある日、そうなっちゃうって、いうのはねえ

なんか、想像もつかないし

うん

なんか、浩之、改めて尊敬しちゃうかな

ん？

でも？

ああ…やっぱり、最初は大変だったんだ

あ、なんとなく、わかるよ

プレッシャー、かかったんだね

そんなことないって

普通だよ、普通

でも、あかりちゃんは、ショックだったのかなあ

ちょっと、そんな暗くならないでよ

今は、うまくいってるんでしょ？

だったら、いいじゃない

そうだよ




ふーん

知らない間に、そんなことがあったんだね

コメントつけられないなあ

でも、よかったじゃない

うん、そう思うよ

最近のあかりちゃん、すごく幸せそうな感じがするもの

だから、きっとよかったんだよ

なんか、いいよね

いや、だからさ

誰かを好きになって、それで、そんなふうになって、なんか、すごくいいと思うよ

え？

僕？

いや、僕はまだ、そういうことイマイチっていうかさ

興味は、そりゃあるよ

でもね

なんというか、そういうピピッってのが、ないんだよねえ

いや、あの子達は、基本的に、「サッカーやってカッコイイ」とか、「カワイイ」って、思ってるんだもん

全然違うよ

って、僕の話はいいからさ

そういや、なんか頼み事があったんじゃなかったの？

え？

ちょっと、勘弁してよ

コンドームなんか、持ってないって

あ、じゃあ、あかりちゃん、一人で家に待たしてるの？

ヤバいでしょ、早く帰ってあげないと

あ、ちょっと待って

置き薬の箱に、入ってたと思うから

ちょっと下行ってくるから




ほら

一箱持ってって

明日、薬屋さんで買ってきといてよ

ちゃんと元通りにしとかないと、あとで僕がとんでもないことになるんだから

ほら、早く行った行った

じゃあね

まったく

だったらすぐに言えばいいのに

しかし

どんな顔してやってるのかなあ

あ、なんか想像しちゃったよ

ヤバいなあ

今夜、眠れないかも

はいはい

ちゃんとカギ閉めたよ、姉さん

お休み



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年末進行、その一