魅惑のアルゼンチンタンゴ  投稿者:NTTT


今日は私の誕生日です。ルルリラ

浩之さんの家で、二人だけの誕生パーティーです。ヒャッハァ

こんな日には、何事も許せるような、そんな気がします。うほほーい

そう、綾香でさえも。

ダメです、芹香。

綾香の事だけは、考えてはいけません。

もっと、楽しいことを、考えましょう。

浩之さんは、プレゼントを用意してるからと、言っていました。

もう、浩之さんたら。

別にプレゼントなんて、いらないのに。

浩之さんの体ひとつで、芹香は満足しておりますのに。

綾香の去年くれたプレゼントが、なんだったと思いますか?

通販で買った健康器具のオマケで付いてきたカメラですよ。

しかも、2つも。

私にどうしろと。

写真を撮れとでも。

ええ、撮りましたとも。

綾香のいぎたなく眠りほうけている姿とか。

着替え中の間抜けなポーズとか。

一枚500円で売りました。

ついでに会社のホームページに載せようとしたしたところで、綾香にみつかりました。

それからのことは、思い出したくありません。

ああ、芹香、ダメです。

思い出してはいけません。

もっと、楽しいことを。

そう、今日は浩之さんの家で、二人きりなんですよ、芹香。

二人きりということは、そう、二人きりということです。

ああ・・・

きっと、浩之さんは、蝋燭の明かりの中、私の目を情熱的に見つめてくるでしょう。

「君の瞳に乾杯」

チン

「ああ、今夜の君は、なんて美しいんだ。まるで神が天上から使わした天使のようだよ」

「ああ、お願いだ、僕のエンジェル。どうかこの恋に身を焦がす男を哀れと思うなら、一曲の間でいい、甘美
な夢を見せておくれ」

曲は、情熱のアルゼンチンタンゴ。

私は、真紅のドレス。

浩之さんは、イブニングジャケットに、カマーバンドで、薔薇を一輪、口にくわえて。

「さあ、この夜を僕らのものにするんだ。タンゴを踊っている間は、全ては僕らのものなんだから」

私以外の全てをたたき付けるような、浩之さんの情熱的なステップ。

その腕の中を、巧みにすり抜け、焦らすように、それでいて、少しづつ捕らえられていく私。

ああ・・・


「ちょっと、なに上でバタバタやってんのよ、埃が落ちてきたわよ!ちょっと、開けなさいよ、開けなさいって
ば、ちょっと!!」


ああ、浩之さん。

もうあなたしか見えません。



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