「あれ、保科さん、まだ残ってたんだ」

「ああ、佐藤君かいな、クラブやったんか」

「うん。保科さんは？」

「・・・なんとのうな・・・」

「うん？」

「せやから、なんとのうや」

「ふうん・・・」

「ええやないの、別に残っとったって」

「いや、そういうつもりじゃ・・・」

「・・・まあ、ええわ。佐藤君みたいに、楽しい学園生活送っとるもんには、関係ないこっちゃ」

「いや、僕だって、悩みくらいは・・・」

「なんや？」

「え？」

「せやから、具体的になにが悩みなんや？言うてみぃ」

「い、いや、だから・・・今年の新入部員のこととか、進学のこととか、それから・・・」

「はっ、楽しそうでええなあ」

「じゃ、じゃあ、保科さんは、なにが悩みなのか、教えてよ」

「人の悩みなんか、どうだってええやないの。うちかて、佐藤君の悩みなんて、ちぃとも関係あらへ
んし、聞きとうもないわ」

「今聞いたじゃないか！」

「佐藤君、意外にこまかいな、男のくせしてから」

「そ、そういう問題じゃなくて・・・」

「ふぅ・・・藤田君・・・」

「え？」

「藤田君って、神岸さんとつきおうとるの？」

「え・・・ええと・・・それって・・・」

「佐藤君、藤田君のツレやろ、わからへんの？」

「・・・つきあっては、いないと、思うよ」

「ホンマに？」

「うん」

「ホンマにホンマ？」

「・・・うん」

「はあ・・・そうかぁ・・・でも、でもな、ゴハンとか作ったっとるんやろ、神岸さん」

「ま、まあね」

「そうなんよねぇ・・・」

「ね、ねえ、保科さん」

「なんや？」

「浩之のこと・・・」

「・・・別に、好きやないよ」

「えっ！？」

「・・・好きやない。好きやないんやけど、最近、よう、うちにちょっかいかけてくるやん」

「ああ、うん、そうだね」

「いっつも、いっつも、あんな風にちょっかいかけられたら、普通、思わん？この人、うちに気ぃあるん
かなって・・・」

「・・・・・・」

「ところが、なに、神岸さんや、あの、よう休み時間になったら来るあの人と」

「あれは、志保っていって・・・」

「そう、その志保とかいうんとも、えらい仲良さげやろ、どういうこっちゃねん」

「いや、それは中学時代からの・・・」

「おまけに神岸さんには家来てもろうてメシまで作ってもろとるいうし、ほしたら、うちにちょくちょくい
らん世話焼いてくるんは、何なん？もう、何がなんやらわからへんわ」

「ね、ねえ、保科さん」

「あんたもな、ツレやったら、なんとかしいや。変に気ぃもたすようなこと、すな、っちゅうてくれんと、
うち、迷惑なんやで」

「いや、だから・・・」

「もう、うち、最近、アタマ、カチ割れそうなんやで、わかってんか？」

「保科さん？」

「それとも、なに、タラシか、藤田君？もう、勘弁して欲しいわ。余計なおせっかいばっかりすんの
は、手ぇか？人をなんやと思っとんねん。腹立つわー」

「いや、そんな・・・」

「大体、タラすならタラすで、きっちりケジメつけんといかんやろ。人に横から話しかけといてすぐ、お
んなじクチで他の女と仲良うに喋っとったら、んなもん、どうにもならんやろ。最低やないの」

「保科さん！」

「なんやっ！！」

「あ、あのさ、浩之のこと、ホントに・・・」

「嫌いやっちゅうとるやろ！！聞いてなかったんか！！あんたの耳は飾りモンか！！！」

「・・・・・・」

「もうええ。所詮はツレだけあって、あんたも同類や。なんや、女の子にキャーキャー言われて、そ
りゃ学園生活も楽しいやろ。どないなっとんねん、ったく・・・うちはもう、先帰らして貰うわ。あんた
もフラフラしとらんで、さっさと帰りや。ホンマ、藤田君には、参るわ・・・」










・・・ふぅ・・・

・・・あかりちゃんに、言っといたほうがいいのかなあ・・・

・・・気が重いなあ・・・










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