テデコミュニケーション 投稿者:NTTT

「ご主人様ー、早くしないと特売売り切れちゃいますー」

「おお、おまたせ」



今日は卵の特売日なので、マルチと商店街に出かけた。
一人につき一パックだから、人数が多い方が特だ。
ま、しばらくは卵ばっかりのメニューになるが、マルチの腕も上達してるし、レパートリーを
増やすいい機会だろう。経済的にも助かる。


スーパーの前には行列ができていた。
行列の中には、ちらほらとメイドロボが、1、2・・・5体。
普及してるなあ・・・
どれもマルチタイプだけど、やっぱ安いからな。セリオタイプは、企業かよっぽどの金持ち
でもないと、買えないし、なによりサテライトシステムなんて、一般家庭ではそうそう使う事
がない。


マルチと行列に並ぶ。
メイドロボはテレビのコマーシャルでもガンガン宣伝してるし、実際にかなり普及してるか
ら、以前のように奇異の目で見られる事はない。日常の風景ってやつに、なりつつある。


前の方に、メイドロボが3体、固まっている。一人(体)の服装には、見覚えがあった。
ええと・・・あの角っこの家の・・・だめだ、名前が出てこない。近所付き合いしてねえから
なあ・・・


マルチに聞くと、すぐに教えてくれた。三体とも、顔見知りだそうだ。ま、買い物とかで一緒
になることもあるんだろうな。俺よりよっぽど人付き合いがいいぜ。
でも、マルチタイプって、ジーンズとかも似合うのな。
今度、うちのマルチにも買ってやるか・・・脱ぐのに苦労しそうだが。


前の三体が、こっちを見た。三体とも、頭に手をやって、掻くようなそぶりをしている。
マルチを見た。
マルチも、自分の頭に手をやって、自分の頭を自分で撫でていた。


帰り道、マルチに聞くと

「挨拶なんですー」

だそうだ。

「幸せですか?」

「はい、幸せですよ」

って、意味らしい。

「あのメイドロボ達にも、感情があるのか?」

と聞いたら

「もちろんです」

と、怒られた。

人間にははっきりわからないけど、ロボット達の間で通じる気持ちがあるそうだ。

長瀬のオッサン、やってくれるぜ。


今度の特売日にも、マルチと行かなきゃな。
あのロボット達がいたら、ちゃんと名前を呼んでやろう。
どこか近所で会ったら、頭を撫でてやろうかな・・・
なんとなく、空いている手でマルチの頭を撫でた。
あの娘達も、目を細めてくれるだろうか?
なんとなく、そうしてくれそうな、そんな気がした。



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