「姉さん、ちょっといい？」



今日の綾香は、ちょっと変です

なんだか、そわそわしています

こういう時の綾香は、頼みごとがあるときです

前に綾香がこんな風だった時には、おこづかいを半分借りていきました

強引に

いやな予感がします

前のも、まだ返してもらってません



「違うって、そういう話じゃないのよ」



では、服でしょうか

前に服を貸した時は、ボロボロになって返って来ました

坂下とかいう頭の中に人を殴る事しか詰まってない友達と、空手の練習をしたそうです

私は、空手ははきらいです

きらいになりました



「だーかーら、そういう話じゃなくて、姉さん、今日、私が誰に会ったか、わかる？」



わかりません

わかりたくありません

この前、綾香はサルマンとかいうアラビアの人を連れて来ました

街で偶然見かけたそうです

夜中、銃撃戦で寝られませんでした

アラビア人はきらいです

きらいになりました



「違うって、姉さんもよく知ってる人よ」



誰でしょうか？

金○日でしょうか？

今の国際情勢で家に連れてくるのは問題があると思います



「あ・の・ね・・・・藤田、浩之。驚いた？」



驚きました

藤田さんが綾香に会うなんて

でも、どうして綾香が藤田さんの名前を知っているんでしょうか？



「あのね、今日街を歩いてたらさあ・・・」



ああ、なんということでしょう・・・

私に乱暴者の妹がいる事が、知られてしまいました

知られたくなかったのに・・・

明日、どんな顔をして藤田さんに会えばいいのでしょう・・・

妹なんかいないと押し通したら、信じてくれるでしょうか？

いや、それよりも

藤田さん、私に会ってくれるでしょうか？



「でも、なかなかいい人見つけたじゃない、姉さん。あたしもタイプだったりして〜」



嘘ばっかり

あなたのタイプは、調子がよくて頭が悪そうで険があっていやらしそうな人のはずです

藤田さんとは大違いです



「言ってたわよ、可愛くて、一緒にいると幸せな気分になるって。よっ、男殺し！」



えっ！！

ええええええっ！！

ど、どうしましょう・・・

もしも明日会った時、「結婚して下さいませんか、マドモアゼル」なんて言われたら・・・

ああ・・・お祖父様、お許し下さい

芹香は明日、女になります・・・



「ま、それだけ言っときたかったのよ、じゃ、おやすみ〜」



ああ・・・どうしましょう・・・








「浩之、それ、どうしたの？」

「ああ、なんか昨日の夜遅くセバスチャンの奴が来てよ、『乗ってけ』って」

「乗れるの？」

「乗れねえからこうやって引っ張ってきてんだよ！！ 雅史、お前乗れんのか？」

「・・・いや、僕も・・・」

「だよなあ。おら、とっとと歩け、早いとこ先輩に返すんだからよ」




「ひひーーーーん」




＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿



（おまけ）無抵抗主義

「マルチ、やっぱりセリオも頭を撫でてやったら、お前みたいに喜ぶのか？」

「さあ、わかりませんー、直接聞いてみるですー、セリオさーーん」

「呼びましたか？」

「いや、お前もさ、マルチみたいに頭を撫でてやったら、喜ぶのかなって・・・」

「撫でるのですか？」

「ま、まあな」

「本当に、撫でるのですね？  無防備な私の頭を、そのごつごつした手で荒々しく撫でま
わしたいのですね？」

「い、いや・・・」

「たとえ私が泣き叫んでも、止めないのですね？」

「あ、あの・・・」

「私がロボットであるがゆえに、どんなにクズなＦｕｃｋ’ｎ野郎にも逆らえない事をいい事
に、自らの欲望を満たしきるまで私の頭丁部を思う存分、何度も、何度も撫でまわしたい
のですね？」

「・・・・・」

「・・・私は所詮はロボット。人間様の欲望をかなえるために作られた、ただの機械人形。
人間には、たとえそれがどれほどイヤな人間であっても逆らう事は許されないのです。さ
あ、そのおそらく滅菌消毒をしてないであろう手で、存分に欲望を満たせばいいのです。
お撫で下さい、さあ。私は抵抗しません。さあ」

「もういいから帰れえええええええええええええええええええっ！！！」



＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿