また明日・・・ 投稿者:NTTT
「でも・・・私・・・藤田さんのために・・・」
「それが余計だって言ってんだろ!!」




気が付くと、いつかの公園に来ていました


・・・楽しそうにボールで遊んでいる子供たち

・・・子供を抱いたお母さん

・・・並んで歩くカップル


私には・・・今は・・・誰も

そして・・・これからも・・・


近くのベンチに、目を細めて日向ぼっこをしているらしいお爺さんがいます

あのお爺さんには、きっとご家族がいるのでしょう

目を細めた顔は、なにか満足そうにみえます

きっと、頑張ってきた人の顔です


私は、おばあさんになった時、きっと、あんな顔は、できないでしょう

それどころか、きっと、おばあさんにも・・・

私は、このまま・・・


「嬢ちゃん!!!」


お爺さんの目がかっと開かれて、私は思わずその方向を見ました

視界いっぱいに、ボールが飛んで来て

あっ!!




・・・ぽとり




「くらあっ!!気をつけんかい!!怪我するとこじゃったぞ!!!」
「ご、ごめんなさい〜」


見られて、しまいました

逃げたいのに、お爺さんの鋭い目は、私から離れてくれません

近くで見ると、すいこまれそうな、光を放っていそうな、そんな目でした

子供たちが行ってしまうと、お爺さんは私をじっと見つめました

姿勢の良い、背の高い人でした


「嬢ちゃん、ちょっと座らんかの」


少し目を細めたお爺さんの顔は、なぜか先ほどと違い、優しそうでした




「いや、わしも長いこと生きてきとるが、初めてじゃよ。嬢ちゃん」


屈託なく笑ってくれました


「まあ、世の中には『本物』もたまにはおるということじゃな。なにやら思いつめた様子
じゃったから気をつけとったんじゃが、いや、面白いものを見せてもらったわい」


『面白い』と言われたのは、二度目でした


「ん?どうしたのかの?さっきも思いつめた顔をしとったが、あんた、ひょっとして、その
『力』で、悩んどるんじゃあるまいの?」


なんとなく、藤田さんが年をとったら、こんなお爺さんになりそうな気がしました






「ふむ・・・実はわしのよく知ってる人にも、嬢ちゃんみたいに不思議な事をする人がおっ
ての・・・まあ、性格も災いしてか、なかなか友達もできんで、周りは苦労したもんじゃ」

「じゃがの、あきらめてはいかん。あきらめなければ、いいこともあるもんなんじゃ。なぜ
かその人に興味を持った者がおっての、今では仲良うしとる。おかげで友達も増えそうで
の」

「嬢ちゃんにもそういう人がおるんなら、大事にせんといかんぞ。不思議、結構ではない
か。魅力というやつじゃ。男なんぞ、単純じゃからの、嬢ちゃんがしおらしく謝ってしまえ
ば、ほれ、イチコロというやつよ。別嬪さんにしおらしくされて許さんような男なぞ、おりゃ
あせんて」

「どれ、手を見せてみぃ・・・ふうむ、嬢ちゃん、これが生命線といっての、嬢ちゃんのは長
生きの相じゃ・・・おお、結婚線も出とるぞ、幸せなことじゃのう・・・こら、笑わんでもよかろ
う。わしの手相占いはあたるんじゃぞ。ちゃんと師匠がおるんじゃからの・・・」




いつのまにか、夕方になっていました



「嬢ちゃん、わしは仕事が休みの時は、大抵ここにおる。また悩む事でもあれば、来るが
よかろ。まあ、別になくとも来てくれれば嬉しいがの・・・ひゃっひゃっ」


明日、そう、明日、藤田さんを連れてこようと、思いました

あきらめなければ、きっと、来てくれます


「ほうか、では、また明日の」







・・・はい、また明日・・・






_____________________________

ううむ、我ながら不思議なカップリングだ・・・・