「綾香って、ニューヨークで暮らしてたんだよな」

「ええ、そうよ。懐かしいわね・・・また行ってみたいな」

「そんなにいいとこだったのか？」

「まあね。食べ物もおいしかったし」

「ふうん・・・」

「ま、こっちのもまあ、そんなにマズかないけど・・・あのエンパイア・ステート・ビルディン
グのとこで食べたタコヤキの味は忘れられないわね・・・」

「タコヤキ！？ニューヨークにもあるのか？」

「あるわよ！！馬鹿にしないでよ、ニューヨークはなんでもあるんだから！！」

「ふうん・・・」

「思い出すわね。エンパイア・ステート・ビルディングの展望台には、神様がまつってあっ
てね・・・それがまるでキューピーさんみたいなのよ。みんなその頭を撫でていってね、ホ
ント、懐かしいわ・・・」

「へぇ・・・俺も見てみたいな」

「あ、でも、結構怖いとこなのよ。地下鉄なんかもいりくんでて、浩之じゃ迷子になっちゃう
かもね」

「そうなのか？」

「そうよ。ホームレスも多かったし、動物園の前とかにはいっぱいいてね、さすが人種のる
つぼって感じだったわ」

「じゃあ、黒人とかもいっぱいいたんだ？」

「うーん、うちは場所がよかったのか知らないけど、日系人ばっかりの地域だったみた
い。でも金髪の日系人とか、結構いたわよ」

「そうか・・・」

「うん、野球も結構盛んでさ、あたしもそれで覚えたの。地元のチームが優勝した時は、
川に飛び込む人とかいて、大変だったのよ」

「へぇ、すごいな」

「でしょ？  ああ、自由の女神に、もう一回会いたいなあ・・・」

「行ったのか？」

「真近で見たわよ！！  縞の服きて、太鼓たたいててね、あれを見た時、ちょっと感動したわ
よ・・・ちょっと、ワレ、肩あたったやないか！気ぃつけんかい、ボケ！！」

「あ、綾香・・・」

「あっと、ゴメン。今でもついついニューヨーク訛りが出ちゃうのよ、あ、ちょっとイヤミだっ
たかな、えへ」


・・・騙されてるぞ、綾香・・・


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