○道場(午前) 窓の格子から日が差し込んでいる。正座して合対している道着姿の坂下と謎の男 (スーツ)。男と坂下のちょうど中間に、脹らんだ封筒が一枚。男、封筒を坂下の方 に、押し進める 男:(穏やかに)これで、松原葵の腕を、折ってもらいたい 坂下、封筒を取り上げて、中を覗く。中にはかなりの額の紙幣。坂下、封筒と男を見 比べて、しばし不思議そうに考え込む 男:不承知ですか・・・ 男、ゆらりと立ち上がる。かなり鍛えた者の動き。坂下、意を決して男を「きっ」と見上 げる 坂下:いや、承知しました。 男:そうですか。では、この事は、くれぐれも御内密に・・・ 男、一礼をして、去っていく。坂下、持っていた封筒を床に置き、しばらく見つめた後、 立ち上がって道場の奥へ向かう。奥の扉を開けて出て行く坂下 ○座敷(道場奥) 坂下、電話の受話器を持って話しかけている 坂下:もしもし?葵、いったいどうなってるのよ!! わずかに重ねるようにオープニング曲入ってくる タイトル ○路地裏(昼前) 重そうなポリタンクを二つ、両の腕に下げてすたすたと歩くロングヘアの少女の後ろ 姿(ジーンズ・刺繍入り黒のジャケット)。やがて廃屋めいたビルの裏口で立ち止ま る。地面にタンクを降ろし、首をこきこきした後、ポケットを探って鍵を取り出す 浩之(声のみ):綾香! 振り向いた顔は、確かに綾香である 綾香:あら、浩之じゃない。それに、葵も・・・ 浩之と葵が立っている。葵、ぴょこんと頭を下げる 葵:お久しぶりです、綾香さん。 綾香:ホント、久しぶりね。今日はどうしたの?(いたずらっぽく)ああ、エクストリーム も近いから、敵情視察ってわけ? 葵:(首を振って)違うんです。今日は、綾香さんと芹香さんに相談したい事があって・・・ 綾香:あたしと姉さんに? 浩之:ああ。なんか最近、二人で探偵かなんかやってるって聞いたもんだからさ・・・ 綾香:『探偵』なんかじゃないわよ!ただのコンサルタントだって!! 浩之:だから、そのコンサルタントに相談したい事があんだよ! 綾香:(肩をすぼめて)そいじゃ、まあ、ついてらっしゃい。言っとくけど、金取るわよ。 あたし達、商売でやってるんだから・・・最近は、灯油代だって馬鹿にならない んだからね! 綾香、鍵を開けて建物の中に入っていく。入りしなに首だけ振り向いて 綾香:そこの灯油、持ってきてくれる?肩こってんのよ。 浩之と葵、ポリタンクを一つづつ持って、扉の中に消えていく ○建物内(階段) 薄暗い中、老朽化してひびの入った階段を上っていく三人。壁もかなり痛んでいる 浩之:でも、自活してるって、ホントだったんだな・・・ 綾香:それが条件だからね。まあ、二年ちょっとの辛抱だから。 葵:二年? 綾香:そう。二年間自活していけたら、あたしも姉さんも晴れて自由の身ってやつで、 姉さんは本格的に魔術の研究やらせて貰えて、あたしは武者修業に行けるの よ。 浩之:(見上げて)でも、こんな所で本当に商売なんか、できるのか? 綾香:今でも結構、お客は来るんだから。姉さんの占い、結構繁盛してんのよ。それ にね、なんせ家賃がただ同然なのよ、このビル。 浩之:(見回しながら)こんなビルでも、結構取られるんじゃないのか?オフィス街にも 近いぜ。 綾香:それがね、あたし達くらいしか借り手がいないの。『出る』からね、ふふ・・・ 葵:えっ!ほ、本当ですか・・・(青ざめる) 綾香:大丈夫よ、姉さんがよくお説教したから、今じゃすっかりおとなしいもんよ・・・ほ ら、ここがあたし達の事務所。姉さーん、お客よーー!! 周りの情景とは不釣り合いに磨かれたすりガラスのドアには、ステンシル文字で 『Kurusugawa Psychic Consultant』と描かれている ○事務所(来栖川心霊コンサルタント)内 整然と落ち着いた雰囲気の事務所内。所長の芹香が黒いローブ姿で傷がそこかしこ に入った木製の椅子に座り、パイプ椅子の浩之、葵と年代物のテーブルを挟んで向 かい合っている。 芹香の背後には、これも古びた木製の本棚が並び、どれも心霊関係の本で埋められ ている。傍らの石油ストーブには、しゃがんで手を温める綾香と黒猫一匹。ストーブの 上には湯気を吹くヤカン 綾香:(手をこすりながら)で、好恵にはホントに見覚えなかったのね、その男? 葵:はい。初めて見た相手だって、言ってました。 綾香:ふうん・・・後で好恵に聞いて似顔絵でも描くか・・・好恵も一緒に連れて来りゃ いいのに・・・ 浩之:そんな事しちゃマズいだろ。裏切ったと思われたらどうすんだよ! 綾香:どうせ裏切ってんだから、別にいいじゃない! 芹香:(綾香の方を物言いたげに見る)・・・・ 綾香:ああ、そうね。好恵が裏切ったってバレたら、別な奴が頼まれて、ホントに葵の 腕折りに来るかもしれないわけね。好恵もなかなか知恵が回るじゃない。 葵:それに、その男の人、坂下先輩から見てもかなり強い人みたいで、報復に来られ たら厄介そうだって事でした。 綾香:好恵が手こずりそうな相手ねぇ・・・だったら、そいつが自分でやりゃいいのに・・・ 浩之:馬鹿な事言ってんじゃねえ!! 綾香:だって、不思議に思わない?わざわざ人に頼んで、それも好恵に・・・(いきなり 立ち上がって)そっか!!そういうことなのよ!! 芹香:(不思議そうに綾香を見る)・・・・ 綾香:(芹香に向かって)つまりね、そいつも頼まれた奴なのよ。もしも葵に恨みがあ るんなら、直接自分でやるだろうし、なにより、好恵と葵の仲を知らないわけな いでしょ。そうでなきゃ、好恵に頼むわけないわよ。 浩之:そうだよな・・・なんだかんだ言っても、坂下はスパーにも付き合ってくれてるし、こ の前のエクストリームでも、葵ちゃんのセコンドについてくれたしなあ・・・ 綾香:(浩之の方を向いて)でしょ。だから、誰か葵に恨みがある奴がいて、そいつが 男を使って好恵に頼んだってわけよ。 浩之:でもなあ・・・そうなると、その男に頼んだ奴ってのも、やっぱり葵ちゃんと坂下 の関係を知らないって事になるぜ?格闘技関係者じゃなしに、葵ちゃんに恨み を抱いてる奴かあ・・・心当たり、ないかな、葵ちゃん? 葵、うなだれている 葵:そんな・・・私・・・人に・・・恨みなんて・・・ 芹香、椅子から立ち上がり、机をまわって葵の横に。やさしく葵の頭を撫でて、芹香 の方を向く 綾香:はいはい、調べてみるわよ。まずは、好恵からその男の特徴を聞いてみないと ね・・・荒っぽい事になんなきゃいいけど・・・ 浩之:うーん・・・坂下が苦戦しそうな相手だっていうしなあ・・・ 綾香:そういう意味じゃなくって、あたしも葵も、エクストリームが近いから、あんまりゴ タゴタ起こしたくないのよ。一応、健全な青少年の大会なんだから。とりあえず、 葵、正式に依頼って事で、いいわね? 葵:(顔を上げて)はい、お願いします・・・ 浩之:マジに金取るのかよ! 綾香:大丈夫だって。出世払いって事で、今度の大会の賞金からさっぴくから。(葵を 向いて)今のあんたの実力なら、3位までなら、確実だしね。 浩之:(綾香に向かって)その前にお前にあたったら、どうすんだよ? 綾香:(浩之に)今年っから、あたしはブロックを別にするから、決勝まで行かなきゃ葵 とはあたんないのよ。チャンピオンの特権、知ってるでしょ? 浩之:ああ(ぽん)、今年からチャンピオンは自由にブロックを選べるんだよな。 綾香:そゆこと。前回前々会と、陰で賭け屋が横行したから、上位の人間にある程度 の自由性が貰える事になったのよ。あたしは一番最後に、好きなブロックでシー ド権貰えばいいわけ。 浩之:なるほどな。最後まで決勝までの組み合わせがわかんないってわけだ。 綾香:そ。だから、決勝まで勝ち上がってきなさいよ、葵。心配事の方は、あたしがな んとかしてあげるから。 葵:ありがとうございます。(頭を下げる) 綾香:じゃあ、早速好恵のとこに行ってみなくちゃね・・・ 芹香、綾香のセリフの間に、綾香のそばに近づいている。綾香、気付いて芹香を見る 綾香:えっ、姉さんも行くの!?ま、姉さんがいた方が、なにかと便利だし、二人で行 きますかね。(浩之に)とりあえず、あんたは葵についててあげなさいよ。その 男が他にも頼んでないとも限らないしね。 浩之:おう、任せとけ。 綾香:それじゃ、セバスに送ってって貰いますか。ええっと、携帯、携帯と・・・ 綾香、服のポケットを探って、携帯を探し始める ○道場(昼) 坂下と芹香、スケッチブックを持った綾香、向かい合って、正座。綾香はなに やら熱心にスケッチブックにペンを走らせている 綾香:できたーっ!!ねえ、こんな感じ? 綾香、坂下にスケッチブックを見せる。まるで子供の落書き。 坂下:全然似てないわよっ!!もういい!!あたしが描く!! 綾香:あんたの絵心のなさは、あたしだって知ってるわよ!!(傍らの芹香を向い て)・・・でも、姉さんだって、似たようなもんだしねえ・・・セリオを連れてくりゃよ かった・・・ 坂下:へぇー!!あの娘、絵なんか描けるの? 綾香:馬鹿にしないでよ!!うちのヒット製品なんだから!! 芹香、綾香の服の裾をひっぱる 綾香:ん?なに、姉さん? 芹香、ローブの中に手を引っ込め、何やらごそごそした後、小ぶりな円錐形のペンダン トを取り出す。二人の見ている前で、スケッチブックの白紙のページを広げ、左手でペ ンダントの鎖を持って、スケッチブックの上にペンダントをぶら下げる。振り子のように 揺れていたペンダントの揺れが収まると、右の掌を坂下にさしだす 綾香:(坂下に)姉さんの手を握って、目をつぶってその男の事をよーく思い出して。 坂下、綾香の言う通りにすると、芹香、目をつぶる。綾香、芹香がぶら下げているペンダントの先を揺らさないように慎重にひねると、円錐形のペンダントの先から細かい 砂が細い線となって、スケッチブックの上にこぼれ落ちる。見ているうちに、ペンダント は、前後左右に揺れだす。こぼれ落ちる砂の線は、白紙のスケッチブックの上に、 はっきりとした形を描きだす。やがて砂が全部こぼれ落ちて、芹香、目を開く 綾香:好恵、もういいわよ。 坂下、目を開いて、床の上のスケッチブックに描かれた模様を、見つめる 綾香:どう?見覚えない? ○回想 道場でゆらりと立ち上がる男。そのスーツの襟に、バッジが光る ○道場 坂下:そう、このマークのバッジだったわ・・・うん、間違いない・・・ 綾香:バッジねえ・・・どっかで見たことあるような・・・あっ!! 坂下:何!?思い出したの? 綾香:ニュース番組でね・・・こりゃ・・・えらいことだわ・・・ ○商店街(昼過ぎ) どこかへ向かう途中であろうか、にぎやかな街の喧騒の中、街路の端で携帯(PHS) を片手に声を荒げる浩之 浩之:『緑葉会』って、そんな暴力団なんかに葵ちゃんが狙われる理由なんて、わか るわけねーだろーがっ!!とにかく、これから葵ちゃんのとこに行くから・・・手紙 だよ、手紙が来たんだ、だから、葵ちゃんのところに、てー、がー、みー、って・・・ ○事務所(来栖川心霊コンサルタント)内(午後) テーブルの上に一通の封筒が置かれている。封筒の宛名は、『松原 葵様』。来栖川 姉妹、浩之、葵がテーブルの周りに立って、それを見下ろしている 綾香:家に帰ったら、玄関のポストに入ってたのね。 葵:はい。 綾香、封筒をつまみ上げて、裏表を確かめる 綾香:直接ポストに放り込まれてて、差出人はわからずと・・・ 綾香、封筒から紙片をひっぱり出す。たたまれて入っていたそれを、広げる 綾香:・・・松原、葵様・・・貴殿を狙うものに心あたりあり・・・今夜10時、埠頭の倉庫 前で待つ・・・ふぅん・・・葵、行くつもり? 葵:行ってみようと、思います。 浩之:葵ちゃん!! 葵:私、知りたいんです。一体誰が、坂下先輩に頼んでまで、私の腕を折ろうとしてる のか。何故、そこまで私が恨まれなくちゃならないのか、どうしても、知りたいんで す!! 綾香:言っとくけど、罠よ。 芹香:・・・・(うなずく) 葵:わかってます。でも・・・ 綾香、ためいきの後、傍らの芹香を見る。芹香、再びうなずく 綾香:はいはい、なら、あたしも行ったげるわよ。 葵:綾香さん!! 綾香:だって、正式に依頼を受けちゃったわけだし、仕事だからね。最後まで面相見 るわよ。にしても、ふに落ちないのよね・・・早すぎるわ。 浩之:早すぎる? 綾香:だってね、好恵んとこに謎の男が来たのが、今朝。そいで、あんた達がここから 帰った時には、もう誘いの手紙がポストに入ってる。って事はよ、好恵が引き受 けない、いや、裏切るって、最初からわかってたみたいじゃない。 浩之:そういや、そうだな・・・ 綾香:だとしたら、可能性は二つくらいね・・・一つ、好恵が見張られてる。二つ、あん た達が見張られてる。 浩之:でも、坂下は電話を掛けた以外は、何もしてないはずだぜ。それに、俺達もここ へ来る以外は何もしてないし・・・別に葵ちゃんがお前に会いに来るのは、不思 議でもなんでもないだろ? 綾香:だから、ふに落ちないのよ・・・とりあえず、セリオを好恵のとこに行かせて、電 話が盗聴されてないか調べてみましょ。それに、相手が好恵が裏切った事を 知ってるんだったら、もう遠慮はいらないだろうし、好恵にも手伝ってもらって も、いいかもね・・・ ○埠頭(夜) 遠くで船の汽笛が聞こえる。街灯に照らされた部分だけが切り取ったように白い輪を 作る中、用心深く足音を立てないように歩く三人。葵、綾香、坂下である 綾香:(小声)それで、盗聴機はなかったのね? 坂下:(小声)セリオがすみからすみまで調べてくれたわよ。ついでに掃除もしてってく れて、大助かりよ。 綾香:(小声)うーん・・・やっぱり、ふに落ちないわねえ・・・なんか、騙されてるような 気が・・・ 葵:(小声)しっ!誰かいます。 街灯の光の輪の中に立つ一つの影 綾香:葵を呼び出したのは、あんた? 影、それに答えず、片手の指を鳴らす。とたんに暗がりから出てくる黒づくめの集団。 中には、ヌンチャクや昆を持ったものもいる 綾香:やっぱりね。 坂下:中央の奴、間違いないわ。今朝来た奴よ。 綾香:じゃ、あいつは私が貰うから、あんたは葵と残りをお願いね。 坂下:馬鹿言わないでよ!すげー多いわよ!! 綾香:すぐに片づけるから、それまでお願い(ウインク)。 葵:来ます!! 綾香、すっと飛び出て、やって来る先頭集団をいなし、一人を壁に叩きつけ、ちょうど 男の正面に陣取る。満面の笑み 綾香:お初に〜! 坂下、襲ってくる相手の手から昆を取り上げ、集団相手に、突き、なぎ払う。葵はそれ に合わせて坂下と背中合わせになり、二人で集団の中央に切り込んでいく 葵:先輩、この人達、拳法使いです!! 坂下:見りゃわかるわよ!! 綾香、じりじりと間合いを詰める。男、上体をかがめると同時に、間合いを詰め、顔面 に貫手。綾香が払うと、もう片方の腕がその関節を取ろうとする。それを掴む綾香。か らみあうような互いの手の動きは、次第にスピードを増していき、中国拳法の栽手の パターン(トラッピング)へと変化していく 坂下、四方から襲ってくる相手を、昆を振り回して叩く。葵は坂下の背後で体を地面 すれすれにかがめ、足を払いながら、坂下にあわせて移動。だんだん、集団が間合 いを取り始める。坂下の昆にヌンチャクをからめて止めようとする相手を、葵、滑り込 むようにしてローキック。ヌンチャクをからめたまま、昆を振り回し続ける坂下 坂下:綾香!まだなの!! 綾香と男、ハイスピードの栽手の攻防。綾香が男の両腕をがっちり止めたその時、男 の肘がカウンターで綾香の懐にもぐりこむ。吹き飛ぶ綾香 ○埠頭(遠景) カメラのファインダー内。闘う三人が映し出されている 声:何をしとるのかの? 振り向いたカメラのファインダーに、セバスチャンの顔が映る ○埠頭 坂下、葵が綾香と男の間に割って入っている。昆の間合いを警戒して下がる男。綾 香、胸を押さえて立ち上がる。余裕の笑み 綾香:大丈夫。自分から飛んだから、それほど効いてないわ。 坂下:だったら、早いとこ片づけてよ! 綾香、進み出る 綾香:さて、あんたのパターンは、大体わかったわ。もう一回、やりましょ。 笑みを浮かべながら、間合いを詰めていく綾香。じりじりと下がる男。遠くからサイレ ンの音がかぶさる。サイレン、だんだん大きくなっていく 坂下:げっ、警察よ!! 男、黒づくめの集団、共にすばやく逃げ去っていく ○遠景 パトカーがやって来て、停車する。降りて来たふたりの警官が、釣り糸を垂れている 二人の人物に何やら質問した後、再びパトカーに乗って去っていく。二人、立ち上 がって倉庫の陰へと移動。しばらくした後、倉庫の陰から一台のリムジンが出て、走 り去る ○車内 前部座席の二人。セバスチャンと藤田浩之である。浩之、バックシートを覗く 浩之:おい、もういいぜ バックシートの床には、綾香、坂下、葵が折り重なるようにして身を伏せている 綾香:ちょっと、この足誰のなのよ!痛いじゃない!! 葵:それ、私、私のです。痛たた・・・ 坂下:重い〜! しばらくして、三人の姿がバックシートに並ぶ 綾香:警察を呼ぶなんて、気が利くじゃない 浩之:俺達じゃない。俺達は、先輩が『悪い予感がする』って言うから、急いで来たん だよ・・・実際、いいタイミングだったぜ。 綾香:さすが姉さん・・・でも、と、言う事は・・・ 浩之:ん? 綾香:なんとなくだけど、わかってきたわ・・・なるほどね・・・ 葵:綾香さん、なにかわかったんですか!! 綾香:まあね・・・あの人数、相手が三人だって、前もってわかってた人数なのよ・・・で も、調査がちょっとばかり必要ね・・・さっきの連中、一人でも捕まえときゃよかっ た。 セバスチャン:一人でよろしいのでしたら、トランクに入っておりますぞ。 坂下:ええっ!! セバスチャン:ビデオカメラを持った怪しい奴がおりましたのでな、捕まえてトランクに 押し込めておきましたわ。 綾香:ビデオカメラ・・・やっぱりね。 坂下:何?どういう事よ!! 綾香:後で説明したげるわよ。とりあえず、お風呂入んなきゃ。汗びっしょり。 葵:でも、一体あの人達、何だったんでしょう? 綾香:トランクの奴を調べれば、すぐわかるわよ。 夜の道を、リムジンが走り去っていく ○街路(翌朝) 路地裏に駐車した黒のリムジン。後部座席には芹香。芹香、車の窓越しに正面の建 物を眺める。指先で宙に複雑な形を描き、目を閉じる ○暴力団『緑葉会』事務所 事務所の奥のドアをぶちやぶるようにして、組長とおぼしき男が転がり出てくる。驚く 組員。その中に、「男」の姿も見られる 組長:た、たす、たす・・・・ 組長が指差したドアから、煙のような物体が続々と事務所に入ってくる(SFX使用)。 煙の中に、いくつもの顔が浮かんでは消える。パニックを起こす組員。一人が日本刀 で斬りかかるが、効果がない。何人かが、銃を取りだし、撃ち始める。煙の中の顔 が、笑い出す ○街路 リムジンの運転席。セバスチャンが見かけにそぐわない可愛い携帯に、話し掛けている セバスチャン:はい、緑葉会の事務所から発砲音がしましてな・・・わしらも怖ぅて、早 う取り締まって貰えませんかのう・・・ ○拳法道場『緑聖会館』前 通りには人影がなく、西部劇の街を思わせる。大通りの突き当たりにある拳法道場に向かって歩いていく三人の後ろ姿。一人は、昆を持っている(坂下) 坂下:まさか、あんたを狙ってたとはねぇ・・・ 綾香:正確には、あたしと葵の両方なんだけどね。 坂下:葵が狙われれば、あたしが動いて、あたしが動けば、あんたも動く。雑誌の記 事にでもできれば、不祥事って事で、大会参加取り消しかぁ・・・よく考えたもんね。 綾香:前回のチャンピオンと優勝候補の一角が崩れることが前もってわかってれば、 賭け屋の暴力団もかなり有利なわけよ。 坂下:その上、自分とこの手下の道場からチャンピオンが出る可能性も高いって事な ら、なおさら不参加に追い込みたいでしょうしね。 葵:・・・許せません・・・ 坂下:まあ、あんたらみたいなフリーの格闘家には、道場経営者の気持ちは、わかん ないわよねえ・・・ところで、芹香さんの方、大丈夫なの? 綾香:大丈夫よ!本気の姉さんに勝てる人なんて、いないって!! 坂下:ひょっとして・・・ 綾香:そう、そのまさか。今頃、えらいことになってるわよ・・・ 三人、道場の玄関前に立ち、門を見上げる。 坂下:さて、このお金を叩き付けて、宣戦布告と行きますか(前日の封筒を取り出 す)・・・ 綾香:ダメよ!!それはあたし達で三等分するんだから!! 葵:えええっ!! 綾香:だってよ、今回のことではあたしも姉さんもあんたから依頼料取るわけにはい かないじゃない!なんせ、あたしも当事者だったんだから!! 葵:・・・でも・・・ 綾香:(睨む)あんた、あたしと姉さんに只働きしろっての? 葵:い、いえ・・・ 綾香:そういうことだから、それ、しまっといてね、好恵。 坂下:・・・せこ・・・ 綾香:なんか言った? 坂下:いや、何も・・・ 綾香:さて、行くわよ。とりあえず、名目上は『技術交流』ってことでいくんだから、あん まり無茶苦茶しちゃダメよ。 坂下:あんたが一番心配なんだけどね・・・ 綾香:拳法対策は昨日ちゃんと教えといたから、大丈夫よね。さあ、行くわよ! 視点、だんだん上方に移動。俯瞰状態になった時点で 三人:たのもーう!!! エンドマーク __________________________________ はじめてのシナリオ形式 ううむ・・・シナリオ形式にしたら、かえって読みにくいような・・・