正調・長○の花見 投稿者:NTTT
どうも、NTTTでございます。

さて、前に投稿致しました「長○の花見」ですが、「オチがわからん」という意見、多数。

実際、オチになっておりません。苦し紛れで桜の咲き方にかけただけのものでした
(しかも、かかってないの、全然)。わからないのが当たり前。

読んで下さった方々、誠に申し訳ございません。見切り発車で書いてる欠点が、あり
ありと出てしまいました。以後、気を付けますので、何卒、勘弁。

ので、新たにオチだけ作り直しました。





えェー、昔っから、『花は桜木、人は武士』なんて申しまして、なんですな、桜ってェの
は、一種、潔さの象徴みたいな所が、あったようで。やっぱり、あの、花びらが風に吹
かれて


ひらひら〜

              ひらひら〜


ってなとこが、世の無常なんてェ物を、感じさせるんでございますかねェ。おや、前の
席のサラリーマン風のお兄さん、妙に納得してるようですが・・・ああ、あんたもヒラな
んですか、しょうがねえなあ、こりゃあ・・・


さて、桜というのは、実は昔は田んぼの近くに植えてたらしい。『さくら』って言葉、
『さ・くら』ってな感じで二つに分けて読んでたそうで、『田んぼの神様』って意味だって、
前にテレビで偉い先生がおっしゃってましたが、そうすると、案外、花見ってのは、今
も昔も変わらず、神様をまつるつもりで酒飲んで歌ってドンチャン騒ぎをやらかすの
が、理にかなってるのかも知れませんな・・・


「やあ、マルチ、どうしたんだね。メンテナンスに、不都合でも?」

「違いますー、主任さんに、これを持ってきたんですー」

「ふむ、なになに・・・『たる・・に・・にて・・の・・を・・します・・・』」

「漢字も読んでくださいですー!」

「ええと・・・『来たる3月×日に来栖川邸にて花見の会を催します・・・』」

「はいー、お誘いに来ましたー」

「なるほど、でも、他に誰が来るのかね?」

「はいー、藤田さんや神岸さんや長岡さんや、大勢来るですー」

「3人しか挙げてないじゃないか・・・でも、高校生ばかりの会なら、私よりもセリオを
誘ったらどうだい?」

「セリオさんにはもう渡してますー、それに、皆さんも『主任さんに会ってみたい』そう
なんですー」

「私にかい?」

「はいー、『私みたいなロボットを作った人と、一度会って話してみたい』って、言ってま
したー」

「ははは、苦情でも言われるかな・・・」

「そんなことないですー!皆さん、主任さんを褒めてましたー」

「そうなのかね?」

「はいー、『とっても心が温かな人なんだろう』って、藤田さんも神岸さんもおっしゃっ
て下さいましたー」

「・・・ふぅむ・・・それじゃあ、行かなきゃならんかな・・・でも、未成年ばっかりじゃあ、ア
ルコールは出ないんだろうねえ・・・」

「大丈夫ですー、保護者の大人が一人来ることになってますー」

「ほお、誰だい?」

「主任さんですー」

「・・・なるほど」

「会費は一人二千五百円で、『隠し芸』を用意してくるですー」

「会費まで、取るのか・・・」

「セリオさんのも、お願いするですー」

「・・・しかも、ロボットからまで・・・」


そして、花見の当日。天気もちょうど良い塩梅で、来栖川邸の敷地の桜も、満開になっ
ております。触れなば落ちん満開の、桜の花の屋根の下、ゴザなど四方に敷きまわ
し、料理も御酒も整えて、後は皆様待つばかり・・・


「姉さん、何時になった?」

「・・・・」

「ああ、大体、スケジュール通りね、私達も支度しときましょ。好恵、カラオケセット、も
う運んだの?」

「とっくに配線も終わってるわよ。ステージ設営はセバスチャンさん達が仕上げの飾り付
けをしてくれてるし、料理は葵が全部運んだから、もうこっちはやる事なんにもないわ
よ」

「あっ!忘れてました、坂下先輩!」

「ん?何なの?」

「レミィさんが隠し芸で『通し矢』やるから、的を作っとかなくちゃ・・・」

「げっ、そういやそうだった。行くわよ、葵、セバスチャンさんに道具貸して貰いましょ」

「はい、坂下先輩」

「そういや、あんた、隠し芸でなにやるの?」

「瓦割りです」

「・・・ふう・・・あたしと一緒じゃないの・・・なんか、他に考えないとね・・・」


一方、厨房では、料理の後片付けの真っ最中。まあ、料理上手は片付け上手って事
で、あかりちゃんの号令のもと、忙しく皆立ち働いております・・・


「保科さん、このケチャップ、どこにあったの?」

「・・・知らんなあ、大体、ケチャップなんか、今日の料理に使ったやろか?」

「あの・・・」

「なんや?姫川はん」

「・・・たぶん、レミィさんがそこにおいてあったお鍋に入れてたやつだと思うんです
が・・・」

「Hi!呼びましタか?」

「いや、なんでもないから、そっちは洗いもんしとき・・・あの鍋、回収やな」

「そうだね。良太君、とってきてくれる?」

「おう」

「重いから、理緒ちゃんも一緒に・・・」

「大丈夫だぞ、姉ちゃん。姉ちゃん、よく転ぶから、ここで洗いもの、してろ」

「良太!」

「ははは、言われとるやん」

「もう・・・でも、いいの?私たちだけ、会費、払わなくて・・・」

「ええて、心配せんとき、会計のうちがええて言うてんやから。取れるとこからガッポリ
取っとるから、問題無しや。でも、その分働いてもらうで。会の終わった後の片付け
も、よろしゅう頼むよってに」

「・・・うん」

「ねえねえ、保科さん、このマヨネーズ・・・」


さて、男達がどうしてるかといいますと、やはり料理も出来るわけもなく、さりとてこま
ごました作業もイマイチ向いておりません。結局、力仕事や大雑把な作業ばっかりな
んですな、男ってェのは・・・おっと、男以外も、約一名・・・失礼・・・


「矢島、もうちょっと右だって」

「こっちか?」

「ちょい左。そう、その辺だ、釘でとめといてくれ」

「おう、って、佐藤、ハシゴ揺らすなよ、怖ぇだろーが!」

「ご、ごめん、矢島君」

「ほい、ほい、っと・・・ありゃ、釘がもうねーぞ」

「あっ、じゃあ、あたしが投げたげるから、受け取んなさいよ。そーれぇーっ!!」

「バラのまま投げんなああああっ!!」

「うわ、手を振り回しちゃ危ないって、矢島君」

「セバスのおっちゃん、配線は?」

「ま、こんなもんじゃろ。ほう・・・なかなか奇麗な電飾じゃの」

「今日が晴れでよかったぜ。降水確率が高かったら最初から考え直しだったからな」

「うむ、昨日お嬢様と踊った甲斐があるというものじゃ」

「・・・踊る?先輩と?」

「うむ、雲を吹き散らす踊りというのがあっての、こう、顔に絵具を塗りたくって、太鼓
に合わせて叫びながら・・・」


ようやく準備も整い、さてこれからという頃、来栖川邸の門の前に止まった一台のタク
シー。ドアが開いて降りてきたのは、長瀬主任とセリオ、そして迎えに行ったマルチで
ございます・・・


「あうー、遅くなりましたー」

「まあ、渋滞だったから、しょうがないさ。ん?セリオ、どうした?」

「タクシーの領収書を貰っておきました。どうぞ」

「おお、気が利くなあ、でも、どこで覚えたんだ、そんな事?」

「テレビのニュース番組で見ました」

「おい、ひょっとして役人と企業の脱税やら贈収賄のニュースかね?」

「はわわー、ニュース番組見てるなんて、セリオさんすごいですー」

「・・・入るか・・・」


さて、来栖川家の庭は滅法広い。四季折々の花木を植えた庭園の一隅は、見渡すほ
どの桜の園でございます。マルチとセリオを連れて向かうその先には、どんどん広が
る桜色の雲。植えた人はさぞかし風流な人に違いない。頭もいいに違いない。桜の園
とかけまして、頭のいい人と解く。その心はといいますと、どちらもチェーホフ(知恵豊
富)。なんてェことを申しながら、三人、いや、一人と二体進んでいきますと、やって来
たのは主催者たる芹香嬢と綾香嬢でございます。


「綾香様、芹香様、お久しぶりです」

「ホント、久しぶりね、セリオ。それに、長瀬さんもね」

「いや、今日はどうもお招きに預かりまして・・・」

「・・・・」

「ええ、この通り、セリオも私も元気ですよ」

「さあさあ、早く行きましょ、挨拶は後、後。あ、そうだ、マルチ」

「はいー?」

「神岸さん、怒ってたわよ。『掃除を手伝って欲しかったのにー』って」

「あうー、ごめんなさいですー」

「ふふ・・・嘘、嘘。あんたには迎えに行ってもらってたんだから、誰も怒りゃしないわよ」

「もう、ひどいですー」

「・・・・」

「ああ、そうね、皆待ってるんだから、ほら、さっさと来る」

「・・・ところで、どうして二人とも、そんな格好を?」

「ああ、このスーツ?ちょっとね。それより、姉さんのピンクハウス、どう?なかなか似
合うと思わない?」

「ええ、まるで・・・」


長瀬主任達が到着すれば、これでお客が揃ったと、たちまち始まる大宴会。飲めない
人にはジュースとお茶で、飲める人には日本酒、ビール。飲んで騒いで半時すれば、
立派な虎も二、三頭。『百薬の長』と言うけれど、飲めばなるのは虎か蛇。案外、『酒
は百獣の王』なんてェのも、合ってるかもしれません・・・


「おおおおお、凄ェ、凄ェぞおおおおおおおお!!!おい、藤田、なんであのステッキ
宙に浮いてんだ?さっき確かめた時は、糸もなんにも付いてなかったぞ!!」

「それが琴音ちゃんの凄いところなんだよ。あのトリックは、俺以外分かんねえだろう
な・・・」

「おまえ、知ってんの!?なあ、教えてくれよー、藤田よおー」

「絡むなよ、コイツ。雅史、こいつをなんとか、って、雅史、どこいったんだ?」

「佐藤君ならトイレ行って吐いとるわ。矢島君がガンガン飲ませとったからな」

「こら、矢島、少しは考えて飲めよ!!」

「ええやない、無礼講なんやから。ほれ、藤田君ももう一杯」

「い、いや、俺は・・・」

「ぬあーーーにぃいーーーーーーー!?」

「い、いえ、頂きます・・・」

「なあ、うちにも教えてーなー、なんであのステッキ、宙に浮いとんの?ねえ、教え
たってーなー」

「あーっ!!あんた、何してんのよ、ヒロから離れなさいって!!大体、次はあたし達の
出番でしょうが!!」

「はへ?そうやったか」

「ほら、さっさと行くわよ、って、何?それ?」

「ハリセンやけど」

「ちょっと、聞いてないわよ!!」

「あんたのボケはイマイチ軽いんや。これで突っこまな、客が引いてまう。ほな、行く
で。ちゃんと台本読んで来たんやろな?今日のうちは、容赦ないでぇ〜〜」

「聞いてないったら聞いてないわよおおおおおおおおおおお!!!」



「葵、頑張ったわね」

「ありがとうございます、綾香さん。でも、結局12枚が限界でした」

「あがり症のあんたが皆の前でそれだけやれれば、上出来じゃない」

「そうそう、おかげであたしは目立たないこと、目立たないこと・・・」

「す、すいません、坂下先輩。まさか、同じ事を考えていたなんて知らなくて・・・」

「ああ、だから歌なんか歌ったんだあ・・・」

「でも、素敵でした、坂下先輩。あの、『すみれのはーなー、咲くー頃ー』って、なんて
歌なんですか?」

「あんたは知らなくていいのっ!!しょうがないじゃない、とっさにそれしか出てこな
かったんだから・・・」

「・・・まさか、ヅカとはねえ・・・」

「・・・ヅカ?」

「だからあんたは知らなくていいのっ!!大体、綾香、あんた、スーツなんか着て、何
するつもりなのよ?」

「ふふ・・・姉さんと組むのよ」

「はあ????」

「だからね・・・姉さん、来てちょうだい。あのね、姉さんの口のとこに、こう、線を引い
て・・・」

「ひょっとして、芹香さんを、抱っこ・・・」

「ハアイ、ワタシ、セリカチャンデス」

「わあ、綾香さん、うまいですねえ」

「・・・・(こくこく)」

「だめよ、姉さん。背中を一回なでたら「こくこく」で、二回で「ふるふる」なんだから。
ちゃんとおさらいしとくわよ・・・」



「レミィちゃん、お疲れ様」

「ニャハハハハ、命中は一回だけだっタヨ、アカリ」

「それでも凄かったよね、良太」

「おう、すげーぞ」

「リョータ、もっと食べるヨ。食べないト大きくなれないネ」

「あ、良太君、これ、食べる?」

「おう」

「おいしい?」

「うん、おいしいぞ。おいしい」

「そういえバ、アカリ、リオ、「隠しゲイ」、やらないノ?」

「理緒ちゃん、どうしよう?」

「うん、それじゃあ、次くらいにやろっか。藤田君を呼んでくるね」

「Oh!ヒロユキとやるノ?」

「うん、雅史ちゃんと矢島君、それにマルチちゃんも一緒」

「なにするノ?」

「あのね・・・劇なの」

「ワオ!!どんな劇デス?」

「レミィちゃん、最近の映画で、見たことない?『痕』って言うの」

「・・・わからないデス・・・」

「見ればきっとわかるよ。わたしも、行ってこなくちゃ・・・雅史ちゃんにお化粧しないとい
けないし・・・」

「ケショー!?  マサシ!?  Oh!Fantasticデス・・・」



「まあ、お一つどうぞ」

「はっ、男の酌では飲む気がせんわ。手酌でやるわい」

「・・・ひねくれジジイが・・・」

「なんぞ言うたか?」

「・・・いいえ」

「まったく、いい年して嫁は貰わんのか?」

「あんたこそ、年なんだからさっさと引退したらどうです?」

「馬鹿者、まだ現役じゃ」

「口だけは達者なようですね」

「ふん、日がな一日座って機械いじりしとる者には負けんよ」

「昔喧嘩屋だったのが、そんなに自慢ですかねえ・・・」

「・・・あの、機械仕掛けの人形が、そんなに立派な物かよ。人と変わらんではないか」

「人と変わらないから、いいんですよ・・・」

「・・・そうじゃな・・・つまらん事を言うた。まあ、飲め」

「頂きます」

「しかし、なんじゃな、ようできとるわ」

「・・・私達はね、ほんの小さな塊を、こさえただけなんです。それをあの子達は、自分
で少しづつ大きくしていったんですよ・・・」

「なんじゃ?では、お前らの手柄ではないのお、ほっほっ」

「なんとでもどうぞ。私らに出来たのは、そのくらいなんですよ」

「はっ、へっぽこ技術屋が」

「へっぽこで結構。へっぽこでなけりゃ、あの子達は作れませんよ。頭良すぎちゃ、駄
目なんです」

「ふう・・・ところで、お前は、芸はせんのか?」

「あなたは、どうなんです?」

「わしゃ、ただの手伝いよ。まあ、せがまれれば、詩吟のひとくさり、唸ってみせんでも
ないがの」

「私は、今日連れて来たセリオにやってもらいますよ」

「ほう、芸ができるのか?どうせ、あの、データをどうやらこうやらして、インプットとか
した芸ではないのか?」

「まあ、見てて下さいよ。あの子は、表には出さないけれど、確とした『何か』を、持っ
てます」

「・・・ふむ・・・」

「おや、いつのまにか新しい出し物になってる」

「おお、そうじゃな。ほう、あの和服の娘、別嬪じゃの」

「男じゃないんですか?」

「いや、女じゃ、わしの目に狂いはない。死んだ嫁によう似とる・・・ええ女じゃった・・・」



セリオの芸については、私からは何も申しますまい。ただ、その日の佐藤雅史の日記
より、一部抜粋致しましょう・・・



・・・セリオさんの歌は、正確には歌ではなかったのかもしれない。高く、低く調子を変
えて響く、意味を成さない「声」。でも、僕にはそれが、確かに「歌」に聞こえた。悲しげ
で、深く、そして優しい歌だった。皆、ただ黙ってセリオさんの歌を聞いていた。マルチ
ちゃんは、歌が終わった時、泣きながら拍手していた・・・



さて、戦い過ぎて日が暮れて、後はおのおの、いざ帰りなん。総出の後片付けが終
わった頃は、日はとっぷりと暮れております・・・



「さて、それでは我々も帰りますか」

「ああ、ごめんね、セリオ。手伝ってもらっちゃって」

「いえ、おかまいなく、綾香様」

「ねえ、セリオ」

「はい、なんでしょう」

「今日の、あの、「歌」、なんて題名なの?」

「・・・即興ですので、名前はつけておりません」

「セリオ、じゃあ、好きなタイトルをつけるといい。あれは、君の歌なんだから」

「では・・・まだ、つけないでおきましょう。未完成ですから」

「主任さーん、タクシーが来ましたですー」

「おう、それじゃ、行こうか、セリオ。こんど、来栖川エレクトロニクスでも花見をやるか
ら、その時は完成品を聞かせてくれよ」

「はい」

「ふうん・・・その時はあたしも行こうかしら。酔っぱらいのオヤジ連中だけに聞かせる
のは、もったいないし・・・そうだ!いっそのこと、今度の花見は酒抜きにするよう、お
じい様から言ってもらうのも、いいかも・・・」

「いえ、綾香様、それはやめた方がよいかと思います」

「ダメかしら?」

「はい・・・桜には・・・虎がつきものです」




おあとがよろしいようで・・・・

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てなことで、ご勘弁。