簡単な経済学 投稿者:NTTT

「御主人さまー、ご飯ですー」

「おう、マルチ、ご苦労。おおっ、旨そうじゃねえか!上出来だな」

「食べて下さいー」

「うん、旨い。また腕を上げたな、マルチ」

「隠し味に、みりんをちょっと入れましたー」

「よしよし、よくやった。なでなでしてやる」

「あっ・・・(ぽおー)」

・・・ご主人様の手のひらって、とっても不思議です。だって、なでてくれるだけで、わた
しは、とっても幸せな気分になっちゃうんです。大きくて、温かい、手のひら・・・

「ところで、マルチ、もうすぐお前の誕生日なんじゃねーか?」

「はいー、主任さんがわたしを作ってくれた日ですー」

・・・ご主人様、覚えててくれました。嬉しくて、体の中がポカポカしてきちゃいました・・・

「なあ、誕生日なんだしよ、なんか、欲しいもん、ないか?」

・・・わたしの「欲しいもの」って、なんでしょう?そう、欲しいものは、たくさんあります。
前にテレビで見た、音がうるさくなくて夜でも御近所に迷惑をかけない掃除機とか、す
ぐにお洗濯物が乾く乾燥機とか、ご飯がおいしく炊ける炊飯器・・・

・・・でも、ほんとに私が欲しいもの、それは、ご主人様のためにいっぱい働いて、そ
れで・・・

「なあ、何かねえのか?まあ、あんま高いものは、ちょっと難しいけどよ・・・」

「ご主人様」

「ん?何かあるのか、欲しいもの?」

「はいー」

「何だ?」

「あ、あの・・・」

「うん?遠慮すんなよ、水臭せーぞ」

「なでなで、して下さい。その日は、いっぱい、いっぱい、なでなでしてくださいー」

「・・・マルチ・・・」

「ダメですか?」

「まるちいいいいいいいいいいいいいいい!!!」

「ご、ご主人様ああああああああああああ!!!」


ぷしゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううう





「ふーん、それで『なでなで券』をねえ・・・」

「はい、ご主人様、こんなに作ってくれたんですよー、綾香さん」

「・・・たくさんあるわねえ・・・」

「はいー、数えたら500枚ありましたー」

「まだ、使ってないの?」

「昨日、我慢できなくて3枚使っちゃいましたー」

「ふうん・・・ねえ、マルチ」

「なんですか?」

「もしも、もしもよ、その券がなくなったら、マルチ、どうなると思う?」

「えっ!!」

「ひょっとして、その券がなくなっちゃったら、『なでなで』、してくれなくなったりして
ね・・・」

「あ・・・は、はわわー!大変ですー!!」

「・・・ああ、マルチ、なんてかわいそうなの。これから、どうなっちゃうのかしら?」

「どうしましょうですー!!」

「・・・こうなったら、手は一つね・・・」

「どんな手ですか?教えて下さいですー!!!!」



さて、やっと家に着いた。マルチは今日はどんな晩飯を作ってるのかな・・・

ん?ドアが開かねーぞ。鍵は開けたはずだが・・・立て付け悪くなったか?

気合いを入れてと、おりゃああああああああああ!!


どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど


雪崩が襲ってきた。



「御主人様ー、しっかりしてくださいですー」

「う・・・うう・・・はっ!!」

「わあー、気がつきましたー」

「・・・ゆ、夢じゃねえな・・・マルチ、これ、なんだ?」

「『なでなで券』ですー」

「・・・なんでこんなに?」

「コピーしましたー」

「・・・ほう?」

「・・・だって・・・」

「・・・だって?」

「ご主人様が作ってくれたあれだけじゃ、なくなったとき困りますー」

「・・・なるほど、そんなになでなでして欲しいわけだな・・・」

「はいー!」

「よし、なでなでしてやる、頭、出せ」

「はあいー!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・」

「ああっ、ご主人様、痛いですー!愛が感じられないですー!!」

「るせいっ!!これで充分だ!!家中の『なでなで券』、今日中に消化しちゃるうううう
う!!!」

「はわわー、インフレですー、大暴落ですー!!」




______________________________


まあ、小ネタということで・・・