じゃんぐるぴーぷる 投稿者:NTTT


授業がやっと終わった。ふぃーっ、タルかったぜ。さて、帰るか。

おや?校門の所に・・・

あれは・・・芹香先輩・・・じゃねえよな。制服が違う。

ってことは、綾香か・・・先輩を待ってんのかな?



「よお、綾香。久しぶりだな」

「ふ、藤田君、ちょうどよかったわ、来て」

「ん?先輩は?」

「だから来てって言ってんのよ!!姉さんが、姉さんが、大変なのよ!!」

綾香の目は、泣き腫らしたように真っ赤だった。

・・・まさか、先輩に、何か!!!



セバスチャンの車が近くに待たせてあった。来栖川邸への途々、綾香は事情を話して
くれた。

「姉さんが、最近学校を休んでたのは、知ってるでしょ」

・・・知らなかった。最近顔を見ないなとは思っていたが・・・

「それでね、休んでたのは何か実験をするためだったらしいの。薬か、何かそんなも
のを作ってたらしいのよ」

「家の人は、誰も知らなかったのか?」

「あたしは学校が違うし、トレーニングもしてるから、あんまり姉さんと顔を合わせる機
会が少ないのよ。召し使い達はあたし達のすることにはあんまり口を出したりしない
方だし・・・」

「じゃ、じゃあ、セバスチャン、あんたはどうなんだよ!!あんたは先輩を毎日学校へ
送り迎えするのが役目だったんじゃねえのか!!」

「・・・面目ない・・・」

「・・・セバスは昨日帰ってきたばっかりなのよ。ここ何日かお祖父様の命令で、海外へ
行ってたの」

「・・・お嬢様は『一人で学校くらい行けます』と申されましたので、代わりの者も立て
ずにおったのですが・・・このセバスチャン、一生の不覚にございます・・・」

「で、先輩は学校を休んで、今も家に?」

「それが・・・いることはいるんだけど・・・」

「どうしたんだよ、先輩の身に、いったい何が起きたんだ!!!」

「姉さんは・・・森にいるのよ。屋敷の裏手の・・・作った薬を自分で試したのかもしれ
ない・・・召し使い達の何人かが、森の中にいる姉さんを見て騒ぎになって、それで、
あたしも知ったの・・・」



来栖川家の敷地は広い。かっては広大な森林だったそうで、そこを切り開いて屋敷を
建てたのは先輩の祖父の祖父だったそうだ。他にも土地はあったのだが、欧風な雰
囲気があるこの森がよほど気に入ったらしい。そのためか屋敷の裏手には、昔の
ままの森がそのまま残してある。昔は狩りもできたそうだが、いまの会長がそうしたこ
とに興味がないため、年に数回業者が入って最小限の手入れをするくらいなのだと
は、後に綾香から聞いた。今では周辺の土地は開発が進んでいるので、来栖川家の
高い塀の中にこんな原生林があるとは、よほどの人でなければ知らないだろう。

そして、先輩はこの森の中に入っていくのを、最後に目撃されていた。

「この辺か?」

「そう、この辺から森の中に入っていったそうなの。それ以来、屋敷の者は誰も見てい
ないわ」

「先輩が消えてから、何日くらい経つ?」

「今日で、三日目」

「おい!!!」

「しょうがないじゃない!!業者もよんで入ってみたんだけど、どうしても捕まらないの
よ!!!姉さんと親しかったあんたとセバスならって、思って・・・もう、あんたにしか
頼れないの・・・」

「藤田殿、お願い致します。私と綾香様と一緒に、この森に・・・」

「たりめーだっ!!!さっさと行くぞ!!!」


二日の間、何も飲み食いしていなければ、先輩の命にかかわる。

頼む、無事でいてくれ。

神に祈った。



さすが代々守ってきた森だ。昼間だというのに光は点々としかささない。俺達は、懐
中電灯の光を頼りに進んだ。三人とも、ブーツに迷彩服。警備員達の訓練に使ってい
るらしい。物騒な家だ。先頭はセバスチャン。鉈をふるって邪魔になる枝を落としなが
ら進む。

「お、おおっ!!」

「どうしたの、セバス!!」

「あ、あれ、あれをご覧くだされ!!」

セバスチャンの指差した方向は、高い大木の大きな枝だった。

「枝しかねえじゃねーか!!」

「よく見て下され、ほれ、根元の方から垂れ下がっておる、あれを」

「・・・間違いないわ・・・」

そう、見覚えがあった。先輩が実験の時にいつも着ていたローブだ。でも、どうして、
あんなに高い所に?

その答は、すぐにわかった。

ただだらしなく垂れ下がっているだけにみえた黒いローブが、もぞりと動いた。

顔が見えた。

先輩だ。

目が合った。

先輩の口が、開いた。



「うきーっきっきっきっきっきっきっきっきっきっきっきっきっ」

先輩は雄叫びをあげると、木から木へと飛び移り、やがて完全に俺達の前から消えた。



「げ、げ、元気そうじゃない」

「ふむ、そのようですな」

「あほかあああああああああああああああああっ!!!」



4日目/二回目の接触に成功。怪音を発して逃げ去る

5日目/三回目の接触。木の実を頬張っているところを撮影に成功。ドングリが好き  
           らしい

6日目/四回目の接触。出現場所からテリトリーを特定

7日目/五回目。おやつに持ち込んだバナナに興味を示す。が、半径5メートル以内
           には近寄らない様子

8日目/雨のため、接触できず。バナナを一房置いて去る

9日目/昨日のバナナは消えていた。皮を枝の上で見つけ、六回目の接触に成功。
           バナナを用いて半径2メートルまで近づくことに成功

10日目/雨。バナナをえさに罠を仕掛ける

11日目/捕獲成功




そして、18日目

「先輩、どうしてあんなことになっちまったんだ?」

「・・・・」

「ああ、この時期、花粉症の人が多いもんなあ・・・でも、先輩のとこの森だけが原因っ
てわけじゃないだろうし、そんなに責任感じなくったって・・・」

「・・・・」

「ふうん、やっぱり、この辺の人には多いのかあ・・・でも、そういうのはやっぱり医学と
かの科学的な方法で解決した方がいいと思うぜ」

「・・・・(こくこく)」

「うん、それに、自分を実験台にするのは、ホント危ないから、やめた方がいいっ
て・・・そういえば、まだ学校には、来れないのか?」

「・・・・(こくこく)」

「そっか、まあ二本足で歩けないうちは、無理だよなあ・・・じゃ、また来るよ」

「・・・・」

「うん、バナナね、また買ってくるから、それじゃ」



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はあ・・・・

何でこんな話書くかねー、俺。


感想等は、また今度