「藤田さん、上がってお茶でも飲んでいきませんか」 家まで送って帰る別れ際、琴音ちゃんにそう誘われた。 付き合い始めて、もうかなりになるが、琴音ちゃんの家にはまだ上がったことがない。 実際、興味もあった。 「それじゃ、ごちそうになるかな」 琴音ちゃんの部屋は、きれいに片付いていた。不必要なものは、あまり置いていない。 「女の子の部屋」というより、もっと中性的なものを感じた。 俺の部屋とは、大違いだ。 壁にかかっているのは、青を基調にした、イルカの絵。 ラッセンとか、いうやつだ。 二人で、展覧会に行った事がある。 琴音ちゃんが、コーヒーを煎れてくれた。 家にミルもサイフォンもあったのには、ちょっと驚いた。 お母さんが、コーヒー党なのだと、琴音ちゃんは話してくれた。 少し、口元に、笑みが浮かんでいた。 いい、笑みだった。 二人で、いろんな事について、話した。 動物の事(イルカの事がほとんどだったが)。 学校の事(最近、クラスメイトに友達ができたそうだ)。 これまでの事。 そして これからの事。 話し疲れたのか、琴音ちゃんは、少し、眠った。 俺の肩に、頭をもたせかけて。 肩に手を回して、支えた。 ずっと、目が覚めるまで、そうしていた。 肩にかかった重さは、とても優しく、頼りなげにも感じた。 ずっと、目が覚めるまで、そうしていた。 ・・・明日、一緒に、ぬいぐるみを、買おう。 ・・・イルカのが、あればいいな。 この部屋には、不釣り合いかもしれない。 でも、買おう。 これから、琴音ちゃんが、誕生日を、迎えるたびに。 琴音ちゃんに、いい事が、あるたびに。 ずっと、目が覚めるまで、そうしていた。 _________________________________ ううむ、山もオチもない。不調か?俺 −おまけ− 浩「…ごめん、怪我はないか?」 芹「……」 浩「えっ・・・う・・・ウラミハラサデ・・・」