永遠と一瞬 投稿者:NTTT

「やっほー、ヒロ、久しぶり」
「・・・ああ、志保か」
「あんた、久しぶりに会ったってのに、『ああ、志保か』ってのは、ちょっと寂しかない?」
「・・・変わんねえな、お前」
「・・・全く、大の男が日がな一日、公園でひなたぼっこってのは、暗いを通り越して、なんか、悲哀を感じさ
せるわね。リストラおやじみたい」
「・・・あかりから、聞いたのか」
「雅史も心配してたわよ。志保ちゃんネットワークは、健在なんだから」
「・・・そうか・・・」
「ああ、まったくもう!せっかく大学にも奇跡的に合格したんでしょ!もっと、喜びなさいよ、ヤな事、全部忘
れて、パーッと、ほれ、パーッと!!」
「・・・奇跡か・・・」
「そう、奇跡、奇跡、あんたが大学に一発合格するなんて、奇跡以外の何者でもないって!!」
「・・・かもな・・・」
「あああああっ、あんたさあ、なに納得してんのよ!!!ここは怒って、『テメーには言われたくねええ
えっ!!』って、怒る場面でしょ!!!!」
「・・・うまいな、志保」
「・・・ふぅ・・・ね、ねえ、そんなに好きだったの?結局、機械なんじゃない」
「・・・志保」
「・・・どした?ほれ、怒んなさいよ、怒って見せなさいよ!」
「・・・座れよ、志保」
「な、なによ、そんな優しい目しないでよ」
「・・・いいから、座れ」






「なあ、時々想像するんだ。もしもあいつといつまでも一緒に暮らしてたらって」
「・・・・」
「俺が、年取って、じいさんになっても、あいつは、いつまでも、あの姿のままなんだろうなって」
「・・・だって、当たり前じゃない、機械なんだから」
「・・・そうだよな。でも、きっと、俺はあいつを好きだろうな」
「・・・たとえあんたが死んでも、ずっとそのままの姿で、ずうっと、もしかしたら、永遠に、生き・・・いや、生き
てるって言わないわね、機械なんだし」
「それでも、きっと、変わらず、好きだろうって、思うんだ」
「どうしてよ!どうして、そこまで・・・」
「あのな、俺は、あいつの、一瞬が、好きなんだ」
「一瞬?」
「うん・・・あいつはさ、永遠なのかもしれないけど、それでも、一瞬が、あったんだ」
「・・・よく、わかんないわねえ」
「お前さ、永遠にそのままかもしれない機械や、石や、システムや、そういうものを、愛せるか?」
「・・・愛すってのとは、違うわね・・・尊敬とか、好きってなら、言えるかも・・・」
「そうだよな。あいつは、機械だから、その点じゃ、永遠に近いんだろうな」
「だったら!どうして、そこまで」
「でもな、確かに、一瞬があったんだ、あいつには」
「・・・・」
「初めて会った時・・・笑った時・・・泣いた時・・・気絶した時・・・・・・あいつは、そういう一瞬が、ちゃんと、
あったんだ」
「・・・・」
「俺達は、永遠なものは、確かに、愛する事はできないんだろう。でもな、たった一瞬を、死ぬまで覚えて、
永遠に愛していけるような、そんな気がするんだ」
「・・・・」
「こんな事言うの、変か?」
「・・・ううん、でも・・・」
「でも?」
「似合わないわよ。そんな優しい目なんかして、絶対に、似合わないんだから!」
「ほっとけよ!」
「ふっ・・・まあ、そんなら、気が済むまでそこに座ってなさいよ」
「おう」
「ねえ、なんか買ってきたげようか?喉、乾いたでしょ」
「すまねえな」
「も、もう・・・あ、あのね」
「ん?」
「もしも寂しくてたまらなくなったらさ」
「ああ」
「電話して。いつでも来たげるから」
「そうするよ」
「ひ、一晩中だって、付き合ったげるから」
「・・・ふっ・・・」
「い、言っとくけど、飲もうって意味だからね!!」
「当たり前だ」
「じゃ、じゃあ、買って来る。炭酸でいいよね」
「おう」






「志保」
「何」
「ありがとな」
「・・・うん・・・」

__________________________

今日は忙しいので、一作。感想、レスなどはまた今度

−おまけ−

「藤田君、これが我らが来栖川エレクトロニクスの技術力を結集した、夢の車だ!乗れば自動的に目的地
へ連れていってくれる上に、安全運転、おまけに会話の相手までしてくれるんだよ。人工知能搭載だ!さ
あ、乗ってくれ給え!!」
「ご主人様ぁ〜〜〜お乗り下さいですぅ〜〜〜!」
「こら、藤田君、どこへ行く、逃げるんじゃない!逃げるな・・・」