理緒のカーニバル 投稿者:NTTT

注:食事中の人には、おすすめできません



その日、校門のところで、良太に出会った。
「おう、姉ちゃんを待ってんのか?」
良太は、首を左右に振って、「お前を待ってた」と言った。
「俺!?」
「今日、俺の、たんじょうびだ。かーにばる、やる。7時に、家に、来い」
「へぇ、いくつになったんだ?」
良太は、それには答えず、俺に一枚の紙切れを押し付けて、ぷい、とまわれ右して、走っていった。
紙切れには、おそらく良太が書いたのだろう、理緒ちゃんの家までの道順が、ヘタクソに、書いてある。
相変わらず、姉ちゃんに似なくて、愛想の悪い奴だ。
・・・カーニバル、ねぇ・・・
思わず、羽飾りをつけて踊る理緒ちゃんの姿が浮かんだ。
・・・まさかな・・・
さて、何を持って行こうか・・・


結局、グローブを持っていく事にした。やっぱり、子供はスポーツだ。




理緒ちゃんの家は、路地裏を何度も曲がった、特に暗い場所に、ぽつんと建っていた。
まわりの家も、なんとなく、人のいない家という印象を受ける。
こんな寂しい場所に住んでる理緒ちゃんの日常を、ふと、思った。
何か、してやりたかった。
それは、とても傲慢な事なのかもしれない。
それでも、何か、してやりたいと、思った。
玄関の前で、大きく息を吸い、なるべく明るい声に聞こえるように、願った。
「こんにちわーーーーーー」



「ふ、ふっ、藤田君!!!!」
「おっす、お招きに、預かったぜ」

理緒ちゃんは、顔を青くするほど、驚いたようだ。
・・・良太の奴、知らせてなかったな・・・
「ちょ、ちょっと、藤田君、今日は、ダメ、ダメなの!!」
「何言ってんだ、良太の誕生日なんだろ、ほら、ケーキも買ってきたんだぜ」
「りょ、良太が、招んだの!!」
「よお、良太、おめでとさん。来たぜ」
「良太が・・・」

理緒ちゃんは、俺と、良太を、ただ、呆然と、見ていた。
よっぽど驚いたのだろう、少し、震えている。
そんなに、俺に、家に来られたくなかったのだろうか。
理緒ちゃんの心も、なんとなく、わかるような気がした。
良太が、首だけで、「上がれ」と合図している。
・・・今日は、楽しい一日に、しなくちゃな・・・
本気で、思った。




良太が、お茶を運んできた。黙って、俺の前に置く。

・・・相変わらず、笑わねぇなあ・・・
お茶は、妙に苦かった。きっと、安い葉っぱを使ってるのだろう。
理緒ちゃんは、じっとうつむき加減に、俺の手元を見つめている。

なんとか、この重苦しい雰囲気を、壊したかった。
「ほら、良太、プレゼントだ」
グローブの包みを渡そうとして、少し、ふらついた。視界が、回り出す。
「姉ちゃん、今日は、ごちそうだぜ」

良太、笑えるんだな。初めて、見た。


理緒ちゃん、泣いてるのか?










・・・・・・カーニバルの、語源って・・・・・・

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タイトルから先に思いついたため、こういう話になってしまった。
不快感を感じた方、ホント、御免なさい。