「さようなら、保科さん」 「ああ、あかりはん。まだ帰らへんのか?」 「浩之ちゃん、まだ職員室だから」 「日直やからな」 「うん、でも、最近、一緒に帰らない事が多くて・・浩之ちゃん、よく先に走って帰っちゃうから」 「まあ、いっつもベタベタしとるんやから、ええやないの。そういうときは、長岡はんらと帰ればええやん」 「うん、そうだね・・・」 「そういえば、最近、長岡はん、来いへんな」 「よく来てるよ。休み時間とか」 「それはそうなんやけど、放課後の話や」 「そういえば、そうだね」 「あのな、長岡はんの話で思い出したんやけど、今日、変なもん見てな」 「何を?」 「いや、購買でな、長岡はんが買い物しとったんや」 「志保だって、買い物くらい、するよ」 「いや、買い物は、別にええねん。けどな、そん時、払ったお金が、全部50円玉やったんや」 「どのくらい?」 「まあ、200円くらいのもんやけどな」 「じゃあ、普通だよ。私だって、50円玉4枚くらい、持ってるよ」 「うちかて持ってるけどな、その時偶然、財布の中身見てもうたんや」 「ひょっとして・・」 「あたりや。カンええな。全部、50円やったで。まあ、全部、ちゅうのは、言い過ぎとしても、そう、20枚 くらいは、確実や」 「よく見てるんだね、保科さん」 「ほんま、偶然なんやからな。でも、どう思う?」 「うーん、お釣をいっぱい貯めてたんじゃないのかな」 「アホな。長岡はんやで。そんな殊勝な事、するかいな。大体、なら、なんで両替せえへんのや」 「うーん・・・わかんないよ」 「そやろ。そいで、考えたんや」 「わかったの?」 「なんとのうやけど、わかってきたわ」 「どうしてなの?」 「あのな、金として考えるから、駄目なんや」 「でも、お金だよ」 「せやから、金属の丸い物として、考えるんや」 「うーん・・・おはじき?」 「なんでやねん!ええか、20枚もあったら、重ねてちょうど手のひらに入るやんか」 「うん、そうだね」 「つまりや、金属の丸い筒が出来るわけやな」 「そんなもの、どうするの」 「それをな、手のひらに、こう、ガッと握り込んで人を殴るとな・・・」 「えっ!!」 「場合によっては、骨まで砕いて、人一人、殺せるはずや」 「そ、そんな・・・」 「まさか、女にそんな力あるとは思わんから、相手も油断しとって、殺りやすいはずや。その上、警察も 同じように考えるやろから、疑われにくい」 「で、でも・・・」 「あらかじめ、重ねて出来た穴に紐でも通しとって、キッチリ固い筒にしとく。相手を殺った後ばらして自販機で使ってまえば、完全犯罪の出来上がりやで」 「し、志保が、志保が・・・・・・」 「問題は、ターゲットが誰か、ちゅう事なんやけど、まだ凶器を処分せずに不用意に持ち歩いとるんや から、スキを狙っとるんやな。かなり強そうな奴なんやろ」 「よう、あかり、まだいたのか。悪いけど、今日も帰れねえぜ。志保と約束してるんだ」 「ひ、浩之ちゃん!!!!!」 「いーじゃねーか、怒る事ねえだろ。ゲーセンくらい行ったって」 「だ、駄目、駄目なの・・・」 「××3がこの前から50円なんだよ。志保のヤロー、やり込んでやがってよ」 「し、志保、志保・・・・」 「おお、そんで今、83戦やって、俺が34勝なんだよ。頼むっ!行かせてくれ、この通りっ!あと、50円 玉持ってたら、貸してくれ。あそこ、50円の両替機がぶっ壊れて、今100円のしかないんだ。ん?な、何 だ、なに泣いてるんだ?」 「うっ、うっ、うえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!!ひろゆきちゃあああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!」 「ほな、お先に、藤田君」 「お、おう、委員長、じゃあな。わかった、あかり、俺が悪かったから。今日は一緒に帰ろうな。な、な あ、頼むよ、泣き止んでくれよ。ホントに、俺が、悪かった。何か知らんが、俺が、全面的に、悪かった から・・・」 __________________________________ なお、作中のトリックは、かって、『マジカル頭脳パワー』の問題に使われたものを改変したものなので、 このような形での使用には、問題ないと思われます。大体、そういう話じゃねえし・・・ >無口の秘湯 様 感想ありがとう御座います。