出会った頃の君はイヤ  投稿者: NTTT

久々野 彰 様に捧ぐ





ピンポ〜ン!
「浩之ちゃ〜〜〜ん。遅れちゃうよ〜〜〜!」


「ほら、さっさと起きなさい、バカ息子!あかりちゃんが来てるわよ」
「うえっ、もうこんな時間かよ。なんで起こしてくれねえんだよ!」
「あんた、そんな事言うのは、どの口?この口?この口なの?」
「ひゃ、ひゃめろよ、それより、メシ、メシ」
「新学期2日目から遅刻するような子供に食わすメシはないっ!」
「まだ、してねえだろ。チキショー、メシ抜きかよ」
「ほら、500円、途中でパンでも買いな」
「サンキュー、愛してるぜ。ほいじゃ」

「・・・全く、誰に似たのやら・・・」




「浩之ちゃ〜〜ん、待ってぇ〜〜〜!」
「ふるへえ、急げ」
「パン食べながら走ると、消化に悪いよ。それに、もう大丈夫だよ、ほら、他にもいっぱいいるし」
「どうやら、そうみたいだな」
「ねぇ、浩之ちゃん、私、友達ができたんだよ」
「ふーん」
「長岡さん、知ってる?」
「ああ、昨日の自己紹介でいきなり歌いやがったバカだろ。やめとけ、バカがうつるぞ」
「バカじゃないよ。昨日、一緒に帰って、途々話したんだけど、すごく面白い人なの」
「・・・ああ、昨日は雅史と入部やら何やらで忙しかったからな」
「うん、それで帰りがけに一緒になったの」
「何の話とか、してたんだ?」
「うーんと・・・浩之ちゃんの事とかも、話したよ」
「・・・俺の事とか・・・何話したんだよ?」
「・・・ないしょ・・・」
ぺしっ
「あっ」


「やっほー、あっかりー!」
「おはよう、長岡さん」
「もう、昨日も言ったでしょ、志保でいいんだって」
「う、うん、志保・・・さん」
「だーかーらー!志保でいいのっ、しー、ほー!」
「よう、志保」
「あ、あんたっ、誰よっ!!」
「し、志保、これが、浩之ちゃん」
ぺしっ
「あっ」
「人の事を『これ』たぁー、なんだよ!俺は物か?」
「あんたこそ、女の子の頭を気安く叩んじゃないわよっ!あ、あんたが『浩之ちゃん』なのっ?あんたに
呼び捨てにされる義理はないわよっ!!」
「志保でいいんだろ、志保」
「お、思い出したわよっ、あんた、昨日の始業式で居眠りブッこいてたやつでしょ!あかりっ!友達は
選んだほうがいいわよっ!こいつ、きっと、不良よっ!!」
「誰が不良なんだよ!」
「あんたに決まってるでしょっ!目つき悪いわよ!」
「関係ねーだろーが!」
「おおありよっ!そーゆー目つきの奴は、きっとシンナーとか、吸ってるのよっ!歯を見せなさいっ!
きっと、ボロボロよっ!!」
「オメー、変な雑誌の読み過ぎだっ!!」
「し、志保、浩之ちゃん!」
「何だよっ!」
「何よっ!」
「・・・チャイム、鳴ってる・・・」





「浩之、どうだった?」
「まあ、入部して2日目だからな・・・まあ、こんなもんじゃねえのか」
「早くボールを使いたいね」
「おう、お前と俺なら、きっと即レギュラーだぜ」
「先輩たちも、結構、上手いよ」
「大丈夫だって、俺たちゃ黄金ルーキーだ」
「そうだね・・・でも」
「ん?」
「あかりちゃんとは、これからはなかなか一緒に帰れないね」
「ああ、大丈夫だよ。あかり、変な友達作りやがってよ」
「知ってるよ。長岡さんでしょ」
「おお、これが、腹立つ女なんだよ」
「なんか、浩之とも、仲良く見えたけど」
「良くねえって」
「そうかな・・・あっ、あれ、長岡さんとあかりちゃんじゃないの?」
「なに道草食ってやがんだ」
「棒なんかもって・・・あっ、犬だよ」
「あの女、犬をいじめて、どうしようってんだ。行くぞ」
「うん」




「志保、ダメだよ、やめようよ」
「だーめっ!あたしの親友のあかりを脅かした罪は重いのよっ!」
「あっ、浩之ちゃん!」
「なに、犬いじめてんだっ!オメーらは」
「あんたっ!性懲りもなく現れたわねっ!さては、尾けてたのっ!!」
「たまたま通りかかったんだ!!」
「浩之ちゃん、やめさせてっ!ただ、出会い頭で、ちょっと驚いただけなのっ!」
「浩之、こいつ、飼い犬みたいだ」
「嘘おっしゃいっ!あかり、こいつ、不良の上に変態よっ!!ところで、あんた、何?」
「僕は、佐藤、雅史だけど。長岡さんも一緒のクラスじゃない」
「あんたも変態なのっ!!」
「志保、お願い・・・」



「一人ずつ話せええええええええええええええっ」






「・・・わかった。こういう事か?オメーらが、曲がり角かどっかで、犬と鉢合わせして、あかりが驚いた
と・・」
「うん、そしたら、志保が怒って・・・」
「だって、ワンワン吠えるんだもん」
「・・・ふう・・・雅史、そいつ、本当に飼い犬か?」
「うん、毛並みもいいし、首輪の跡がある。きっと、首輪から抜けて、散歩してるんだよ」
「・・・よし、あかり、ちょっと戻った所に駄菓子屋があっただろう?」
「うん」
「雅史、いくら持ってる?」
「えっ、どうして?」
「あそこに、縄とびも売ってたろう?俺も少し出す。朝メシにもらった残りがあるしな」
「・・・引き綱にするんだね。あかりちゃん、僕が行ってくるよ」
「・・・犬に綱つけて、どうすんのよ?」
「飼い主を捜すに決まってんだろうが!バカか、お前」
「わかる訳ないじゃない!!」
「この時間帯なら、簡単なんだよ」
「浩之ちゃん、時間って?」
「いいか、犬の行動半径はそれほど広かねえ。おまけに、今の時間は、犬に散歩させる人が多いんだ」
「そうだね、浩之ちゃん。きっと、この犬を知ってる人も見つかるね」
「・・・あんた、わりかし頭いいのね」
「オメーとは違うからな」
「なんですってぇーーー!あんた、調子に乗るんじゃないわよっ!!」
「浩之ちゃんと志保って、二人とも、仲、いいね」
「「違うっっっ!!!」」








「ぷっぷっぷっ・・・」
「笑うなっ!!」
「まさか、犬の名前が、『ヒロ』だったなんてねー!」
「オメー、調子に乗ると、後悔するぞ」
「なによっ!やる気なのっ!!」
「耳、貸せ」
「なんでよっ!!」
「いいから、志保」
「なによ」

「・・・いいか、犬ってのは、人の恐怖心がわかって、吠えるんだ。ほんとは、オメー、犬が怖かったんじゃ
ねえか・・・」

「だ、だ、誰がよっ!!!」
「ほう、図星か」
「あんた、バッカじゃないのっ!大体、今、あたしの事、呼び捨てにしたでしょっ!!許可してないわ
よっ!!」
「いくらでも呼び捨てにしてやるぜ。志保志保志保志保、しーほしほーーー」
「あんたなんか、ヒロヒロヒロヒロヒーロヒローーーよっ」


「あかりちゃん」
「何」
「あの二人、ホントに、仲いいね」
「・・・・・・・うん・・・・・・・・」





・・・・・・そういえば、あれ以来、こいつは俺の事、「ヒロ」って、呼んでるんだよなあ・・・・・・・
「ちょっと、ヒロ」
・・・・・・こいつ、他の奴はあだなで呼ばないんだよなあ・・・・・・
「聞いてんの、ヒロ」
・・・・・・俺だけ特別って事かなあ・・・・・・
「目開けて寝てんの?」
・・・・・・ひょっとして、こいつ、俺の事・・・・・・
「起きてますかー?」
「人の鼻つまむんじゃねえよ!!人の教室まで来てちょっかい出しやがって、さっさと帰ーれ!!」
「あんたねえ、せっかく人が最新のニュースを持ってきたってのに、なんて言い草よっ!!」
「どうせ、ガセだろーがっ!!!」
「きーーーーーーーーーっ!!!!言ったわねーーーーーーーーーーーっ!!!!!」


・・・・・・まさかな・・・・・・


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