坂下・・ 投稿者: NTTT

「いらっしゃい、綾香」
「ええ、いらっしゃいましたわよ、好恵様」
「なんか、怒ってるの?機嫌悪そうね」
「・・・別に。・・・ほい、これ」
「そう、この服なのよ」
「言っとくけど、大事に着てよね。染みなんかつけたら、殺すわよ」
「わかってるって。ウェストの方は?」
「・・・詰めてございますとも、勿論・・・」
「ごめんね、無理言っちゃって」
「え!?え!?い、いや、別に、いいのよ。これくらい。だって、誘ったの、私なんだし。き、着てみなさ
いよ。靴も合わせてみたいし。・・・ね、ねぇ?」
「何よ」
「パーティー、そんなに来たかったの?」
「な、な、何言ってんのよ。あんたが誘うから、仕方なくなのよ。そう、仕方なく。うん、仕方なく」
「ふぅん。ねえ、ひょっとして、お目当ての人が、って、来るのは葵と藤田君と・・・ああ、そういう事な
の?ねぇ、好恵」
「ちちちち、違うわよ」
「はぁー、なるほどねぇ。ああいうのが、いいんだぁ。ふーん」
「違うって言ってるでしょ!」
「で、でもさぁ、あんたがこんなに殊勝に謝るのって、やっぱ、来たかったって・・・」
「だから、違うって・・・」
「そうなると、お目当てがいるって事なんだろうし・・・」
「違う、違う、違うのよ!」
「でも、年が離れすぎてるんじゃない?」
「は!?」
「セバスチャンじゃ」
「そんなわけないでしょおぉぉぉぉぉおおぉぉっ!!!!」
「やっぱり?じゃあ、あの、後藤って人?そうなのね、そーなんだー!ふーん、へぇー」
「カマかけたわね・・・言っとくけど、佐藤よ」
「ああ、そうそう、佐藤、佐藤。なんか、人気ある人でしょ?ああ、だから気合入れてるんだぁー」
「・・・何よ、悪いっ?」
「べーつーにぃー。でも、あんな線の細い優男がタイプなんだぁー、へぇー」
「サッカー部の次期主将って言われてるのよ。実は体育会系のスポーツマンなんだから!」
「はーん、でもさ、なんか、根が暗そうよ」
「温和だからそう見えるだけなのよっ!」
「いや、なんか、聞いたわよ。ペットにネズミか何か飼ってるって」
「ハムスターよっ!!大体、動物好きで何が悪いのっ!!!」
「いや、別に悪かないけどさ。ハムスターもネズミも同じ様なもんじゃないの?」
「全っ然、違うわよおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉっ!!!」
「でも、見るからに、なんとなく・・・ちょ、ちょっと、チョーク、チョーク、反則よっ!!」
「・・・もう、この話は、やめ。い・い・わ・ね・・・」
「・・・わかったわよ。でも・・・」
「・・・でも?・・・」
「・・・本気なのね。なんだか、びっくりしちゃったわ」
「・・・・」
「照れてるんだぁー!好恵ちゃん、可愛いー!」
「・・・・」
「ねぇねぇ、やっぱり、日記とかにも書いてるの?ああ、雅史様。雅史様とか」
「・・・・」
「ラブレターとか書きかけて、途中で赤面して、破っちゃったりとか」
「・・・・」
「夢の中で会えます様にって、枕の下に写真入れたりとか」
「・・・綾香・・・」
「んー?何かなー、好恵ちゃん?」

「殺おぉぉぉぉぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉおおおぉス!!!!!!」
「じょ、冗談だって、ちょ、痛い、痛い、やめてぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇ!!」

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