「・・・」
　なんてこった。
　俺は失意に膝を付き、天井を仰ぎ見た。
「なぁんてこったい！」
　何がいけなかったか？
　と聞かれれば、そりゃあ、なにもかも悪いのである。
　ただでさえスズメの涙みたいな小遣いしかもらってないのに、ＰＳ２は買うは、
調子に乗ってＤＶＤソフトも買い込むは・・・
　挙句の果てに森川由綺のコンサート行って、帰りにＭＰ３のウォークマン買って
帰りゃ・・・
「そりゃぁ、金もなくなるわなぁ〜・・・」
　だいたい、なんでＭＰ3のウォークマンなんか買ったんだ？
　俺はパソコンもってねぇぞ。
　流行りモンだからか？
「志保じゃあるまいし・・・」

　とにかく、金が無い事実に変わりはない。
　多少気は重いのだが、ここは同居人にこの事実をうちあけ、仲良く省エネ生活を
エンジョイするとするか・・・
「うぉーーーーいっ、マルチィ〜ッ！！！」
　まるでコントのような展開に、
　まるでコントに参加するアイドルのような返事をして、
「はぁ〜い♪」
　マルチが台所から現れた。　

「なんですかぁ〜？」
　なんですかぁ・・・じゃねぇよ。
　俺は、あからさまに嘆息して見せると、マルチの肩に手を置いて首を振った。

「ハァ〜・・・キイテクダサイヨ、マルチサン」

　出来るだけ、哀れっぽく、惨めに言う。
　ついでに声音も変えてみる。

「ジツハ、オカネガナインデスヨ」
「あ、ご主人様！」
「実際の話、お前に喰わせる電気も・・・ちょっと危ない」
「あのあのあのあのっ！　さっきの―――」
「いや、あのな・・・大事な話をしてるんだが・・・」
「さっきの『キイテクダサイ、マルチサン』って！　もしかして！」
「おい、マルチ・・・」
「もしかしてぇっ！！！」
「こら」
「もしかしてもしかしてっ！！！」
「あのなぁ」


「Ｃ．Ｗ．ニコルさんのモノマネですかっ！？」


「・・・」
「すごいですぅっ！！！」
「・・・」
「とっても似てましたぁっ！！」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「もう１回やってくださいー！」　


「人の話を聞かんかぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ！！！」


　ガコッ！！！

「べんはぁっ！！」

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