全自動による全自動のための怠惰 投稿者:MIO 投稿日:5月14日(日)17時21分
 俺は、頭をボリボリと掻いて・・・
「なぁ、マルチ」
 爪の間にフケが挟まった指を、ぴしりと彼女の脚に向ける。
「それ、その、なんだ―――」
 スカートとハイソックスの間のフトモモがまぶしいが・・・
 そういうマニアックな感情は、今は置いておこう。
「えーっと、その、ハイソック?」
 あってるよな? あれ、ハイソックスでいいよな?
 ・・・いやまて、ストッキングの縁者親族かもしれない。
 まぁ・・・なんだっていいか。
「つまり、ハイソックスなんだが・・・」
 俺が何を言っているのかサッパリ解らないマルチは、困った顔をして首を傾げる。
「えっと・・・なんでしょうか、浩之さん」
「その、ソレにさぁ、なんか付いてるじゃんか」
 マルチのハイソックスには、外側に金属製のパーツがくっついている。
 妙に無骨なそれは、装飾品とも思えず・・・俺の中ではずっと謎だった。
「コレ・・・ですか?」
 マルチが、ぴよんと例のパーツをひっぱってみせる。
 俺が頷くと、マルチはやっと得心したようで、にっこり微笑みながら言った。

「これは、コネクタなんです」

 コネクタ? なにかくっつけるのか?
 俺は、マルチの脚に赤や青のチューブがくっつけられている様を想像して、なんだ
か得心した。
 なるほど、絵になるじゃねぇか。
 SFってカンジだぜ。
「つまり、マルチはそこからデータを入力したり、出力したりするんだな?」
 我ながら穿った見解だ・・・と思ったのだが、マルチは首を横に振る。
「違うのか?」
「はい、そうなんですよ」
「じゃあ・・・なにすんだ?」
 そこで、マルチは自慢気に(うすっぺらい)胸を張る。
 なにか自慢できるような秘密があるらしい。
「いいですか浩之さん。研究所には、このくらいの金属の台があって・・・」
 マルチの身振りからして『これくらい』というのは、ちょうどマルチの肩幅くら
いのようだ。
「その両横に、機械のアームがあります」
 マルチは、ひらがなの『く』を書く仕草で説明する。
 アームの形なんだろう。
「ここからがスゴイんですよぅ〜! アームの先端がですねぇ、このコネクタに
こう・・・カチッと接続されるワケです!」
 ほぉ〜・・・なんだかスゴイな。
「それで、どうなると思います?」
「う〜ん・・・」
 どうなんだ? ちょっと思いつかねぇな。
「ダメだ、サッパリわかんねぇ、降参!」
 両手を上げて降参する俺に、マルチは得意げに微笑んだ。
「アームが接続されると、アームが動いてですねぇ〜」
 動いて?
 それで?


「自動的にソックスをずり下げるんです!!!」



「・・・」
「名づけて! 全自動ハイソックス脱がし機ッ!!!!!!」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「あ、あのぅ・・・浩之さん?」
「仮にも最新型の労働機械が―――」
「?」

「横着すなぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」


 ゴキィッ!!


「あぶっ!」


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やりすぎだ、浩之!
それはともかく!
きょ、凶作? じゃねぇ、競作?  

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