我名はレギヲン。大勢であるが故に。 投稿者:MIO 投稿日:5月14日(日)17時00分
 ありゃ?

「マルチーっ! 爪切りドコだ〜」

 リビングの棚をひっくり返しながら叫ぶと、マルチがそれに応えて、パタパタと
キッチンから出てくる。

「見つかりませんかぁ?」 

「おう」

 せっかく昨日の新聞広げて、靴下脱いで、準備万端なんだぞ。
 これで爪切りがなかったら、俺が馬鹿みたいじゃないか。
 俺はアレか? 昨日の新聞読んで「やった! 宝くじが当たった!」とか喜ぶ
人か?

「え〜っと・・・確かぁ〜」

 何か思い当たる事でもあるのか、マルチはポヨポヨ眉毛を寄せて、ウンウン考え 
出す。
 早く思い出せ、マルチ。
 ヒトはつめを切らないと死ぬる!
 死ぬる!
 死ぬるぞえ!
「思い出せー、マッルッチッ! あ、それ! 思い出せー、マッルッチッ!」
 と、そのとき、マルチがぱふっと手を打った。

「あ、そういえば――」

 そういえば?

「一ヶ月前、電話の下の引き出しに――」

 引き出しに?



「カマキリの卵と一緒に放り込んでおきました!」



「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」

 爪なんか切らなくても、ヒトは生きていけると思った。

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