瑞穂の細腕番外地 ―ファントム― 投稿者:MIO 投稿日:5月8日(月)21時25分
「か、かかっかかかっ! 香奈子ちゃんLOVE!!」
「瑞穂・・・」
「香奈子ちゃんLOVEえすかれーしょん!」
「馬鹿なコ・・・わたしなんか慕うから・・・」
「慕いまくりですよ、瑞穂は! 愛は絶対無敵の雷神です!」
「本当に馬鹿なコ。だから・・・こういうことになるのよ」

「ルルイエの浮上。最凶死刑囚の脱獄。GR作戦の発動。未来日記の映
画化。そのすべては・・・あなたがかかわっていたのね、太田香奈子」
「それを知ったところで、いまさら来栖川になにが出来るのか・・・」
「あいにくと、あがいて、もがいて、それでも生き延びてやるのがわたし
のポリシーなの! セリオ、自爆装置を!」
「了解。1分後に来栖川重工本社ビルは自爆します」
「塵に帰りなさいっ!! Leafの忌み子っ!!」
「・・・愚かな。わたしに脱出できないとでも思うのか? 1分もあれば」
 
 ガシッ!

「っ!?」
「地獄には付き合ってもらうぞ、太田香奈子!」
「や、柳川っ!?」
「俺(鬼)がリードしてやるんだ。地獄行きは・・・確定だなぁ」
「きっさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「香奈子ちゃんラヴ!!!!」


 199X年っぽいいつか!
 経済界の重鎮であり、要でもあった来栖川グループの突然の崩御によ
ってLeaf界は荒れに荒れていた!
 新城沙織は校舎裏の花壇をメチャメチャにしたし、神岸あかりは近所
の幼稚園の庭に、腹を空かせた野犬を投げ込んだ!
 森川由綺は、都内のコンビニのコーラを、片っ端からシェイクしてま
わったし、高瀬瑞希は親友のトラウマを穿りかえすことに余念が無かっ
たりした!
 そうそう、ルミラなんかは一日中家にこもって黙々と偽造テレカを作
っていたし、ティリアに至っては、サラが大切にしていたオロ○ミンC
の看板(昭和中期のもの)を五万円で売り払った!
 雛山家の人々は、相変らず地面に這いつくばって小銭を探してたさ!
 とにかく、みんな荒れていた!
 普段は穏やかなエーゲ海も、その日に限っては荒れに荒れていた!
 ちょうどその頃、MIOの生活も荒れに荒れていたし、
 彼の父親の肝臓も荒れに荒れていた!
 その荒れっぷりといったらアンタァ!
 ニキビにおおわれた中学生の皮膚のほうが、まだマシであっただろう!
 何が悪いって、世間が悪い!


 まぁ、だから、そんなワケで!!!


 瑞穂の細腕番外地 
 ―ファントム―


 五月雨製鉄の懲りない面々
 
 リアン  父方の祖母がロシア人で祖父がベトナム人。母方の祖母が
イギリス人で祖父が日本人。父親はアメリカ国籍で母親はカナダ国籍だ
が、二人とも半生を大阪で過ごす。しかし、巨人ファンである。ただし
心意気は道産子だ。それなのに、二人ともグエンディーナ人である。
そんな二人の娘であるリアンは、日本の学校で集団生活の重要さと欠点
を学び、危うくヤマンバになりそうになるも、母親の陰謀により海外の
大学を受験。ミスカトニック大学で図書委員の任に就くも、生き別れて
いた姉『スフィー』に呼び出され、日本に帰郷することになった。
 で、リアンって何人なんですか?
 本名は『リアン・エル・アトワリア・クリエール』

  スフィー  魔法の国『グエンディーナ』のお姫様(自称)であるが、
五月雨製鉄で働くうちに労働の喜びに目覚める。
 主に溶鉱炉の駆動油圧シリンダーを管理しているが、たまに鋼材を運ん
でいる。通称『肉体の悪魔』
 本名は『スフィー・リム・アトワリア・クリエール』

 けんたろ  犬。スフィーの魔法により畜生になりさがる。

 江藤結花  経理のおねーちゃん。沙織とは幼なじみだが、胸のアレ
のおかげで劣等感にまみれた人生を送っている。が、かつてはSATで
超警察官とまで呼ばれた女。警察格闘技の使い手。
 すごい銀蝿ファン。

 高倉みどり いちおう五月雨製鉄の社長で、行かず後家。昼間っから
酒を浴びるように飲む不良社長で、酒とパチンコが趣味のインドア派。
 金に対して異様な執着があるくせに、仕事には不真面目な困った大人。

 牧部なつみ 自殺願望少女。躁鬱激しく、発作的に自殺を試みるヤバ
イ少女。キレイな窓ガラスをみると指紋をベタベタくっつける嫌なクセ
を持っているため、シンディ宮内に親の敵の如く憎まれている。
 退廃的かつ刹那的な思想の持ち主。
 五月雨製鉄では廃材処理担当。


 ラオウ  みどりに拾われた記憶喪失の陸亀。頭がいい。

 ニャンコ先生 みどりが飼っている老猫。伝染説の秘奥義『キャット天
空×(ペケ)字無想転生拳』の最後の使い手。ラオウに才能を見出す。
 最近ボケだしたため、ラオウが亀だと認識できていない。
  
 メーテル  みどりが買っている黒ウサギ。ラオウにひそかに思いを寄
せている。キャベツに目が無い。

 震電   宇宙を統べる邪神アザトートの気まぐれにより自我を獲得し
た『火星将軍ロボ』。ブリキの肉体と鋼の心で、地下プロレス制覇を狙う。 
 ニャンコ先生の一番弟子。
 
 

 前回までのあらすじ

 宇宙飛行士、藤田浩之が連絡を絶った三分間に、一体何がおこったのか!?
 せまりくる宇宙の深遠!! 相対するは一人の魔女っコ!
「・・・」(ブンダーが来る)
 新妻の体験する、未知の侵略者! その恐怖!
「違うよ! 浩之ちゃんは『はだかエプロン』を強要するような人じゃないよっ!!」
 外人っ!
「コニャニャチワーーー! レミィなのデース!」
 超能力!
「あっ! 髪の毛がごわごわしてるから、明日は雨かもっ!!」
 貧乏!
「いいじゃないですか、たかが食パンの耳じゃないですか、タダでいいじゃない
ですか、そんなの値段つけなくてもいいじゃないですか、タダで売りましょうよ、
ねぇ、これで一つの家族が救えるんですよ? いいことじゃないですか。ねぇ、
タダで売りましょうよ、ねぇねぇ」
 関西!
「あかんわ、ちゃうちゃうちゃうんとちゃうんやわちゃうちゃうちゃう? って
おもっとったらそらもぉ、たこ焼きの味なんてわからしまへん、ダメでおすえ、
そらおもぉ、ちゃうちゃうなんてちゃうちゃうちゃうんちゃうんやからちゃうん
とちゃうんですかいなぁ?」
 格闘技!
「ブルマーじゃなきゃだめですか!? 小学生レスラーじゃないんですよ!?」
「ブルマーじゃなきゃだめよ葵! そうでないと『キュン』てならないわ!」
「空手の技はぁぁぁぁぁっ!!! 目黒一ぃぃぃぃぃっ!!」
 そして、ついに立ち上がる最終兵器っ!!!
「掃除をっ! 掃除をォッ! わたしに掃除をさせてくださぃぃっ!」
「マルチさん」
「そぉじぃぃぃぃっ!」
「マルチさん」
 絶対絶命の危機の中っ! ついにあの男が立ち上がるっ!
「トモダチだよね」
 ああっ! 最終決戦の日は近いっ!!

『U・M・A・ミレニアム(副題:悪魔の宇宙吸血鬼)』
 淀川推奨なカンジで、やぶれかぶれに堂々公開っ!!!
 ってーか、そんなハナシだったか!?

 と、ととと、とにかく急いで本編をっ!!!


「リアンでス」
 あのあの、あのの、あのでスね・・・
 わたしリアンは、姉さんからの手紙―――

『アネ キノドク ソッコーカエレ』

 で、籍を置いたばっかりだったニューイングランドのミスカトニック大学に
休学届をば提出、日本に帰ってきたンでス。
 んなもん、生き別れた髪の毛ピンクのロリロリ姉さんに、こちとら微塵の情
も感じていないんでスが、やはり、生き別れの姉に呼び出されたらホイホイ出
向くのが世の理でスよね。
 鬱陶しいったらありゃしねぇンでスが、やはりこれは、大宇宙の大いなる意
思によるところが大変ビックだと思うのでス! その辺どぉなのか!?
「っと・・・ここが五月雨製鉄でスか」
 鬱陶しい建物でス。
 埃っぽいし、汚いし、臭い。
「臭い汚い臭い・・・俗に言うところの『3LDK』と言うやつですネ」
 一人暮らしは、キノコとイカゲソの匂い漂う、三畳間の宇宙でスよ。
 ・・・
「ハッ! 『3LDK』は広すぎるでスね!!」
 こいつは春からウッカリ度数高すぎでスな! んなもん、部屋を湿らせるこ
としかできないダメな若者には、三畳間で上等なんでスよ、むしろ多摩川の河
川敷で寝起きするべし! うは、でも、ホントウにやられたら鬱陶しいったら
ありゃしませんネ。
 もぉ、リアンの阿呆!
 こつん! とてめぇの頭を殴りまス! これぞ世の漢どもを惑わすポイズン
なのでス! ほら見れ! そこなバス停でバスを待つ老人が、亡羊とした瞳で
わたしを見ていまス!
 いっつ、こんぐらっちゅれいしょん! あいむそーりー! ゆあうえるかむ!
「鬼畜米英・・・」
 おう! 老人め! リアンを敵と目視確認ですか! OK! リアンは闘う
でスよ!? リアンはアリンコと本気でド突き合う地上最強の生物モドキ!!
「かかってくるがいい、戦前の遺物メが! 中国4000年の秘密を持って、けちょ
んけちょんにしてくれるっ!」
「まっかーさーの子供めぇぇ」
「ふははは! 老人! 敬老精神の絶無な今時の若者に勝てるかなっ!? リ
アンの肉体は白く若々しいでスぞ! いまここで、あえて言おうっ!」
「めりけんめぇぇぇ」
「老人の強さとは、常に与太話の中っ! 実践で老人の枯れた細腕が振るわれ
るさまを見たものなどいないのでス!! ズバリ言って―――」
「貴様らさえ邪魔せねば、わが鬼神兵団瞬殺無音菩薩峠部隊はエイリアンに勝
てたものうぉぉぉっ!」

「老人は保護されているっ!!!」

「あたりまえじゃのクラッカー!」
「ジジィめ! 狂科学ハンターに蜂の巣にしてもらえっ!」
「かーっ!」
「しゃーっ!」
「くわぁーー!」
「死ぬけーっ!」


 
「にゃあっ!」



 ム!? この声はっ!?

「にゃあにゃあ! 双方同意とみてよろしいですねーっ!?」
 
 黄色い仔猫がじゃんぷしてぴょん! リアンと老人の間でくるくる回るでス
かっ!? 黄色い仔猫は、「にゃあにゃあ」と鳴きながらシアワセのダンスを
踊るでス!!
 嗚呼、かぐらーーーーーーーーーーーーっ!!!!

「千紗は、世界老人力認定協会、公式審判! 塚本千紗なのですよ! そうな
んですよ! 焔ラヴラヴ!」
「老人力!?」
「にゃあですぅ! 世界には闘う老人たちがいるですよ! 自らの年齢を、老
いていく肉体を、超越した戦闘力! すなわちそれが老人力なのですよ! 老
人たちは死ぬまで闘う事をやめないです! 満ち溢れる老人のエナジー! そ
して繰り返される戦いの日々! 千紗は、それらの闘いを見守り、公平な判断
をくだすべく、ここへ現れたのですよ! ビバ、老人力!!」
「老人の力、あなどってはいけないということでスかっ!?」
「にゃぁん、当然ですよぉー! 老人の枯れ枝のような手足が、コンクリを砕
き鉄骨を曲げるといった事実は、NASAの研究チームも認めているです!」
 うさんくせぇ!
「にゃぁ・・・本当ですぅ・・・千紗は嘘つかないですぅ」
「・・・」
「・・・」
「バトるかっ!」
「バトるですか?」
「バトるともさ!」
 烏賊をてんぷらにするかのように、ピチピチと闘ってやるさ!
 脱いでもスゴイ、眼鏡っコのエネルギー見せてやる!
(小出師匠! リアンの闘いを見ていてください!)

「ではぁ、真剣バトルをはじめるですよ! にゃぁ〜ん!」

 黄色い仔猫、千紗ちぃが、ぴこんと跳ねて青いゴミ箱の上に立ったでス!
 取り出されるマイク!
 たなびく『こみパ出版』のロゴ入りエプロン!
「さぁ、方や新進気鋭の眼鏡ッコにして、猫耳属性をも獲得しているリアンさ
んっ!」
「リアンは頑張るでスな! 鬱陶しい展開ではありますが!」
「方や、町内老人界では『鉄の城』の異名をとる超老人! 女背婦・情酢他亜さんっ!」
「応ッ!」
 ふはぁっ! なかなかノッてきたんでス!
 ここはいっちょ、デジモンの02ふうに名乗りをあげるとするでスか!!
 でじめんたるあーーーーーーっぷ!!


「萌えあがる眼鏡! リアン!!」


 リアンの名乗りに、老人は不適に笑ったでスね!
 どうやら、老人も名乗りをあげるようです! さぁこい! ちくしょう!
 鬱陶しいでスぞ!


 でじめんたるあーーーーーーっぷ!!


「ふるえる手足!! 老人!!」


 
 さぁ、ついに瑞穂の細腕シリーズの新章が始まった!!
 瑞穂は、香奈子はどこへ行ったのか!?
 そして、新たなるヒロインのリアンは、見事老人を下せるのかっ!
 謎が謎を呼び、答えが出ないうちに、さらに謎が謎を呼びまくる!
 もしかして答えなんてないのか!?
 ってーか、考えて書いてるのか!?
 大丈夫なのか! そんなことでOKなのか!? どーでもいいか!?
 どーでもいいやっ!

 一方その頃、ポル・・・ポル?
 
「う・・・」
 鈍い意識の覚醒と、それに伴った激痛に、俺は思わず声をあげる。
(腹のキズか・・・キズは閉じたようだが、まだ全快とはいかんか・・・)
 俺は無理に体を起こして、窓の外を見た。
 空は青く、春らしいそよ風に若葉が揺れている。
 道端では、青い髪の少女が枯れ枝のような老人と睨み合っていた。
(五月雨製鉄に拾われて三ヶ月か・・・)

 三ヶ月前、俺は横浜中華街で死にかけていたところを、ここの社長であ
る高倉みどりに拾われ、一命を取り留めた。
 しかし、地獄からの生還という、少々ドラマチックな展開を現実に行う
には、それ相応の代償が必要だったらしい。
(もっとも、俺の行いの悪さかもしれないんだがな)
 とにかく俺は、すっかり記憶を失っていた。
 かつて住んでいた場所も、身分も、名前さえも、俺の頭の中からすっか
り抜け落ちていた。
 解っているのは、自分が亀だということ・・・それと。
(ミズホ・・・という女の名前)
 手がかり・・・なんだろうが、体がこの状態じゃ探すに探せない。
「人の手を借りなきゃ用も足せないなんてな・・・」
(とにかく、キズの回復を待たなければ・・・)
 と、そのとき、俺の部屋の唯一の入り口が、控えめに開かれた。
「ラオウ・・・起きてるの?」
 差し込む陽の光とともに、部屋に足をふみいれたのは・・・
「メーテルか・・・」
 俺の看病をしてくれている、黒ウサギのメーテルだった。
「あ、だめじゃないラオウ! ちゃんと寝てなきゃ・・・」
 ラオウというのは、便宜上で俺につけられた名前で、高倉みどりが名づ
けてくれた。
 本当の名前を思い出すまで、俺はラオウだ。
「無理したら、直るものも治らないわよ」
「すまない。でも、今日は調子がいいみたいなんだ」
「そう・・・なの?」
「ああ、この調子なら、すぐに歩けるように―――」
「・・・」
「どうした?」
「え? う、ううん・・・ただ・・・」
「?」
「なんでもない! あ、ほら、キャベツもってきたわ!」
 取り繕うようにして、メーテルは持っていたキャベツの葉を俺に渡す。
 キャベツを受け取った俺は、思わず苦笑して、
「おいおい、亀の俺にキャベツを食わせてどうするんだい?」
 といった。
「あっ」
 メーテルは「しまった」と、恥ずかしそうに長い耳を垂れる。
 その愛らしい様子に、俺は思わず吹きだしてしまう。
「やれやれ、こんな調子じゃぁ、いつまでたっても俺は寝たきりだな」
 ちょっとした意地悪のつもりだった。
 でも、メーテルはそうは受け取らなかったようだ。頬を紅く染めて、
「・・・そうしたら、ずっと一緒にいられるね・・・」
 聞き取り難いほど小さな声で呟いて、目線を落とす。
「え? いまなんて・・・」
「な、なんでもない!」
「メーテル?」
「なんでもないから! あ、わ、わたし亀のエサとってくるね! みどりさん
がラオウのために『亀げんき』買ってきたっていってたから!」
「あ、おい・・・」
 俺が引き止める間もなく、メーテルは部屋を駆け出していってしまった。
(やれやれ・・・)

 記憶を取り戻しても、きっと続くだろうと思っていた、その小さなシアワセ。

 しかしそれは、あるビーバーの登場によって、まもなく打ち砕かれてしまう
ということを・・・このときの俺はまだ、知る由もなかったのである。

  
 次回 『眼鏡の境地!? リアン、老人と殴りあう!』
    『亀・・・心静かに』

     の、二本立てでお送りいたします!!
     ご期待ください。
     
===================================================================
 がんばれ! がんばれ俺っ! もっとこう・・・

 なんとかしなきゃっ!(笑)

http://www.interq.or.jp/black/chemical/