瑞穂の細腕捜神記  投稿者:MIO


 登場人物紹介!

 藍原瑞穂  地球の機械昇華を狙うメガネっ娘。
 大庭詠美  地上最強のハイパー同人作家にして、不死身の肉体を持つ。
 太田香奈子 人類史上最強の産業スパイ。
 来栖川綾香 来栖川十傑衆最強の少女にして、『AF計画』の最高責任者。
 HMX−13 セリオ  メイドロボ史上最速の戦闘能力を持つ。
 ポルナレフ  亀甲シールドの使い手。
 カネギン神父 元傭兵の神父。かつては斥侯任務を得意としていた。
 リッパー  合衆国最強ビーバーにして、NASA六部衆リーダー。ハリーの動きを追   
       って来日。
 パッキー  カネギンの戦友で、現在も傭兵を営む。ベトコンを憎むウサギ。


【セリオ同時通訳中】 人間←ロボット→動物

「・・・それで?」
 綾香は仏頂面で、目の前のビーバーをねめつけた。
 ビーバー・・・つまり、実質上NASAの最高責任者であり、NASA六部衆・・・い
や、合衆国最強のビーバーであるリッパーは、不敵な笑みを浮かべる。
「そんなに興奮する必要もありますまい・・・これは、公平な取り引きと考えていただき
たいのです」
「そうね、貴方が手札を全部見せているっていうのなら、鵜呑みにしても構わないのだけ
れど」
「ミス綾香、ビジネスとは、常にそういった危険を孕むものではありませんか?」
「ご高説、耳が痛いわね」
「我々の望みは、貴女達の研究成果・・・貴女達が『B・B』と呼称する物体の研究デー
タ及び、『あかりファイヤー』の基礎理論」
「で? そちらは何をお返ししてくれるのかしら?」
「亀の始末と、南極で発見されたレン高原についてのデータ・・・」
 リッパーの言葉に、綾香は、その整った眉を撥ね上げる。
「ハン・・・それでフィフティ・フィフティだなんて、笑わせるわね」
「なに?」
「何度も言わないわよ? 私はNASAに、『エレミヤの寵児』に関する全ての記録、及
び、柏木千鶴に関する情報提供を要求するわっ!」
「・・・それは無理な相談だな」
「なら、この取り引きは、最初から無かった事・・・ってコトになりますわ、ミスター・
・・」
「リッパーだ」
「・・・ミスターリッパー、貴方の私は素晴らしい返答を、期待してもよろしいのかしら
?」
「ふふ・・・残念だが、ミス綾香には、我々の誠意がご理解いただけぬようだな・・・」
 五つの影が、瞬時にリッパーを取り巻く。
 綾香は表情こそ変えなかったが、内心舌打ちした。
(いち、にぃ、さん・・・六部衆勢ぞろい? ちょぉっと、キツイかもしれないわねぇ♪)
「我々は強引な手段を取る事も可能なのだよ、ミス綾香」
「ふぅ・・・なら、やってごらんなさい、・・・出っ歯野郎が」
 リッパーの舌打ちを合図に、影の一つが動いた!
 小さな影が、そのヒレをかざした刹那! ヒュッと風を切る音が響く!
(モーションは最小・・・攻撃力は最大・・・ちょっとスゴイかもね)
 真空の刃は空間を裂き、音速に近いスピードで綾香の胸元を狙う!
 明らかに殺意を持ったそれは―――

 バシィッ!

 更に速いスピードで動いたセリオの掌の中で、爆ぜて霧散する。
 綾香は、クスッと笑った。
「これだから一番に固執する国は困りものね。『上ばかり見てると、小石に足元をすくわ
れる』・・・なんてね。どお? 憶えておいて損はない教訓だと思うけど?」
 リッパーはフンと鼻を鳴らした。
「ジャップに、これほどの実力があるとはな」
「・・・情報収集の手腕も誉めてほしいわね」

◆
 その頃、姫川琴音GX
「くしゅんっ」
◆

「・・・」
「そっちが、鶴来屋に興味持ってるのは知ってるわ。うちの情報力を侮ってほしくはない
わね、うちの情報網は『K・A・L』や『長岡志保』だけじゃない」
「・・・ウワサの姉上ですかな?」
「ふふ、それこそ企業秘密よ。ただ・・・姉さんはそれほどヒマじゃないわ」
 綾香の不適な態度に、しかし、リッパーは鼻を鳴らしただけだった。
「怖いひとだ・・・いいでしょう―――」
 スッ、と五つの影が消えた。
 リッパーは、紳士の笑みを浮かべ、綾香に背を向ける。
「取引は成立です・・・」
 その言葉を最後にリッパーは社長室を後にした。
 ドアが閉まりきったのを確認すると、一気に安堵の波が押し寄せてきた。
 緊張を解いた綾香は、安堵の表情で椅子に身を沈める。
 そんな綾香に、セリオは深々と頭を下げた。
「申し訳ありませんでした」
 そう言ったとたん、セリオの右の掌がバラバラと砕けて、床にはねる。
「別に良いわよ・・・でも、ちょっともったいなかったわね」
 綾香の胸元を飾っていたネックレスも、中央を飾っていたダイヤに、半ばまで亀裂が入
っている。
 敵の攻撃は、セリオの手を貫通していた。
 そして、綾香を傷つけるギリギリの位置まで、届いていたのである。
「しかし・・・よろしいのですか?」
「ん? そうね・・・でも、今はNASAより鶴来屋が重要なのよ。どーも、あのお姉さ
ん、妙な動きが増えてるわ」
「ヨークは動かせないはずです。千鶴女史の監視には十傑衆『爽やかなる雅史』様が直々
にあたっておられますし・・・」
「んー・・・でも、やっぱり気になるなぁ。」
「しかし、詮索が過ぎれば、合衆国を敵に回す可能性もあるかと」
「・・・あの国の方が、ブラック・リーフを毛嫌いしてると思うけど?」
 セリオは、星の智慧派をお忘れですか? と、落ちた指先を拾いながら言う。
「んー? でも、あの団体が政府に食い込んでるって・・・確かな情報なの?」
「事実、南太平洋に派遣した調査隊が襲撃されています。敵は明らかにプロ、報告による
ならば特殊部隊の装備であったと・・・幸い、十傑衆のお二人『赤貧の理緒』様と『マル
チ・ザ・メイド』様が阻止されましたが」
 十傑衆が二人いれば、第七艦隊でさえ食い止める事が出来るはずだが・・・
 問題は―――
「インスマス面が目撃された・・・」
「・・・」
「・・・」
「はぁ・・・、セリオ、アスピリン頂戴・・・」
「解りました」



 瑞穂の細腕捜神記
 ――邪神胎動編――
大『踊る炎の大捜査線! レッツ男心!』



「・・・」
 はい、どうもどもう、みずピーです。
 今日は心持ち静かにお届けしております!
 なんか、上から、下からの圧力に、じりじりと陣地を狭められている今日このごろ、皆
さんいかがお過ごしでしょうか!?
 わたし?
 わたしは元気です、これこのとおり、クロレラ満載の緑色血液は、どくどくと耳の後ろ
の方でうるさいです。
 さて、今日は本業です!
 みなさんうっかり忘れがちですが、瑞穂は産業スパイなのです!
 暗いオフィスを輪っかウィルスに怯えながら、中村源文風にほふく前進です。
 来栖川の秘密をスッパ抜き、明日の朝刊に載せたり、フォーカス持っていくのが仕事で
すね。瑞穂はすっかりパパラッチ!!!!
 はっ!?
 嘘です! それ違います! ブラックメンの嘘っこ情報です!
 瑞穂の言動に、故意的な偽証が多分に混じっていた事を、今ここで謝らせてもらいたい
です! 瑞穂は真実しか言わないの! 一部マスコミには、ぜひとも見習ってほしい今日
このごろですね! まったく近頃の犯罪報道に関しては、瑞穂も一言ガツンと―――
「ふんふんふぅん、なにをいまさらぁ! これだから、アマアマちゃんはこまんのよ! 
どくしゃにこびるなんて、じょていのすることじゃないもん」
「黙れ、馬鹿」
 ポカ
「ふみゅぅ・・・パンダのけんぞくはすぐたたくからきらいぃ」
 泣けばいいと思ってんのか、この小学生頭脳はっ! 貧弱 貧弱 貧弱ゥ!
 ランドセル背負って小学校いけ! カード集めでもロボトルでもなんでもするがいいわ!
どうして最近の小学生って、ああ戦いを好むのかしらん!?
(いいえっ! そうじゃない! そうじゃないよみずピー!!!) 
 その小学生にココロ奪われる一部、一般からかけ離れた境地に至ってしまった人々が諸
悪の根元と言えばそうなの! でもね、胸のない女の子が世間の注目を集めるのは瑞穂に
とってはお祭り騒ぎです! これで将来メイド職に就いて、常に猫耳を頭につけてりゃ、
瑞穂の魅力で、モスラの幼虫狙い撃ち!!!!!!!!!!

「さて、迸る劣情に身を委ね、怪しげな空間へフォールドアウトしている瑞穂さん」

「うわっ!?」
 セリオさん!?
「いつのまに現れたんですか? わかりました、瑞穂のリミピッドチャンネルをトレース
しましたね!? 今世紀最大の悪法である盗聴法しらないんですか!? 悪いことするヤ
ツにはネゴシエイトですよ、ショータイム!」
「このSS読む大半の方にとっての悪法は児童ポルノ法であると推測します」
「そ、それはそれで・・・問題発言では」
「それに―――巨大ロボットで交渉相手をタコ殴りにするのはネゴシエイトとはいいませ
ん、そんなことよりダイノボットが死んだのが超哀しいです、あのつや消しブラウンゼブ
ラに、実はメロメロの私だったのですが・・・」
「そんなことはどうでもいいのです! サ○バスターの科学考証の次くらいにどうでも良
いです! ちみちみなんとかっつー歌を歌う坊主二人組みの存在意義くらいどうでも良い
のです!!! いつのまに現れたのですか!? 笛を吹きますよ! 笛を!」
 ぴ〜♪
「いつのまと言われましても、わたし、瑞穂さんの携帯電話ですので・・・、ホラ、この
首輪型ストラップも、SM趣味プンプンで、その手の趣味人には垂涎ものです。オプショ
ンでお兄ちゃんと呼びましょうか? ごっつんこ」
 お兄ちゃん!?
 瑞穂の中で、初代地上最強の妹兵器『ユイ・ナルサワ』の恐怖が蘇ります!
 くっ! もはやポニーテールで対抗するしか!
「ち○せ!」
「お兄ちゃん!」
「・・・アマアマァ」(ぶ〜)

 ぅはっ!? 
 瑞穂のエアマスター並にちっちゃな脳みそがプルンと震えました!
(備考: 藍原瑞穂、深道ランキング97位)
 お兄ちゃんで思い出しましたが!!!!
 昼間あった、あの柏木初音とか言う少女のことで、大変な出来事が起こったのです!
 以降回想モードに神風特攻であります!!!!!
(神風! 瑞穂には神風の二文字に忌まわしい思い出がある! だが、あえて語らなけれ
ばならない! 初音の秘密と、恩師ツェペリ男爵の悲しい最期について―――)

◆

「お兄ちゃん、肉じゃがだよう」

 ランドセル女子高生の、お兄ちゃん攻撃に瑞穂はクラクラです。 
 出ちゃいそうです!
・ ・・
 鼻血がですよ!
「藍原さん、以後は通訳します」
「通訳・・・」
 


 お兄ちゃんお風呂湧いたよう → 東、西、南、北、中央不敗となるのだぁぁっ!



 以降、同時通訳。

 可愛いマスコットは、セリオさんの気の利いたエフェクトにより、銀河○丈そっくりの
声で言います。
「ジー○ジオン!」
「名前は聞かれる前に応えるが、真の紳士の礼儀というもの!!! 藍原瑞穂、人呼んで
みずピーです! 心の一メガをカウントしてますか!?」
「してねぇよ」
「明日からするが良いです! 幸せになるためにも!」
「てめぇみたいな社会に適合出来ねぇ博士くんは、心のトモダチをカウントしてろよ! 
穴掘ってメットかぶって、年中半ソデの、貧乏魔法少女とツッコミババァに囲まれて、幸
せに生きて行けってんだ、この―――半端ヒロイン!」
「ぐはっ!」
「ちったぁ、本筋に絡め!」
「おぐっ!」
「てめぇ、ポルナレフが今なにしてるかしらねぇだろ!?」
「お、おおぅ・・・」
 思わず唸る瑞穂を見て、私と友情パワーで結ばれた詠美さんは、
「みずピーがピンチだぁ!」
 と、楽しそうに言いました!
 ちくしょう! あとで熱いオデン食わせてやる!
 と、思っていたのですが―――

「詠美、みずピー、助ける!」

 詠美さんは、怒り狂って、髪の毛を逆立てました!
 緑にしか見えない、異様なスペクトルを放つ髪の毛は、徐々に金色になり、長く伸びま
した!
 その影響でしょうか!? 眉毛が! 眉毛がぁっ!


「明鏡止水! 見えた水の一滴!!!!!!!!」


 すっかり関東なんとか組みたいになった詠美さんは、一言大声で、くりりぃん、と叫ぶ
と、猛然と初音さんに体当たりをぶちかまします!
 しかしっ!

「てひひひっ! 甘いのはテメェっスよ! 食らえ不死人めぇっ!」

 柏木初音のスライディングサーベルが唸りました!
 サーベルは、鋭い残像を引いて、詠美さんの頭部に迫ります!
「あぶない詠美さん!」
 嗚呼! そこには、詠美さんのコントロールメタルが!
 唯一、不死身の詠美さんの弱点である、制御金属球がっ!
 ですが、詠美さんはそれを予測した上での、強引なタックル!


「これだから、ちょーアマアマはぁっ!!!!!」


 詠美さんは余裕の大笑!
 わたしは大いに驚きました!
 仰天です!

 バカッ!

 詠美さんの頭が開いたのですっ! そしてその中には!!!
「な、なんですとぉっ!?」

 ギューーーーン!

 唸りを上げる二本のローラー!
 水平に装備されたそれは、高速で回転しているのです!!!
「ふふふふふぅ〜! これぞ、じゃくてんこくふくバージョン! サン社員っ!」
 柏木初音は、驚愕に震えて吠えました。

「ってーか! 脳みそどこにはいってるんだっ!?」

「甘いですね、初音さん! 詠美さんにそんなものあるワケないです!」
「ムキィィ! ちっちゃいけどあるもん!」
「だから、どこに!?」
「おしり!」
 詠美さんの、JISマークがあるお尻から、シュコッと、ガラスビンが飛び出します。
 中にはオリジナル・マモーの、ミニチュア版が浮いていました!!

「うふふふぅ、あたまのちょきんばこを、かってにかいぞーして、ローラーしこんだのよ
ぅ!」

 なんて非常識!
 なんて奇怪!
 なんてデンジャラス!
「ちょ、貯金箱!? 頭に!!」
「ふつーはね、そうつかうところを、詠美ちゃんちょーじょていだから、ろーらーにした
の!! うふふふふぅ!!」

「普通、頭には、脳みそが詰まっているんだぞっ!!!!」

 詠美さんは不思議そうな顔をします。
「うそつき! じゃあどこがちょきんばこなのよぉう! まさかおしりじゃないでしょう
ねぇ〜♪」
 何故!?
 根本的に間違っている詠美さんの方が、何故か態度デカイです! 
 余裕の笑顔です!
(でも・・・勝った! なんか知らんが、詠美さんは余裕です! この勝負、勝ったな!)
 と、瑞ピーは思ったんですけど、それは違ったのです!
 初音さんは、本物の馬鹿だ! と叫んで―――
「しかし! この程度で敗れるようでは、『柏木四華戦』は勤まらぬわっ!!!」
 なぁっ!
 初音さんの、恐るべき寝癖が、真上に振り上げられた―――っ!!

「柏木電光剣! 真っ向唐竹割ぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!!!」

 サーベルを、真っ向から垂直に振り下ろす!
(いけないっ!)
 ローラーは、突く攻撃には有効だがっ!!!
 そしてっ!
「ふみゅ? なにしてんのぉ?」
 頭の悪い大庭詠美は、それに気付いていないっ!!!
 ローラーは、突きを弾き返すが―――

「ふははははははは、弱点克服ならず! 大庭詠美やぶれたり!!!!!」

 縦方向からの『斬る攻撃』には、驚くほど弱いっ!!!! 
 幸運(LUCK)を勇気(PLUCK)に変えた、初音さんの一撃が!

 ズパァァァッ!

 哀れ! 大庭詠美、コントロールメタルごと、真っ二つ!!

「だからドリルははずせといったのよぉぉぉぉーーーーーーーーーー!!!!」

 真っ二つにされた詠美さんは、断末魔と共に大爆発!
 さらば友よ! 
 そしてありがとう・・・

 カランカラン・・・!!!

「おや?」
 足元に転がってきたのは・・・コントロールメタル?
 そうか・・・斬撃の一瞬、かろうじて直撃を避けたのですね・・・
 私は、詠美さんのコントロールメタルを拾い上げました。
「最後に笑うのは、実は、詠美さんなのかもしれません!!」
 地上にゴキブリの栄華がありえないことを知る瑞穂です!
「ですが! あなたのおそらく永遠に続くであろう死と新生も、無駄ではないのです!」
 そう・・・
「何故ならば、この爆発! この業火! これでは―――」
 さしもの柏木初音も、蒸発しているに違いなく・・・
 しかし! 

 ガシィン・・・ガシィ・・・ガシィン・・・

 爆炎の中から響きまくる、この不穏なSE!
「これは足音・・・まさか!?」
 そのまさかでした!
 炎の中から現れたのは、ランドセルを背負った女子高生! 
 柏木初音その人です!
「こ、これがエルクゥの本当の姿・・・」
 ただただ驚愕するのみです!

 しゅるるるっ!

 爆発のダメージで半ばからへし折れていたサーベルが、瞬時に再生されました!
「ついでだ! 貴様も滅びろ!」
 サーベルの狙いが、瑞穂に定まります!
 瑞穂は恐怖にすくんで動けませんでした・・・嗚呼、瑞穂最大のピンチ!?
「ふふふ! 最高グロォォーーーーーーーー―――」
 瑞穂もうダメ!
「助けて―――」

(助けて祐介さん!!!!)

 その時!!

 ビシッ!

 紅い閃光が閃き! サーベルを弾きました!
「あン!?」
 瑞穂を襲うサーベルを退けたのは、一輪のバラの花!!!!
「だぁれ!?」


 ―――私が誰か、貴女はもう知っているはずだ。


「にゃ!?」
「瑞穂をいじめて良いのは、昔からあたしだけなのよ」
 そそそ、その声はっ!?
 風! 
 突風! 
 舞い踊る桜吹雪の中!
 黒い影が姿を現しました! そしてそれは―――

「か、香奈子ちゃん・・・」

 黒いマントを翻した香奈子ちゃんは、フンと鼻をならします。
「か―――貴様っ!?」
 なぜか焦るマスコット少女に、香奈子ちゃんは再びフフンと鼻で笑いました。
 香奈子ちゃんが一歩踏み出すと、マスコット初音は一歩下がります!
「くっ! 柏木電光剣! 真っ向―――」
 あっ! あの技は、詠美さんを破った技!
「危ない香奈子ちゃん! 避けてっ!!」
「ふっ・・・徒労ね」

 ズバァァンと飛び出したサーベルを、香奈子ちゃんは、親指と人差し指でズギャーーン
と受け止めてしまいました!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 という、意味不明の効果音があたりをくるくる取り巻きます!
 香奈子ちゃんは、まったく余裕の表情で微笑み、柏木初音はそのまったく逆の、顔面蒼
白になって、ヒッと悲鳴を上げました!
 香奈子ちゃんの拳!
「あっ! 香奈子ちゃんの拳に・・・!?」
 香奈子ちゃんの拳に奇妙な紋章が!!!!
 嗚呼、それは・・・
「キ、キングオブハーッ!?」

「そう・・・その通りっ!」

 初音はドギャースと衝撃を受けて、みっともなく転がります!
「ゆ、許して・・・」
「NO!」
 香奈子ちゃんの掌が輝きました!!!!
 
「ふるえるぞハ―――トォッッ!!!!」(CV:関 智一)

「はわぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「燃えつきるほどヒ――――――トォッッ!!!!」(CV:関 智一)

「た、助け・・・」



「爆殺!!! 萌葱色の波紋疾走!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



 一瞬にして決着がつきました。
 リーフファイトのルールでは、頭部を破壊されるとファイター失格なのです。
(余談ですが! 詠美さんは、ずぅっと昔に失格になっています!)
 後に残ったのは、金髪の負け犬でした・・・
 香奈子ちゃん強い! 香奈子ちゃん素敵! 香奈子ちゃん最高!
 倒せない敵を倒す、わたしの香奈子ちゃん!
 そこにシビレる! あこがれるゥ!
「瑞穂」
「なに?」

 パンッ!

 えへへ、またぶたれちゃった♪
「さて・・・柏木初音というか、なんというか―――」
 香奈子ちゃんは、左右非対称のいわく言い難い表情をすると、奇妙な事を口走ります。
「どうしてこうなったのかな? 偽者の柏木初音」
 え? 
「わ、わたしは本物の柏木初音だっ!」
「そうかな?」
「ど、どういう意味っ!?」
「ふむ・・・なるほど、柏木楓の『一人両身』の術か・・・」
「!?」
「なぁ、そうなんだろう―――」
 香奈子ちゃんは、愉快そうに、そしてキッパリと言いました。


「―――矢島くん」


「へ? 香奈子ちゃんなにを言って・・・」
「ががががぎぎぎぎぎぃぃぃっ!」
 うわ
「憑き物が落ちたようね・・・」
 香奈子ちゃんの声を合図にしたかのように、ポムッと奇妙な音がして、ピンク色の煙が
立ち昇りました。
 中から出てきたのは・・・
「ふはっ! ハァハァ・・・俺ぁ一体?」
 あ、あれれ?
 矢島さんだ・・・!?


ED「ハリキリじいさん・ロックンロール」
 

 つづくっ!!!!!



 その頃のポルナレフ!

 その日、横浜はひどい豪雨だった。
 時刻は深夜である。
 雨に濡れた黒いアスファルトは、街の下品なネオンを反射して、狂気的な輝きを帯びて
いた。
 俺は、トラックに揺られながら、旧い友人に声をかける。
「パッキー・・・世話をかけるな」
「ん? あぁ・・・気にするなよ。ジョニーたちの弔い合戦ってんなら、俺達が協力しな
いってほうが変なんだ」
「そうだな・・・」
 パッキーとジョニーは親友同士だった、ウサギと人類、ひいては愛玩動物と万物の霊長
という、高い壁を乗り越えて友情を交わし合った仲なのだ。
 年中発情期という共通項があったにしろ、これは驚くべきことだろう。
 だから―――
 一番ジョニーの死を悲しんでいるのは、このウサ公なのかもしれない。
「なぁポルナレフよ・・・」
「ん?」
「聞いておきたかったんだが・・・いざとなったら、あんた本当にハリーを殺れるのか?」
 装備をチェックしながら、しかし鋭い表情で俺に問うパッキー。
「それは・・・」
 思わず口篭もった俺に、パッキーは厳しい口調で叱咤する。
「俺もカネギンも兵士だ、いつだって死ねる覚悟だけはある・・・だがな、直前で決心が
鈍るようなチキンのために犬死にするってのは、正直ごめんなんだよ。いいか、兵士の最
たる不幸ってのはよ―――」
「わかってるよ、兵士の最たる不幸ってのは、良い上官に恵まれない事・・・だろ?」
 ・・・殺された友人の葬式に、参列するってのは・・・もう沢山だ。
「―――だから、皆を北海道の王国に帰したんだよ・・・俺は覚悟を決めている! 俺は
・・・ハリーの狂気と、あのとぐろを巻いた、二本筋の殻を砕く!」
「ヘッ、せいぜい期待してるぜ、ポルナレフ殿―――さて、聖書の朗読は終わったかよ、
カネギン!」
「悪いね、聖書は教会においてきたヨ」
「ほっ、神父が聖書を忘れたってのか?」
「もう・・・戦場に持ち込むのはやめたヨ・・・」
 カネギンは、いつだって、戦場にも聖書を持ち歩く、妙に信心深いキリンだった。
 なんでも、聖書を持っていれば地雷を踏まないという、彼独自のジンクスがあるらしか
った。
 そして―――ついたニックネームは『神父』。
 だから、カネギンが本当に神父になったときは、仲間達とおおいに笑ったものだ。
 パッキーが釈然としないという顔で、毒づく
「へっ! 地雷でその細長い足が千切れ飛んでも、俺は拾ってやらねぇからな」
「ふふふっ、戦場で自分一人生き残るのは、もう懲り懲りだヨ・・・僕の代わりに地雷を
踏むのは、いつだって友人達だったヨ・・・だから僕は―――」
「フン! あいかわらず辛気臭いお人だよ・・・」
 と―――
 俺達三人を、荷台に乗せて運んでいたトラックが、ゆっくりと止まった。
 運転席から、車の運転を頼んでいたチンパンジー娼婦のジェーンが、厚化粧の顔を突き
出した。
 甲高い声で、忌々しそうに怒鳴る。
「あんたたち、ついたわよ! とっとと地獄でも来栖川でも、好きなところへ行くのが良
いのサ!」
「ふっ、そうさせてもらおう・・・」
 
 俺の、目の前には、巨大な来栖川電工のビルが、そびえ立っていたのだった・・・


「ったく、これだから男ってのはバカだって言うのサ」 



 次回予告!

 柏木初音に化けていた矢島は、鶴来屋での出来事を、瑞穂達に語り始めます!
 その恐ろしい、驚愕の出来事とは、一体何なのでしょうか!?
 そして、スパイ活動を始めた瑞穂の前には、一枚のブルマーが落ちているのですっ!

 その頃、ポルナレフ達の前には、NASA六部衆の影がっ!!!

  次回! 『恐怖の崩拳! 放て、瑞穂の最終奥義!!』にぃ・・・
      レディ、ゴーッ!!!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ちょいと、間が開きすぎましたか・・・

http://www.interq.or.jp/black/chemical/