投稿者:MIO


 カランカランカラ〜ン

 カウベルの音に、由綺と話しこんでいた俺は顔を上げた。

「こんにちわ、冬弥君、由綺ちゃん」

「いらっしゃい、みさき―――」
「あ、こんにち―――」

 ・・・
 ・・・
 デケェ!!!

 店に入ってきた美咲さんの鼻は、異様にデカかった!

 俺は吹いていた皿を床に落とした。
 由綺は、コーヒーにミルクを注いでいる途中だったのを忘れた。
 椅子に座って本を読んでいたマスターが、椅子から転げ落ちる。
 彰が真っ白になった。
 
 ・・・

「うふふ、今日はにぎやかね」
 
 と、いつもの優しい微笑を浮かべ、カウンターにつく。
 デケェ!
 近くで見るとますますデケェ!
 マスクメロンくらいある!
 恐怖・・・そう、それは恐怖だ! 日常に現れた非日常!
 異形の存在!
 だがそれでも、人は知的好奇心を失わないものなのだ。
 恐る恐るだが、最初に質問したのは、この俺だった。

「み、美咲さん・・・鼻、どうかした?」

「?」
 わからない、という風に小首を傾げる。
 巨大な鼻が、ぶるんと揺れた。
 鼻がなけりゃ、可愛い仕草なのかもしれないが、今はただただ、恐ろしいのみだ。
 俺は震えながら、美咲さんに水を出す。
 美咲さんはいぶかしがりながら、それを受け取った。

「一体どうしたの、皆―――」

 言葉が途切れたのは、グラスに映った自分の顔を見たからだった。




「は、鼻デカぁっ!!!!!」



「って、今気づいたんかーい」
 
 彰は、優しくツッコんだ・・・