越えねばならない壁  投稿者:MIO


 廊下の向こうに、マルチが立っている。
「・・・」
 その距離、約10メートルと言ったところか。
 どこに行くのか知らないが、まるで3歳児がお使いに行くような、危なげな足取り
だ。思うんだが・・・歩き方ってぇのは、ワリとそいつの人となりを表したりするよ
な。彼氏がいる女と、いない女では、結構歩き型が違うもんだ。
 さらに言うなら、男に興味が無い女と、ある女では、もっと違う。
 マルチは・・・
 男に興味を持つ以前に、ありゃ、ガキんちょの歩き方だぜ。
 あのポテポテとした歩き型を見てると、つま先に間接が組み込まれてるのかどう
かすら、怪しくなってくる。
 手を振れよ、手を。どうして孫○空が走るみたいな格好で歩くんだ。
「・・・」
 まぁ、別に良いんだ。
 壁さえ越えてくれれば良い。
 今日こそは・・・きっと今日こそは!


「ぅお〜〜〜いっ! まーるーちー!」

 
 あたりに人が見えなかったんで、俺は遠慮なく大声でマルチを呼んだ。
 俺の大声に、一瞬ビクッとなったマルチだったが、すぐにキョトキョトと俺を探
し始める。

「マルチ! こっちだ、こっち!」

 マルチは振りかえり、パッと笑顔になった。
 嬉しそうに、てーーーーーーーーーーーっ、と駆けて来る。
 そして、半分ほど来たところで―――


 ぽて


 コケた。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「ダメかっ!」
 ダメなのかマルチ!
「どうしても5メートルの壁は越えられないのか!?」
 俺は吠えた。
 言い知れぬ絶望を胸に吠えた。
「ダメだってのか、ええ!? マルチよぉっ!!!」
 その、俺のあまりにも悲痛な叫びに、マルチはオロオロし、もたもたと服の汚れ
を払ってから、にっこり笑った。
 泣かなかったので、誉めてくださーい。
 と、言いたいらしい。
「・・・」
 だが俺は、相変わらず苦渋に満ちた表情でマルチを見つめていた。
 マルチはさらにオロオロしたが、やがて

 ぺち

 と手を叩いた。なにか閃いたらしい。見ていると―――
 マルチは廊下に手をついて、

 くりっ
 
 と、でんぐり返しをして見せた。
 そして、てへへと笑った。
 確かに可愛いが・・・


「そ―――そんなことばっかり上手くなりやがって!!」


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 うぃ、今回、マルチ、台詞、無し。
 


>久々野彰さま
 毎回、俺のアレな話に感想書いていただいて・・・
 ホント、ありがたいっス。
 すんません、感想書きにくい内容ばっかで。(爆)
 ・・・
 ・・・
 いつかきっと! いつかきっと、感想の書きやすいSSをっ!!! 
 ・・・いつか・・・きっと・・・


>夜蘭さま
 毎度、本当にご迷惑おかけします。
 あんな無茶な内容に感想書いてくれるたぁ・・・
 本気で感激なカンジです。
 あ、我らが女帝、詠美さまは永眠(駄洒落)なさってはおりませんので、ご安心
を・・・、たぶん俺が飽きなければ、きちんと復活するような気がします。
 恐らく。