瑞穂の細腕コンコンチキ  投稿者:MIO


 以前のアレより、若干変更があった人物紹介!!!!

 藍原瑞穂  とっても愉快なメガネっ娘。社会人一年生。香奈子ちゃんLOVE。
 大庭詠美  瑞穂とコンビを組むことになった社会人一年生。驚くほどバカだが、漫画
       の才能に関しては、世界を覆しうるほどの実力を持つ。
 太田さん  暗殺格闘技の使い手であり、古式いざなぎ流の太夫としての資格も持つ。
       生れつき全身のチャクラが開放されており、エルクゥと素手で渡り合う。
 柳川さん  トイレットペーパーを三角に折る癖を持つ。ワリと瑞穂が心配。
 来栖川芹香 来栖川電工の社長にして、『K・A・L』の統括主任。
 来栖川綾香 来栖川電工の副社長にして、『AF計画』の中心的人物。
 ポルナレフ 伝説のアウトロー『デス・タートル』の正体は、若かりし頃の彼である。
 ハリー   哀しき業を背負うカタツムリ。テレポート能力を持つ、雌雄同体。
 ミシェル  人類ヒト科パツキンボイン。ポルナレフとはかつて夫婦だったこともある。
 三郎    印度産オウムで、ラッパー。白血病に冒された弟がいる。
 カネギン神父 キリン。凄腕の傭兵として活躍していたが、嫌気がさして神父に。
 グリーン  事情通のアルプス鳴きウサギ。元はKGBの腕利き諜報員だった。
 ミーラン  ハリーの恋人だったインド人で、NASAの職員だった。すでに死亡して
       おり、死因はカレーを千杯食わされたから。・・・と、思われていたが?



 ―――こうして、瑞穂の左腕には金色のドリルが装着されたのである・・・


 真 瑞穂の細腕シリーズ
  ――黄金時代――
 第319階『戦慄! 漆黒のみずピー!!』

 
 おわ、めっさワケわからんアバンタイトルやないケ!
 おかんほんまワケわからんわ、なんやのもぉ!
 あーもぉええわ、よお言わんわ、もぉええっちゅうねん、はよご飯食べ、おとん帰って
きよるで! ほら、さっさか食べぇな! 煮付け残したらあかんで!

「っちゅーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーわけでぇぇぇぇぇぇっ!!! やっ
てきましたくるすがわぁぁぁぁ!!! いぃぃやっほぉぉぉぉぉぉぉぉーーーっ!!」
 発情期の猿みたいに雄叫びを上げる詠美さん。
 その雄叫びは高周波振動のショックウェーブと化し空間を駆け抜けます。そして愉快な
事に、その振動は都庁の固有振動数と一致してしまいました。
 巨大なコンクリートの塊が身震いする様は、空前絶後の異景で、質量すら感じさせるほ
どの圧倒的な不安が、さながら津波のようにして首都圏全域を呑みこんでゆきます。
 それは、この世の終わりを思わせるほどであり、あらゆる猟奇的絵画を上回る恐怖を、
一千万都民に与えました。情著の発達が著しく遅れているという、致命的な疾患を抱えた
現代の若者たちは、心を責めさいなむプレッシャーに耐え兼ねて、暴走を始めます。渋谷
を中心に一斉に暴動が起き、国家の治安は急速にそのレベルを下げるのでした。
 そして我らが都庁は、その巨体に似つかわしくない金属の軋むような甲高い断末魔を上
げ、ボロボロと緩慢な死を迎えたのです。
「嗚呼、国家転覆のピンチ!?」
 むぅ、こうなっては仕方あるまい!
 それ以上の混乱を避けるべく、私は黄金のとんかちを手にするのでした。
 私はにっこり笑って、とんかちで詠美さんの頭頂部を三回叩きます。
 ゴン・・・
「みゅっ!」
 ゴン・・・
「っ!?」
 ゴン・・・
「・・・・かくっ」
 詠美さんは、ばったりとアスファルトに倒れ伏しました。ここが彼女の墓なのです。
 野ざらしです。恐ろしいですね。怖いですね。
 怖い怖い。(←川澄綾子チックに)
 死者の骸を粗末にすることは、『がしゃどくろ』『大髑髏』『以津真天』『手目玉』等の伝
承ににみられるように、わが国ではタブー中のタブーです。ですが、みずピーはあえてこ
の禁を破ろうというのです! 人の進歩とは迷信の闇を、科学という名の光で照らす事な
のです、そして、科学とは勇気なのです! ブレイブ! 
(余談ではあるが、瑞穂はかつて『無礼武』という名の暴走族のヘッドを勤めた経験がある)
 みずピーは勇者だから、勇気は万全です! 怖くてもガッツで補っちゃいます! 
 あ、でも・・・
 本当に怖かったら『香奈子ちゃん助けて』って叫んじゃうかも。てへっ☆
 とは言え、倒すべき神国JAPONEの敵とは言え、こんなにあっさり、公衆の面前で
天誅かまして良かったのでしょうか・・・
「罪!? 瑞穂は、罪人なの!?」
 ・・・・
 ま、それはそれ、これはこれ! 生き抜くための大原則! 弱き者は死すべし死すべし! 
所詮この世は焼き肉定食! 笑って渡ろう涙橋! 笑って脱出トラの穴!!
「あー、スッとしました」
 スッとしたら、とたんに詠美さんが哀れな女に見えてきました!
 私ったら! この哀れな女性を道端に放っておくつもりだったの!? ダメダメ瑞穂! 
そんなことしちゃダメ! だってお母さんと約束したじゃない!

『瑞穂・・・あなたは、あなただけは、私と同じ道を歩まないで頂戴・・・お願いよ』

 そう!
 だからこそ私は、死にかけた同志を見捨てるわけにはいかないのです!
 母さんが父さんにした事を、模倣してはいけません!!
「見ててねお母さん!」
 ぐったりとなってしまった詠美さんを抱えて、私は改めて来栖川の本社ビルを見上げま
した。大きいです。むやみにデカイです。なんだか変形しそうです。ぶらっく汁ばー!
 そうだ! せかっくだから拝みましょう、南無南無〜♪
(香奈子ちゃんと幸せになりたいです・・・)
「八百万の神々よ! みずピーに力を!!  高天原に神座ります、はらえどのムニャム
ニャ・・・」
 私が当初の目的も忘れ、わき目も振らず一心不乱にお願い事をしていると・・・
「・・・」
「はい? モシ、そこのお方、何かお悩みかな? ですか?」
 背後から聞こえた幽かな囁き! 暗闇から忍び寄る声! だーくうぃすぱー! 
 怖いけど、これくらいなら平気です! だって、瑞穂の持ち霊は河島はるかさんのお兄
さんなんですから! シャーマンファイトです! いえい! 
「後ろからみずピーのうなじに囁きかけるのはだあれ!? みずピーの持ち霊は、実はテ
ニス好きのお兄さんだけではないのよぉっ!」
 超! 囲碁好きの雅人も、実は持ち霊でおじゃ!
 みずピーが、ファイター・モードに変形しながら振りかえると、黒帽子と黒マントをか
ぶって、黒猫の剥製を鍋でグツグツ煮ている不思議なお姉さんがいます。ぱっと見たとこ
ろ、辻占いの類ですね。某漫画化のセラムンパロディかと思っちゃいまいした!
 襲われる心配はナッシングのようですが、一応は警戒しつつクルーザー・モードに変形
しました。レイブンを嘗めて欲しくないですね! ないんぼーるはどこ!? オラ、集め
て栗リンを生き返すんだからン!
「・・・」
「は? 背中に妖しい亡霊が見える?」
 半分だけ幽世を見ているその瞳は、私の持ち霊を見つめているワケではありませんでし
た。そこで、私はハタと気づきます
「あ、詠美さんの事ですか? この人生きてますよ。もう少しで死ぬかもしれませんけど」
 頭から血を流しつづける詠美さんの顔は、なんだか毒々しいスミレ色!
 軽く揺すってあげると、うわ言のようなものを、ブツブツともらします。

「・・・・じゃーちきゅーよってくー? ・・・う〜ん、むにゃむにゃ、おなかいっぱい」

「ほらネ?」
「・・・」
 辻占いお姉さんは、ゆっくりとビルを見上げ、ぽそぽそと何か言いました。
「え? この会社の新入社員ですか? ですか?」
 こくん
 むぅ、すっかり話題を変えられちゃいました!
 会話のジェットストリームアタック!! 三連星はやはり手ごわい!
 みずピーは、高鳴る鼓動を押さえながら、慎重に言葉を選びました!!
「答えは、NO! みずピーは派遣社員ですから新入社員とかいう、青臭いボウズどもと
は、微妙にですが、背負った舞台背景が異なります!」
「・・・」
「どこの部署か? メイドロボ部門の営業課に配属されました! みずピー営業やったこ
とないのでドキドキです! っていうか、派遣社員が営業やるっての、どーなんでしょう
か? いーんでしょうか?」
 ふるふる
「知らない? そりゃそうですね、自由気ままな根無し草、住所不定でノーモアナッシン
グなカンジの、屋根無し地蔵にはそうでしょうよ! 違うか辻占い!!? でもでも、み
ずピーは平気です! だって、頼もしい相方がいます―――よいしょ」
 私は、ぐったりした詠美さんを抱え直しました。弛緩した人間は、異様に重くてヤにな
ります。
「ふぅふぅ・・・」
 疲れるなぁ・・・
 詠美さんの後ろに回り込んだ私は、鼻をつまんで喋りました。

『はーい、わたしエイミーよ! ろーるぱんだいすきー! おやつすっき! おひるねす
っき! みずぴーは? もっと〜すきっ♪』

 かんかんのう! 詠美さんの手足は私に操られ、もはや意のまま、されるまま! これ
ぞ忍法、傀儡糸!! その身が朽ちるまで踊りつづけるが良いわ! 朽ちたところで魔界
天生の餌食だがなウリリリリリィ! 赤石ィ!
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「どうです! え? すばらしい? そーでしょそーでしょ! それが宇宙の意志かと思
われます。街を探検して地図を書く黄色い上着の男よりも、私は宇宙の意志に近いところ
にあるのです! 聖鉄鎖騎士団の長たるものが信仰を恐れてはなりません! くじけブラ
ックメンの企みをっ! 香奈子ちゃんLOVE! ハイごいっしょに、香奈子ちゃんLO
VE!」 
「・・・」
 お姉さんも一緒に『香奈子ちゃんLOVE・・・』と言いました。
 とたんに広がるあったかムード。人類共通の愛言葉! 香奈子ちゃんLOVE!
「・・・」
「え? 仕事は大変ですから頑張ってください、ですか?」
 こくん
 なんで知ってるんだよ! と、言いかけて止めました! そうよね! しもじもの者ど
もは、こんなでっかい会社見たら、恐れおののきますよね! やっかみですか? 嫉妬で
すか? でっかい会社だからって、足かせ付けて石臼ひくわけじゃないです! 
 はっ!?
 そうよ、そうなんですよ! 瑞穂は、石臼引くよりも大変な仕事をしなきゃいけないん
でした!!!!
「そーなんです、瑞穂は普通の人よりずっと大変な仕事しなきゃいけないんです」
「?」
「ここだけの話ですけど・・・瑞穂は産業スパイとして、この会社に乗り込んできたんで
す!」
「・・・」
 おやおや、流石の辻占いも、驚きに目を見開きましたよぉ? けひひひっ、人を驚かせ
るのは気持ちいいっス!
 優越感という陰険なぬるま湯に浸りながら、ふと腕時計を見ると・・・あやや!
「そろそろ時間です! お姉さん、あの、さっき言ったことは秘密ですから! 他言無用
ですよ! 喋ると、暗黒面に引き込まれます! それじゃ、失礼しました!」
「・・・」(さよーなら・・・)
 小さく手を振るお姉さんに見送られ、私は来栖川に乗り込みました。
 そお!
 これからがみずピーの、本当のスタートなんです! スタートライン! 
 見てやがれ武田鉄○!!!


 後述 
   この時の私は、まさか、あの辻占いのお姉さんが、来栖川電工の社長その人であろ
   うとは、思いもしなかったのでした・・・
   そして、私がその事実を知ることになるのは、12年後、引越しの際に畳をひっく
   り返したときなのですが・・・
  
   それはまた、別の話


 一方その頃、ポルナレフ

 俺は、秋葉原の片隅にジャンク屋を構える、古い友人の元を訪れていた。
 アルプス鳴きウサギのグリーン・・・伊賀忍軍とドンパチやってた時にはずいぶんと世
話になった。
「聞いたぜ、ジョニーのこと・・・」
 グリーンは、湿気た煙草に苦労して火を付けると、申し訳けなさそうに、小さな耳を伏
せた。 前足に彫られたクラウンの刺青が、やけに哀しく見える。
「ワリィな・・・葬式にゃ顔出せなくてよ」
 言いながらグリーンは、自慢のコーヒーを俺に勧める。
 相変わらず泥臭いコーヒーだ。ひどく不味いが、その感想は口に出さなかった。
「しかたないさ、CIAが張ってたんだ。 葬式の最中に死体が増えるなんて、しゃれに
もならない」
「ハン、この足さえまともに動けばよ・・・」
「医者は?」
「直る見込みはねぇってさ」
「・・・すまない」
「お前のせいじゃねぇよ。俺がドジっただけさ・・・それより、まさか俺の足を心配して
見舞いに来ってんじゃねぇだろ?」
「ああ・・・例のブツ、出来てるか?」
 グリーンは、苦虫を噛み潰したような顔で煙草をもみ消すと、奥の金庫から鉄の塊を引
っ張り出し、俺の目の前に置いた。
 鈍く光る鉄槐は、一見すると銃のようだが、微妙にカタチが異なっている。俺はそれを
確認して、現金をテーブルの上に置いた。グリーンは溜息を漏らす。
「注文どおり、亀でも撃てる44口径だ・・・ほとんどハンドメイドだが、威力も安全性
も申し分なしの自信作さ。俺の最高傑作、銘は・・・そうだな『スケアクロウ』ってとこ
ろか」
 グリーンは自作の銃に銘をつける癖があった、死んだジョニーが愛用していた銃は、た
しか『ムラチューの夏休み』だったか・・・由来は未だに教えてくれない。
 俺は銃を手にとって眺めた・・・いい銃だ。
「・・・かかし・・・これだけの銃で『こけおどし』なのか」
 トニーは、視線だけをこちらに向けて、吐き捨てるように言う。

「ハリーにゃ弾は当たらねぇ」

 ・・・・
「知ってたのか・・・」
「ポルナレフ、お前は昔の馴染みだ、親切心で忠告してやるよ・・・・ハリーを殺るのは
止めろ」
「・・・」
「何故か? 勝てないからさ。ハリーにじゃない・・・ハリーを操る黒幕に、だ」
 なに!?
「ま、待てグリーン! 黒幕だって!?」
 グリーンは、やはり知らなかったか・・・とひとりごちる。
「ああ黒幕さ・・・、しかもとびっきりビックなな・・・」
 忌々しそうに言ったグリーンは、再び湿気たタバコに火を着ける・・・
 俺は、その安物のライターがオレンジ色の火を灯すのを、半ば呆然として見つめていた。
 
 つづく


 次回! 『誰も信じるな』  
 来週も、オモシロカッコイイぜ!

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 ユングの愛弟子でもある、ある女性心理学者はこのSSを読んで

 ―――このSSにはストーリーが無い!!

 と叫んだそうである。(大嘘)
 はたしてそうだろうか・・・
 ストーリーの無いSSなど・・・本当に存在するのだろうか?