なんかこう・・・ 投稿者:MIO
 なんかこう・・・どーしよーもない気がする。

 私、松原葵は、そんな気分でサンドバックを叩いていた。
 ときどき蹴る。
 蹴ると、三回に一回くらいの割合で、藤田先輩が

「おー、スゴイスゴイ」

 とか言う。
 なんかこう・・・何にも考えてません、ってカンジがする。
 今日はいい天気だ。
 こういう日は、さすがの私でも、一日中サンドバックを叩くのは、バカバカし
く思えてしまう。
 でも、他にすることなんて思いつかないし、藤田先輩が、三回に一回くらい、

「おー、スゴイスゴイ」

 とか言うので、なんかこう・・・このままでも、別にいーや。
 そんな気分でサンドバックを叩いていると、突然藤田先輩が・・・
「葵ちゃん」
 と、私の名を呼んだ。
「なんかこう・・・思うんだが」
 なにか思いついたらしい。
 私は手を休めた。
「どうかしましたか?」
「葵ちゃんには、格闘家として決定的に欠けているものがある」
 なんだ、イキナリ。
「あの・・・それはなんですか?」
「・・・それ? それって・・・なにが?」
 だから
「私に欠けてるもの」
「・・・ああ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「なんかこう・・・な? ホラ、わかるだろ?」
「えーと」
 困った。
 良くわからない。
 でも、どーでも良い気もする。
 てきとー
「・・・まあ、なんとなく分かります、はい」
「うん、で、まあ、それが欠けてるんだと思うんだ。俺は。葵ちゃんに」
 文法が変。
 伝わるけど。
「はぁ・・・で、どうしましょうか?」
「どうしようか?」
「どうすればいいんですか?」
「どーするの?」
 ・・・
 知らない。
 ・・・
「んーー、とりあえずさ」
「はい」
「いい天気だよな」
 そりゃそーだー
 明日も晴れるんだっけ?
 あ・・・雨とか言ってた気もする、天気予報が。
 でも、いいけど、別に、降っても。
 なんかこう・・・スゴイ困るってワケじゃないから・・・
 空を見る。
 青い。
 バカみたいだ。
「そーですね、良い天気ですよね、本当に」
 もう、ほんとーに。
「まぁ、別に、どーでもいいけどな」
「そーですね、関係ないですよね」
 なんだそりゃー、とか思いつつ・・・
 また、サンドバックを叩く。
 いたた。
 斜めに打っちゃった。
 ・・・
 あー、いい天気。
「なんかこう・・・ダメっぽいよな」
「・・・」
「うん、今日は格別、なんかこう・・・ダメ」
 それ・・・
「今気づいたんですか?」
「いや、ワリと前から」
「ワリと?」
「ワリと」
 ・・・ワリってなんだろ?
 別にいーですけど。
 なんかこう・・・あやふや。
「ワリと・・・どのくらいですか?」
「うん、まあ、ちょっとくらい前」
 ・・・
「ああ・・・なるほど」
 なんとなく、ちょっと分かった。
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」


 なんかこう・・・