にゃんこ楓 投稿者:MIO
 よぉ、藤田浩之だ。
 俺は今、隆山温泉に来ている。
 どうしてって?
 マルチのバカが、料理中にガス爆発かましたんで、我が家は木っ端ミジンコ。
 いつかはやると思ってたが、とうとうやらかしやがった。
 俺は奇跡的に無傷だったが、マルチは病院・・・もとい、研究所送りで一ヶ月休み。
 住む場所を失った俺は、親父とお袋のアパートに転がり込もうと思ったんだが・・・

「あぁ、ダメダメ! 父さんと母さんは、今、おまえの兄弟を作るのに忙しいんだ!」
「ごめんなさいね、浩之。しょうがないから、あんたは神岸さんの家に居候して、私たち
の孫でも作りなさい」
「バカかおまえらは」

 んで、まあ、知り合いに相談したら・・・

「そーいや、浩之は受験勉強ひかえてんだろ? どーせ夏休みの間だけなら、温泉なんて
どうだ? 親戚が隆山でデカイ旅館やっててさぁ・・・、環境は最高だぞ?」

 っつーワケで、やってきました隆山温泉!
 そして・・・
「あの娘、知らないヒトを噛むから・・・」
 俺は楓ちゃんと出会った。

「チッチッチッ」
「・・・」
「チッチッチ・・・楓にゃ〜ん、ミルクでちゅよ〜」
 最初こそ俺を警戒していた楓ちゃんだが、地道な努力が功を奏したのか、いまでは、俺
が側で見ていても食事をとるようになった。
 一度だけだが、俺の側で昼寝をしていたこともある。
 かなり、警戒を解いてくれたみたいだ・・・
 だから、今日は思い切って、指先につけたミルクを舐めさせてみようと思う。
 けっこう大胆なチャレンジだよな・・・、うまくいくだろうか?

「おいでおいで〜」
「・・・」
「楓にゃ〜ん、おいで〜、チチチッ・・・」
 楓ちゃんは、おずおずと近づいてきて、困惑気味に俺を見上げた。
「ほら、恐がらないで・・・」
 楓ちゃんは、俺の指先と俺の顔を、不安そうに、交互に見る。
「大丈夫・・・」
 俺が優しく言うと・・・

 ぺろ・・・

 やった! 
 俺は思わず叫びそうになるのを、必死でこらえた。
「・・・」
 とうとう、楓ちゃんが俺の手からミルクを・・・
 ぺろぺろ・・・
「・・・」
 楓ちゃん。
 ぺろぺろ・・・
「・・・楓ちゃんって―――」


 舌が、ザラザラしているな・・・