ハコの中身はなんだろな? 投稿者:MIO
 昼飯を食ってくつろいでいると、千鶴さんがパタパタと俺のほうに駆け寄った。
 う〜ん、相変わらずキレイなヒトだ・・・
「耕一さん! 今スグ庭に来てもらえませんか!?」
「は?」
 庭だって?
「ど、どうして・・・?」
「いいから早くっ!」
「わわっ、引っ張らないでよ!」
 千鶴さんは、思いのほか強い力で俺を引っ張ると、とうとう、俺を庭に引っ張
り出した。
 強引だなぁ・・・
 途中で柱に頭をぶつけた俺は、額をさすりながら愚痴る。
「イタタ・・・、一体どうしたのさ、そんなに慌て―――」
 俺の台詞は、庭に屹立する異様な物体に、中途で遮られた。
 言葉が続かない・・・あれは、あれは何なんだ!?
「千鶴さん・・・これは一体?」
 千鶴さんは、俺にこれが見せたかったのだろうか?
 ハコ・・・巨大なハコだ。
 人が一人は入れるくらい大きくて、それが4コある。
 特徴は少なく、真っ白なただの立方体だが、黄色いペンキで、デカデカと
『?』と書かれていた・・・
 アレ、良く見ると番号がふってある、右から1.2.3・・・
「い、いったいなんなんだよ、こりゃぁ・・・」
 俺が、箱に回り込もうとしたその瞬間。
「ぱんぱかぱ〜ん!」
 千鶴さんが、やけに明るい声で、ファンファーレの口マネをした。
「な、なんだぁ!?」
 俺の混乱を無視して、千鶴さんは続ける。
「第一回! 柏木四姉妹争奪! チキチキ、ハコの中身はなんだろな〜っ!!」
 どんどんどんパフパフパフ〜・・・と、口でしっかり言ってから、千鶴さんは、
ニコニコと俺を見つめた。
 いや、見つめられても困るんですけど。
「さぁ、ついにやってまいりました、運命の分かれ道!」
「あの〜・・・千鶴さん?」
「ハコの中には四姉妹! 見事当てると、結婚を前提にお付き合い〜っ!!」
「だからさ―――なにぃっ!?」
 お付き合い!? 結婚を前提にお付き合いだって!?
「そ、それって・・・」
「ルールは簡単タン! 2〜4の箱の中には、それぞれ、梓、楓、初音がランダム
に入れられてます! 耕一さんは、その中から選ぶだけ!」
「選ぶだけ!?」
「選ぶだけ」
 そ、そうかぁ・・・選ぶだけかぁ・・・
 アレ?
「ねぇ千鶴さん・・・」
「はい?」
 千鶴さんは、微笑んで首をかしげる。
 可愛い。
「2〜4はともかく・・・1番のハコは誰が入ってるの?」
「ああ、それはね―――」
 千鶴さんは、本当に嬉しそうに言った。
「私が入ります」
「は?」
 間の抜けた声を上げた俺に、千鶴さんはもどかしそうに・・・
「ですからぁ、1番のハコには、私が入るんです」
「・・・そ、そうなんだ」
「はい、そうなんです」
 もうしっかりしてくださいほらげーむをはじめましょうほらほら、とかなんとか
言いながら、千鶴さんは俺を、ハコの前に立たせた。
「それでは耕一さん、私が1番のハコに入るまで目をつむっててください」
「な、なぜ?」
「えっ? なぜって・・・誰がどのハコに入ってるか解らないから面白いんじゃない
ですかぁ」
 うふふ、耕一さんったら・・・って、言われてもなぁ。
 仕方なく、俺は千鶴さんの指示通りに目をつむり、10数えた。
「もう、いいかい?」
「いいですよ〜」
 くぐもった千鶴さんの声・・・
 ゲーム開始だ。
「・・・」
 結婚を前提に付き合う・・・か。
 誰が当たっても嬉しいけど、やっぱり慎重に選ばなきゃな・・・
 2〜4のハコには梓、楓ちゃん、初音ちゃんの誰かが入っている。
 そして、1番のハコには・・・
「・・・千鶴さん、服のすそがハミ出してるよ?」
「あら、いけないっ!」
「・・・見なかった事にしてくださいね?」
「・・・」
 1番のハコには・・・絶対に千鶴さんが入っている。
「・・・」
 俺は考える。
 とてもよくない事を考える。
 それは、ちょっとした好奇心である。
 どうなるだろう?
 どうなるんだろう?


 この状況で、1番を選ばなかったら・・・


 どうなるんだろう?