最後のサムライ 投稿者: MIO
 葵ちゃんは、流行に疎い。

「葵ちゃん、PHSとか持ってる?」
 俺の何気ない一言にすら、首をかしげる葵ちゃん。
「は? なんですかソレ・・・ピッチ?」
「・・・知らないんだ?」
「あ、し、知ってますよぉ! 確か、保護者の集まりですよね・・・」
「そりゃPTA・・・最初の『P』しか合ってないじゃないか」
「ご、ごめんなさい! あの・・・私、PHSって、知らないんです!」
 ・・・いや、何と無く分かってたケドね。
 ルーソー(ルーズソックス)履いて学校に来て、って頼んだら、シーソー履いて
登校したからな。
 面白かったんで放っておいたら、葵ちゃん、校門で先生に怒られたんだよな。
 んで、それを葵ちゃんの新しいトレーニングだと勘違いした香坂は、『さるわた
り』を履いて学校に来たんだ・・・
 さすがに、ちょっと反省した。
「PHSってのは・・・そうだ、携帯電話は知ってるだろ?」
「は? ケータイ電話? あれ? ホータイ電話ですか?」
 携帯電話も知らないの? こりゃ重傷だなぁ・・・
「携帯電話だよ、携えるって書く」
「あぁ、ナルホド・・・って、もう、藤田先輩!」
 な、何だよ・・・
「電話を持って歩いてどうするんですか! からかわないでください」
 葵ちゃんは、あからさまに信じていない。
「どうするって・・・掛けるんだよ・・・電話だし」
「え・・・あれ? ホントなんですか?」
「ああ」
「で、電話線はっ!?」
「・・・電波を使うんだよ、だから、外でも掛けられるぜ」
「外でも!? 小銭はいくら要るんです」
「公衆電話じゃないんだよ、個人で所有するの!」
「個人で!?」
 葵ちゃんは、タハーッ! っと、古臭いリアクションで、驚いた。
「あっと驚くタメ五郎!」
 あのね・・・
「ち、ちなみに、これが実物のPHS」
 俺が最近買ったPHSを、ポケットから取り出してみせると、葵ちゃんは、
「ワオ、とってもキュートですね! すごくナウいです!」
 死語連発だ。 
「葵ちゃんも買ったら?」
「そ、そうですね! 便利そうだし・・・持ってないとヤング失格ですよね」
 ヤング・・・といった時点で失格だ・・・
 とは、口が裂けても言わない俺は、笑ってうなずいた。
「買ったら、俺に番号教えてくれよ?」
「はい、もちろんです!」
 こうやって、葵ちゃんも大人になっていくんだなぁ・・・
「さ、電話局に行かなきゃ!」
「電話局? ・・・じ、直にNTTに行っても、たぶん買えないと思ぞ」
「な、何故っ!!?」

 2日後・・・葵ちゃんは、なんとかPHSを購入した。
「藤田先輩、見て下さい、このストラップ!!」

「葵ちゃん、それ・・・サランラップ」
 
「うひゃぁ! こいつはうっかり!」
 あ、葵ちゃん・・