バター 投稿者:MIO
 来栖川芹香は、コップ一杯の牛乳をもって、庭に立っている。

 大柄の執事も一緒に、牛乳を持って立っている。

「・・・・・」

 かれこれ2時間は立っている。

「・・・・・」

 最近、藤田浩之と言う男の子に教えられた。

「・・・・・」

 牛乳を振ると、バターができると言う。

「・・・・・」

 それは、驚きであった。

「・・・・・」

 芹香は、バターは虎を溶かして作るものだと思っていたからだ。

「・・・・・」

 虎を遠心分離器にかけると、バターができる・・・・、それは迷信だった。

「・・・・・」

 芹香は、猛烈にバターを作りたくなった。

「・・・・・」

 彼女の考えはこうだ。



1.牛乳を手にもつ。

2.地震がおこる。

3.牛乳が振るえ、バターができる。

4.パンに塗る。

5.藤田さんに食べさせる



「・・・・・」

 完璧だ。完璧すぎる作戦だ。

「・・・・・」

 だが、しかし、

「・・・・・」(地震・・・おきない・・・)

 魔法の儀式も、済ませてある。

「・・・・・」(・・・?)

 もしかしたら、信じる力が足りないのかもしれない。

「・・・・・」(きっとそう)

 雨を呼ぶ儀式の時も、そうだった。

「・・・・・」

 信じる力が足りないのだ。

「・・・・・」

 誰か、この魔法を信じていないヒトが・・・

「・・・・・」

 誰かは、すぐに分かった。

「・・・・・」(セバスチャン・・・)

 大柄の執事が振り向く。

「なんでしょうか、お嬢様」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」(ううん、なんでもないの・・・・)

「そうですか」

「・・・・・」

「地震・・・おこりませんな」

 こくん

「・・・・・」

 お前のせいだ、お前が悪いんだ、しっかりしろ、このクソジジィ!!

 とは、逆立ちしても言えない芹香だった・・・



「・・・・・」(地震・・・こないかな)





  バターが完成する日は遠い。